秋は妊娠に最適? 藤田保健衛生大の中沢和美教授(産婦人科)が、約2800人の妊婦のデータを追跡し、10〜11月ごろに妊娠すると、流産する率が低い傾向があるのを見つけた。

理由は分かっていない。1病院のデータだけの分析のため、一般的な傾向といえるかも不明だが、中沢教授は「季節的に繁殖期がはっきりした動物がいるように、人間も季節で体のリズムが変化する可能性があるのでは」と推測している。

教授は、かつての勤務先だった横浜市の病院で平成元〜3年に受診した妊婦の最終月経があった月別に3年間の平均流産率を集計した。すると、最終月経が10月と11月だった人の流産率だけがいずれも7%と低く、ほかの月は16〜22%と2倍以上あった。

また、昭和58年からの12年間に同じ病院であった約1万1400件の出産の分布を調べた結果、前年の10〜11月に妊娠した人が出産する、8〜9月ごろが年間のピークの一つになっていた。

中沢教授によると、ある種の動物では繁殖期に妊娠・出産しやすい体内環境が整えられる。例えばニホンザルの場合、秋以降に分泌されるホルモンの刺激で生殖が促されるほか、ホルモンの抗酸化作用が卵子を傷つきにくい状態に保っていることも考えられるという。
(妊娠するなら秋? なぜか低〜い流産率)


流産とは、妊娠の継続が停止することを指し、日本産科婦人科学会では「妊娠22週未満の妊娠中絶を流産」と定義し、22週以降の場合では、「死産」と定義されています。なお、妊娠12週未満の流産を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満の流産を「後期流産」といいます。

流産の種類としては、以下のようなものがあります。
・切迫流産(Threatened abortion)
概念:流産が生じようとしている状態。流産になる場合と持ちこたえる場合とがある。子宮出血はあるが頸管は開大していない。
症状:軽度の下腹部の痛みと少量の性器出血

・進行流産(Inevitable abortion)
概念:流産が生じ、進行している状態
症状:下腹部痛や出血が強く、頸管は開大しており保存的な治療は不可能なものである。

・完全流産(Complete abortion)
概念:流産が生じ、子宮内容物が娩出された状態
症状:下腹部痛と性器出血の消失

・不全流産(Incomplete abortion)
概念:流産が生じたが、子宮内に残存物が残っている状態
症状:下腹部の痛み、性器出血の持続

・稽留流産(Missed abortion)
概念:子宮内で胎児が死亡している状態であるが、妊婦に症状が無いもの。
症状:自覚症状は無い。妊婦検診等で超音波検査によって発見される。

原因としては、大きく分けて母体、胎児、夫婦間因子に問題があって流産してしまうと考えられます。

母体による流産原因としては、感染症や子宮の異常(子宮頸管無力症、子宮奇形、子宮筋腫など)、黄体機能不全、高プロラクチン血症、内分泌疾患などがあります。胎児による流産の原因としては、染色体の異常、遺伝子病などがあります。夫婦間因子による原因とは、免疫異常(免疫応答の異常など)や、血液型不適合妊娠(Rh+−の不適合など)といったものがあります。

さらに、習慣流産といって、連続3回以上流産を経験した場合もあります。特に、絨毛膜下血腫が原因である場合は、SLE(全身性エリテマトーデス)や抗リン脂質抗体症候群を疑います。

抗リン脂質抗体とは、人間の体の中の主要な細胞膜構成成分である「リン脂質二重層」に対する自己抗体のことです。

抗リン脂質抗体があると、血液凝固が亢進され、血栓形成が起こりやすいのです。妊娠週数が進むにつれて、胎盤内の絨毛間膣ならびにその周辺の小さな血管には、血液の凝固因子が増加しています。そのような状態になっている所に抗リン脂質抗体が反応すると、容易に子宮胎盤循環不全を起し、流産や死産という結果になると考えられています。

こうした特殊な場合は除くとして、正常な場合ならば10〜11月に妊娠すると、流産率は低く抑えられるかも知れません。といっても、秋・冬は安定期(妊娠16週〜)に入る期間まで、家でじっとしていることが多いというだけの理由とも考えられますが。しかしながら、心理的に安心感を得られる、ということは言えるかも知れませんね。

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