厚生労働省は2日、75歳以上を対象に平成20年度からスタートする後期高齢者医療制度について、初診料を現行より引き上げ、再診料は下げる方針を中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。一方、症状の軽い患者が救急病院にかかるケースが少なくなく勤務医の負担となっていることから、開業医の時間外診療の報酬を上乗せする考えも明らかにした。いずれも、20年度の診療報酬改定で実現を目指す。

75歳以上の初診料の引き上げが必要と判断したのは、初診時には患者の病歴や受診歴に加え、利用中の医療・介護サービスなどを詳細に聞き取る必要があり、時間や手間がかかるため。ただ、治療が長期化する高齢者は、2回目以降の治療は慢性疾患の経過観察や継続的な管理・指導が中心となるため、再診料は引き下げが適当とした。
 
また、主治医が年間の診療計画を作成するなど、後期高齢者に対する総合的な診療に取り組んだ場合も加算する考えを示した。

治療が長期化傾向にある75歳以上の診療報酬については、若年世代と別体系にすることが決まっている。現在は、初診料と再診料に年齢による区分は設けられていないが、後期高齢者の心身の特性を踏まえた見直しをすることにした。
 
一方、厚労省は、重症とはいえない患者が救急医療で大きな病院にかかるケースが増え、勤務医の負担となっている問題について、休日や夜間に近くの開業医が閉まっていて受診できず、やむを得ずに大病院に駆け込んでいることが要因の一つになっていると分析。
 
大病院への集中を是正するには、開業医の初期救急医療体制を充実させる必要があると判断した。開業医に夜間の診療時間を延長してもらうため、時間外診療の報酬を手厚くする方針も示した。初・再診料は下げ、夜間や休日に診療を行わなければ、高収入が得られない体系に改める狙いもあるようだ。
(75歳以上の初診料アップ 再診料は下げ)


医療を考える上で、病院ごとの役割分担は一般的に「一次医療」「二次医療」「三次医療」という風に分かれています。

一次医療とは、身近な医療を提供する医療圏のことです。一次医療は、一般医(一般的には開業医など)が中心となった医療チームで行われ、プライマリケアと呼ばれる、患者さんが病気にかかった時に、一番最初に診てもらう医療機関による基本的総合的な診療を行います。つまり、「お腹が痛い」というまだ病名もハッキリとしない状態で身近な病院へ行くような状態の時に受ける医療が一次医療です(もちろん、そこで治療できないような状態では、より大きな病院へと紹介されることになります)。

二次医療とは、医療法で規定されている特殊な医療を除く一般的な医療サービスを提供する医療圏であり、診療所などで扱えないような、病気、入院、手術が必要な患者に対応する医療機関であると考えられます。街の中核病院などがこれに当てはまります。

さらに、三次医療は最先端、高度な技術を提供する特殊な医療を行う医療圏で、二次医療でもまかなえないような症例を扱います。いわゆる大学病院などがこれに当てはまると思われます。

こうした区分けは、以下のような意味を持ちます。
「より高度な医療を受けたい。誤診や見逃しがないように、詳細に検査してほしい」という思いを、患者さんはもたれると思われます。しかしながら、そうしてみんなが三次医療に殺到したら、処理しきれなくなります。

そこで、まずは一次医療によって治療できる患者さんについては診療所で診てもらって、無理そうならば二次医療にゆだねる、それでもダメなら三次医療、という流れを作ることで、業務を分担する、という意味合いをもちます。

ですので、大学病院などでは紹介書のない方は高い初診料をとられる、というのには「まずは一般病院で診てもらってください」ということを含んでもいるわけです。

この分担が、日本でもまだ上手くいっていないために、上記のような初診料の負担料金増加に反映しているように思われます。すなわち、プライマリー・ケアの充実ができておらず、かかりつけの病院が対応してくれないために救急病院にいくしかない、という現状があるように思われます。

厚生労働省は、医療機関が名乗ることのできる診療科名に「総合科」を新たに加える案を提出していました。これは、医師の専門分野化が進み、一つの病院の中でも総合的に患者を診る医師がいなくなっていることや、専門領域の診療科を掲げる開業医が増え、かかりつけ医を探しにくくなっていることが指摘されている。このため、内科や小児科など幅広い領域で総合的に高いレベルの診断ができる医師、医療機関が、地域医療に欠かせないとし、医療法上、広告できる診療科名に「総合科」を新設することにした、という背景があります。

今後は、医学教育の充実や医療制度の周知徹底をはかり、プライマリケアの見直しが重要であると思われます。

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