血液がんの一種で治療が難しい急性骨髄性白血病は、「白血病幹細胞」というがん細胞の“親玉”が原因で再発することを理化学研究所、九州大付属病院などの共同研究チームがマウスを使った実験で突き止めた。幹細胞を死滅させる薬を開発すれば、再発を防ぐ根本的な治療法につながる可能性がある。22日の米科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」(電子版)に掲載された。

急性骨髄性白血病は、骨髄系の細胞ががん化して増殖する病気。成人に多く、抗がん剤や骨髄移植などで治療するが、症状がいったん収まっても、患者の多くは再発してしまうことが大きな課題になっている。

白血病の細胞は急速に増殖する一般的なタイプと、これらを作り出すごくわずかな親玉の幹細胞に大別される。研究チームはこの違いに着目し、免疫力を失わせたマウスにそれぞれの細胞を移植して反応を調べた。

その結果、普通の白血病細胞を移植しても発症せず、幹細胞を移植したときだけ発症することが判明。さらに抗がん剤を投与すると、普通の白血病細胞は死滅するが、幹細胞は生き残り、これが再発の原因と分かった。

幹細胞の性質を詳しく調べたところ、増殖のスピードが普通の白血病細胞より遅く、正常な細胞とほぼ同じだった。既存の抗がん剤は副作用を減らすため、増殖が速い細胞だけを攻撃する仕組みになっており、これでは幹細胞には効果がなく、再発を防げない理由も明らかになった。
(白血病の“親玉”特定 再発防ぐ新薬開発に光)


急性骨髄性白血病とは、骨髄系の造血細胞が腫瘍化し、分化・成熟能を失う疾患です。増殖の主体は芽球blast(骨髄中30%以上)であるとされています。分化・成熟能を失った細胞は幼若なままの形態をとることから、芽球と呼ばれます。

白血病幹細胞との関係性は、以下のようなものであると考えられます。
血液細胞(赤血球、白血球、血小板)の原型ともいえる造血幹細胞は、いろいろな血液細胞を作る能力だけでなく、自分自身を複製する能力も持っています。このため、造血幹細胞は高い再生能力を示し、骨髄移植などの再生医療に用いられています。白血病の中には、造血幹細胞に遺伝子変異を伴うものが多く見られますが、この変異によって、より自己複製能を増強させると考えられ、これが白血病の原因とも考えられます。

今回の研究により、白血病幹細胞の自己複製機構について詳しい解析が行われたと考えられます。以前から、「白血病幹細胞システム」という概念が提唱されていました。これは、白血病構成細胞の中にごく少数の幹細胞が存在し、自らは自己複製をしながら白血病細胞を常に供給し続ける、というものです。

この一端として、白血病幹細胞が重要であると考えられます。今後は、この働きを抑えることが効果的な治療につながると考えられます。

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