映画「僕らはみんな生きている」「病院へ行こう」ほか、ドラマや舞台、アニメなどを手がける人気脚本家が書いた、初のエッセーにして鬱病体験記。発症から復帰までの生活を赤裸々に告白している。

10歳のとき、頭痛薬を大量に飲んで高揚感を味わった。20代から不安や緊張を緩和するために薬物を過剰摂取し、幻覚や異常行動が続いた。そして34歳で鬱病と宣告される。物忘れ、吐き気、不眠、挙動不審、虚脱感…。壮絶な生活を経て、44歳で薬に頼る生活から脱却した。

「鬱病がどういう病気であるかを理解してもらえないのが厄介な点」と記述する著者。鬱病患者を家族や友人に持つ人たちにはどうあってほしいかということまで、体験者ならではの視点でつづっている。
(【書評】『うつから帰って参りました』一色伸幸著)


生涯のうちに、うつ病にかかる可能性については、近年の研究では15%程度と報告されています。日本で2002年に行われた1600人の一般人口に対する面接調査によれば、時点有病率2%、生涯有病率6.5%とされています。

最近では、北海道大研究チームの調査で、小学4年〜中学1年の一般児童・生徒738人に、鬱病と躁鬱病の有病率が計4.2%に上ったことが明らかになっています。もはや、子供といってもうつ病をはずして考えることはできなくなっています。

逆に考えれば、身近とも言えるうつ病。その症状や治療法としては、以下のようなものがあります。
うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患です。あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような重症例まで存在します。うつ病を反復する症例では、20年間の経過観察で自殺率が10%程度とされています。

DSM-IVの診断基準は、2つの主要症状が基本となります。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされています。

「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどです。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態です。

うつ病患者では、抑うつ感、不安、焦燥などのために自殺することを望んだり、実際に実行してしまうことがあります(希死念慮といいます)。抑うつ感などによる苦痛の強い場合、不安・焦燥の強い場合、極端に自己評価の低い場合、罪責感の強い場合、妄想の見られる場合などは自殺のリスクが高いと考えられるため、より注意が必要です。

うつ病に対しては、抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多いです。これは、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っているため、こうした副作用が現れると考えられます。

近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされています。ですが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされています。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多いです。

SSRIの特徴的な副作用としては、セロトニン系の作用と関連している悪心・嘔吐や性機能障害があります。また、急激に服薬を中止するとめまい、悪心、発熱などの退薬症状が起こりやすいのも特徴的です。

他にも、カウンセリングや認知行動療法などが有用であると考えられています。
また、ご家族の方にも十分な理解を示していただくことが重要であると考えられています。よくご家族の方が「旅行にでも行って気晴らししたら?」「頑張って」と声をかけるようですが、これはあまり進められません。

旅行できるほどの気力もないし、「頑張って」という言葉は患者さんを追いつめてしまうことが多いと考えられています。こうした言葉は、できるだけかけないようにしてください。ご家族の方は、黙って傍で見守ってあげることが一番であると思われます(難しいことかもしれませんが)。

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