精神科医、和田秀樹さん 
「主人公と同じ40代後半の男として、映画は身につまされましたね。昨日まで元気で活躍して、自分だけは大丈夫だと思っている人が、突然がんを宣告されるとどうなるのか。その部分がリアルに感じました。
 
普段は好き勝手に飲んでいて1人がいいなと思っていても、病気になったりすると急に彼女がほしくなったりするものです。特にがんになると免疫機能が落ちるといわれていて、人恋しくなる。最後はやっぱり家族なんだということです。象のように1人で死んでいけるもんじゃない。その辺において、役所広司さんはじめみんなの演技に説得力がありました。

好きなシーンは、最後に娘が父親にチアリーディングを見せるところですね。僕も娘がいるからだと思いますが、普段は忙しくて子供の運動会など見に行けない。あの場面ではぐっと来ました」
(「象の背中」で考える 最後はやっぱり家族)


11月8日に癌性腹膜炎のため、35歳の若さでジャズボーカリストの石野見幸さんが亡くなりました。彼女のドキュメンタリー映像を見ると、非常に家族が支えになっており、その精神的なサポートがあってこそ、体力的にも厳しいライブに臨むことが出来るのだと思いました。

こうした終末期医療をめぐる意識調査は、これまで平成5、10年、15年にも実施されています。前回15年2〜3月に約1万4,000人を対象にした調査では、延命治療を望むかどうかを事前に書面で意思表示する「リビングウイル」に賛成する人が、初めて一般国民の過半数を占めたそうです。

それを受けて、国として初のガイドライン(指針)が厚労省で検討されているそうです。富山県の射水市民病院で人工呼吸器取り外しが発覚したことをきっかけに、終末期医療に対する関心が高まってきていることも影響しているのではないでしょうか。

現在、積極的な安楽死の必要要件として考えられているのは、以下のようなものです。
安楽死の要件(違法性阻却事由)としては、以下の6項目があげられました。
1)不治の病に冒され死期が目前に迫っていること
2)苦痛が見るに忍びない程度に甚だしいこと
3)専ら死苦の緩和の目的でなされたこと
4)病者の意識がなお明瞭であつて意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託又は承諾のあること
5)原則として医師の手によるべきだが医師により得ないと首肯するに足る特別の事情の認められること
6)方法が倫理的にも妥当なものであること

こうしたことからも、「本人の意志」というのが重要になってきます。

そこで考えるのが、傍にいてくれる人間の有無で、積極的に死に急ぐことを食い止められるのではないか、ということです。家族のサポートがあれば、悔いを残さないように、やり残すことのないように精一杯生き抜くことができるのではないか、と思われます。

もちろん、みんなが皆、温かい家庭をもっているわけではないですが、家族のありがたみというのはこうした場面で再確認できるのではないか、と思われるのです。映画「象の背中」による影響がどれほどあるのかは分かりませんが、今後も終末期医療のあり方は、社会的な論議を要する問題であると考えられます。

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