インフルエンザ患者は通常、11月下旬から増え始め、2月ごろにピークを迎える。今シーズンは治療薬タミフルが、異常行動との関連が指摘されるなどしたため10代への使用が原則として中止されている。10代の患者の治療はどうするのか。9歳以下ならば服用しても心配はないのだろうか。

川崎市で小児科医院を開業する廣津伸夫医師は昨シーズン、インフルエンザと診断した18歳以下の患者217人の家族に、異常行動を経験したことがあるかどうかアンケートをした。

家族が「いつもとは違う」と判断したのは37人(17%)。泣き叫ぶ、奇声を上げるといったものから、カッターナイフで手首を切りそうになった(15歳男子)まで、さまざま。

37人のうち12人は治療薬を使う前で、使った25人の内訳はタミフルが11人、吸入式治療薬リレンザが14人だった。

日本臨床内科医会インフルエンザ研究班副班長も務める廣津医師は「インフルエンザは神経症状を伴うことが多い。異常行動とタミフルとの因果関係は、ないのでは」と考えている。廣津医師は、タミフルとリレンザの効果も比較。A型インフルエンザでの効果はほぼ同じ、B型ではリレンザの方が約1日解熱が早かったという。今シーズンは、10代の患者にはリレンザを処方、10代以外ではB型患者にはリレンザを勧めA型にはタミフルかリレンザか選んでもらう予定だ。

厚生労働省が3月に出したタミフル使用中止の対象は「10歳以上の未成年」。厚労省は「10歳以上だと体が大きく、異常行動が起きたときに親が止められない恐れがある」と判断した。同時に、9歳以下はインフルエンザで死亡する危険性を考慮して対象から外し、服用させる場合は患者の様子に注意するよう求めている。

廣津医師は薬を飲まないのも選択肢としつつ「小児を中心に起きるインフルエンザ脳症は、年間100〜200例報告され、死亡することもある。うわ言など通常とは違う様子があれば医療機関を受診して」と呼び掛ける。

タミフルと異常行動の関係について、厚労省の薬事・食品衛生審議会は2つの作業部会で調査。10月24日の部会では、中外製薬の動物実験の途中経過を議論し、厚労省は「因果関係を示す結果は出ていない」との見解を示した。今後は、臨床試験や疫学調査の結果を踏まえ、できるだけ早く因果関係を判断する方針だ。
(インフルエンザの冬…タミフルは大丈夫?)


タミフルと異常行動の関係性については、未だに決着がついていません。ラットの脳細胞を興奮させる作用があることを、米ワシントン大学の和泉幸俊教授らがラットを使った実験で示したことや、厚生労働省の作業部会によって「異常行動と関連づけられるデータは今のところない」とする中間結果を発表したことなど、さまざまな意見があります。

一方、タミフルとの関連性を支持する意見の一つとしては、未熟な子供は血液脳関門におけるP糖蛋白の発現が乏しく、タミフルが通過してしまうのではないか、という説もあります(実験的に証明したわけではないようですが)。

関連性が明らかとはいえない現状ならば、処方する際には
10代の患者→リレンザを処方
19代以外の患者→B型患者にはリレンザを勧め、A型にはタミフルかリレンザか選んでもらう、という方針でいるほうがよさそうですね。

また、注意していただきたい『タミフルによる』とされる異常行動には、以下のようなものが報告されています。
タミフル服用後の異常行動をめぐっては、マンションから転落したり、国道に飛び出すなどの重大なケースが平成16年以降に計23件あったことから、13年の発売後に報告された約1,800件の全症例について見直し作業を進められていました。

中外製薬から厚生労働省に報告された副作用が疑われる約1,800件の事例のうち、「暴れる」「動き回る」など何らかの異常な行動を起こしていたケースが100件以上に上っています(には認知症の影響など、薬の副作用以外の原因によるとみられる人もいたそうですが)。

また、タミフル服用後に家を飛び出そうとするなどの異常行動を起こした女児が、その後の検査で、インフルエンザではないとの結果が出た、というケースもありました。

このケースでは、39度の発熱で風邪と診断されたが、家族の要望でタミフルや解熱剤などを処方されました。その日の夜、女児はタミフルを服用した後に就寝したが、2、3時間後に目覚め、叫んで家の外へ飛び出そうとしたそうです。

やはり、不用意な投与は避けるべきであり、今後の調査結果を待つ必要があるのではないでしょうか。

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