国内タバコの健康警告表示は文字だけで、面積も30%に過ぎない。NPO法人「日本禁煙学会」は、主催した「タバコパッケージの健康警告デザイン」コンテストの入賞作を国内販売のタバコに採用するよう監督官庁である財務省に要請した。タイで販売されているJTのパッケージを見せて要請したが「規定違反はない」と改善の意思なし。JTは「愛煙家に楽しんでもらうための製品」と面談すら拒否した。

公衆衛生分野で初の国際条約である「タバコ規制枠組条約(FCTC)」の第11条には、パッケージの健康警告表示に関して以下のように定められている。
1)複数の文言をローテーションで,大きく読みやすく,主たる表面の50%以上を占めるべきであり30%未満では不可
2)絵・写真・図を含めることができる
3)虚偽・誤認させる表示等(低タール、ライト、ウルトラ・ライト、マイルドなど)で販売を促進しないこと
4)権限のある国内当局が承認する

日本もこの条約を2004年に批准したため、新たな健康警告表示として、8種類(2グループ各4種)の文言のうち各1種ずつを両面の各30%の面積で入れ、現在の表示になっている。

だが現状のパッケージはあくまで11条の規定の最低限をクリアしただけであり、「タバコの消費及び受動喫煙が健康、社会、環境及び経済に及ぶす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護することを目的とする」という条約本来の趣旨に適っているとはいいがたい。

日本禁煙学会は、日本のタバコパッケージの警告表示をより効果的なものにするために、「タバコパッケージの健康警告デザイン」コンテストを主催。8月末に決定した1位2名、2位5名、3位10名他合計27点の入賞作を、新たな警告表示として採用するよう、関係省庁やJTに要請するよう動き出した。

まず、10月17日に開かれた禁煙推進議員連盟(綿貫民輔会長【国民新党】、2002年3月に設立された超党派の議員連盟で、加盟している国会議員は10月23日現在で80名)の総会に参加し、要請書を提出した。タバコによる健康被害の改善、タバコの警告表示の強化・広告の規制、国会内の禁煙活動などに取り組み、この総会でもたばこ税を1本10円引き上げるよう働きかける決議を採択した。
 
その席で、日本禁煙学会の作田学理事長は要請書を読み上げ、「タバコパッケージをタバコ規制枠組条約(FCTC)第11条の要請に合うよう改善していただきたい」と訴えた。
(タバコの警告表示問題 面談拒否のJT)


世界保健機関(WHO)西太平洋地域委員会の年次総会が開かれ、その際にたばこによる健康被害の深刻さを強調、喫煙との「全面戦争」を訴えて、9月14日に閉幕しました。

尾身茂事務局長は「たばこの影響で西太平洋地域で毎日3,000人以上が死んでおり、世界のたばこ関連の死者の3分の1を占める」と発言しています。

喫煙による影響は、具体的には以下のようなものがあります。
喫煙によって、肺癌、喉頭癌、咽頭癌、食道癌、膀胱癌などで罹患率が上がることが指摘されています。また、喫煙により慢性気管支炎、肺気腫(これらの2つの疾患のことをCOPDとも言う)などが生じます。軽度のものを含めると、習慣的喫煙者のほぼ100%に気腫性変化が生じます。

タバコの煙に含まれる活性酸素は、血管内皮細胞を障害することが知られています。そのため、動脈硬化が促進され、狭心症、心筋梗塞、脳血栓 、脳塞栓、動脈硬化、動脈瘤、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)などのリスクが増加することが統計的に示されています。他にも、妊娠中の影響や免疫低下・感染症、歯周病などのリスクが挙げられます。

ですが、こうした悪影響をいくら説明しても、すでに喫煙習慣がある人にとっては、なかなか止めることができません。となると、喫煙を行う前に(未成年者に)吸うべきではない、ということを納得してもらう必要があります。

そこで、パッケージの警告表示がその一役を担うとおもわれますが、やはり企業側としては、わざわざ購買意欲を低下させるようなものに変化させたくはないでしょう。

実は、こうしたJTと日本禁煙学会との対立は以前にもあり、喫煙対策シンポジウムで、日本たばこ産業(JT)関係者の講演が予定されていましたが、禁煙を求める団体などの批判を受け、同省が講師を変更することを決めたことがありました。

今後、企業としてのありかたはどのようにあるべきか、そうした社会的な大きな問題も含めた経過を見守っていきたいと思います。

【関連記事】
喫煙対策シンポで厚労省が JT関係者の講演取り止め

医療系学部の喫煙率、男女とも歯学部生がトップ