深夜、プレミアリーグ観戦後、脳梗塞で倒れたオシム監督(66)の報は、日本サッカー界に衝撃をもたらした。寒さが強まるにつれ発症が増加する脳卒中。生活習慣病やストレスが発症に大きく関係するこの病気、サラリーマンなら人事ではない。ICUに運ばれた直後のオシム監督の容体について、沈痛なおももちで「かなり厳しい状況」と語った川淵キャプテン。

脳卒中の救命で重要なのは「時間との闘い」だ。
脳卒中の一つ、脳梗塞は脳血管に血栓が詰まったり、脳血管が動脈硬化で狭くなり血流が滞ったりする病気。血流が止まっている時間が長いほど脳組織の壊死が進み重症化する。生命を救い、できる限り後遺症を残さないためには、早急に病院へ運び、その血流を一刻も早く再開させられるかがカギとなる。

そんな慌しい医療現場に救世主となって現れたのが、一昨年10月から保険適用になった血栓を速く溶かす「tPA」という薬を腕から点滴する治療法だ。

CTやMRIの24時間体制が必要になるなど、まだすべての病院で受けられるわけではないが、その差は歴然。仮に従来の治療法の抗血小板薬や抗凝固薬の投与などで7割後遺症が出て、2割回復というレベルの脳梗塞としよう。それがtPAの治験では、同レベルで4割近くがほぼ後遺症なく発症3カ月後には回復という結果が出されている。

実際にtPA治療を行っている東京都済生会中央病院・脳卒中センターの淺田英穂医師は、その効果のほどを「劇的」と表現する。が、また「それが弱点でも」という。

「発症から3時間以上経過してしまうと血管がもろくなり、こんどは脳出血を起こす危険性があるので、この療法が使えなくなってしまう。検査で1時間ほどかかるので、使えるリミットは発症から2時間以内」

とくに家族などからの早期通報、救急隊員との連携が重要になるわけだが、この治療の対象となる患者で時間的に間に合うのは「実際のところ現時点では10%以下」という。また梗塞の程度が重い場合や高齢、高血圧、重度の糖尿病などがあると出血のリスクが高まるので時間的に間に合っても対象外になることも。いずれにしても「スピード」と「連携」が求められる脳卒中治療。Jリーグよりもプレミアリーグ並みで対応したい。
(冬場に怖い脳卒中…生死分ける連携とスピード)


脳梗塞は、 脳を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため、脳虚血を来たし、脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死、または壊死に近い状態になることをいいます。日本人の死亡原因の中でも多くを占めている高頻度な疾患である上、後遺症を残して介護が必要となることが多く福祉の面でも大きな課題を伴う疾患です。

脳梗塞は、壊死した領域の巣症状(その領域の脳機能が失われたことによる症状)で発症するため症例によって多彩な症状を示します。代表的な症状としては、麻痺(運動障害)、感覚障害、失調(小脳または脳幹の梗塞で出現し、巧緻運動や歩行、発話、平衡感覚の障害が出現)、意識障害(脳幹の覚醒系が障害や広汎な大脳障害で出現)がおこることもあります。

具体的な治療としては、以下のようなものがあります。
治療法としては、急性期には抗血栓療法、脳保護療法、抗脳浮腫療法があります。抗血栓療法には、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防止する抗血小板療法とフィブリンができるのを防止する抗凝固療法があります。

近年、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)という血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が欧米では実施され、わが国でも2005年10月より健康保険に導入されました。tPAとは、組織プラスミノーゲン活性化因子(Tissue plasminogen activator)の略です。脳保護療法には活性酸素の働きを防止するエダラボンという薬剤を発症後24時間以内に使用すると後遺症が軽減されます。

効果としては、血栓に吸着して効率よく血栓を溶かし、脳の血流を速やかに再開させます。まず使用量の1割を静脈注射で急速に投与した後、残る9割を点滴で1時間かけてゆっくりと投与していきます。国内の治験では、脳梗塞の発症後3時間以内にtPA治療を行うと、3か月後に、ほとんど後遺症なく社会復帰できた割合は37%と、およそ4割程度に効果があったと考えられます。

もちろん、全員に効果があるわけではない上、副作用もあります。たとえば、血栓を溶かすtPAは、脳出血を起こしやすくしてしまいます。発症から長時間たった後にこの薬を使うと、脳出血の恐れが高まり、効果も乏しくなります。

そこで、治療の対象は、以下のようなことを考慮する必要があります。
・発症後3時間以内(Golden timeと呼ばれます)
・頭部CT検査で、脳出血の危険性が低いことを確認

しかしながら、それを差し引いても救命率や後遺症の低減に大きく寄与していると思われます。今後も、使用できる病院の拡大が望まれます。

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