「アタマジラミ」の子供たちへの流行が昨年から止まらず、全国的に被害が拡大している。アタマジラミというと、戦時中を思いだすが、“平成のシラミ”は、駆除薬が効かない抵抗性の出現も確認されるなどタチが悪い。国立感染症研究所でも感染の実態調査に乗り出している。

戦後絶滅したかに思われていたアタマジラミだが、98年には1万2000人以上の感染者を出している。そして、あれから9年、再び大流行の兆しだ。今夏、広島県内の小中学校で児童58人が感染していたことが発覚。大阪、兵庫でも相談件数が急増。東京都の保健所に寄せられる今年度の相談件数は昨年の5割増の1500件を突破。年末に向けさらに増加しそうな勢いなのだ。

国内唯一のシラミ駆除薬「スミスリン・シャンプー」を販売する殺虫剤メーカーの出荷量も昨年は前年比3割増、今年はすでに6月末時点で約4割増。駆除薬の出荷ベースで予想すると、「実際の感染者数は30−40万人に近い数字では」と国立感染症研究所昆虫医科学部殺虫剤室の冨田隆史室長。

シラミとひと言でいっても色々で、衣類に寄生するコロモジラミ、陰毛に寄生するケジラミもいるが、アタマジラミは頭髪に寄生して吸血する。季節に関係なく発生し、数が増えるとかゆみを伴う皮膚炎を引き起こす(シラミ症)が、他の病気を媒介することはない。

最も危惧されるのは、薬剤の効かない抵抗性のアタマジラミの感染拡大だ。

「いまのところ抵抗性は3−4%。薬が効かなくても目の細かいクシですき取れば駆除できる」と冨田室長は話しているが、今後、抵抗性を拡大させないためにもシラミ退治は大切。国立感染症研究所では、採取したシラミを送れば1カ月以内に耐性かどうかメールで判定結果を知らせるなどを実施している。逃げ足が速いといわれるアタマジラミだが、被害を食い止めるためにも万が一、わが子の頭で発見したら、勇気をもって生け捕りにしてほしい。
(子供の間で感染拡大中! アタマジラミ被害急増)


シラミ症の原因となるのは、アタマジラミ、コロモジラミ、ケジラミの3種があります。アタマジラミは頭髪に、コロモジラミは衣服の縫い目、ひだに、ケジラミは陰毛に生息します。

そういった付近で、1日に数回吸血します。第二次世界大戦直後にはコロモジラミが増え、その媒介により発疹チフスtyphus feverが爆発的に流行しました。その後は、姿を消しましたが、1970年代後半からアタマジラミの流行が保育所や小学校低学年児童の間に全国的にみられるようになりました。

症状や治療は、以下のようなものがあります。
臨床症状としては、頭部のそう痒感が特徴的で、湿疹の併発もみられます。成人の間では、同様にケジラミの増加がみられます。

治療には、シラミの成虫から卵にいたるまで完全に駆除することが重要です。コロモジラミについては、衣服を熱湯消毒することで効果的な治療が可能です。アタマジラミやケジラミは、物理的に取り除くことが可能ですが、洗髪では完全に除くことが出来ないため、ピレスロイド系の殺虫剤を含むシャンプーや、スミスリン・シャンプーが使用されることもあります。また、専用のクシ(シラミ専用クシ)というのもあります。

清潔にしていても、感染してしまうことがあります。子どもが、頭を触れ合って遊ぶことによりうつることがあり、しっかりとした感染対策をして、十分なご注意をお願いします。

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