以下は、スーパーニュースで取り上げられていた内容です。

現在36歳の宮田さんは、5年前まで小児科医として働いていました。しかしながら、現在はその仕事を続けていくことが出来なくなってしまいました。というのも、記憶に障害が出てきてしまっているからです。

東京慈恵会医科大学付属病院の医師に診察を受けていた際、いくつかの質問をされていました。「今日は何月何日ですか?」「ここはどこですか?」…数ヶ月前の記憶は元より、こうした質問や、暑い盛りだった8月30日にもかかわらず、その季節感すら失われていました。

こうした状態を、高次脳機能障害といいます。高次脳機能障害とは、脳に外傷を負ったことにより、記憶力・注意力の低下、視聴障害が起こり、社会生活を営むことが極めて困難になってしまう障害のことです。全国に約10万人いるといわれ、高次脳機能障害患者は長い時間をかけて脳のリハビリを行い、社会復帰を果たしていきます。

宮田さんがどうして、こうした障害を負ったのかというと、それは5年前、スキーに行ったときのことです。夜通し仲間達と騒いでいた後、朝になってゲレンデに行き、滑り始めました。しかし、その直後、降りてきた宮田さんは急に「眠たい」と言って、その場に倒れ込んでしまいました。

病院に運ばれ、彼は「多発性脳梗塞」と診断されました。その結果、彼は入院中にずっとボーッとしたような無気力状態になり、まるで別人のように変わってしまいました。

彼はその後、社会復帰を果たすため、以下のようなリハビリを開始しました。
交通事故や病気で高次脳機能障害を負った人たちと、その家族、医療・福祉従事者らが一体になってリハビリに取り組む「脳外傷当事者・家族ボランティア支援プログラム」に参加することになりました。

このプログラムは、東京医科歯科大学難治疾患研究所神経外傷心理研究部門(東京都千代田区・中村俊規教授)が2004年10月から進めているボランティア支援グループ「オレンジクラブ」の活動です。米国・ニューヨーク大学ラスク研究所が開発した「Lynchi-pin=リンチピン」という集団セッションを実践しています。

リンチピンでは、まず患者さんの1人が前に出てきて、医師が「困っていることは何ですか?」と訊ねます。その質問に患者は答え、その答えを他の患者さんとともに見つけていきます。問題点に対する「解決」と「戦略」が導き出され、最後には、リンチピンの感想を述べ合います(フィードバック)。

こうしたやりとりから、前向きに社会復帰を目指していきます。家族も参加し、患者さん達をどう支えていくのかを模索していきます。

他のグループリハビリテーションとは異なり、当事者と医療・福祉従事者のスタッフはもちろん、家族・友人・見学者らも集まり、参加者全員で高次脳機能障害への理解を深めていきます。いわば、包括的リハビリテーションともいうべきものです。家族も参加してリハビリの知識を身に付けられるため、自宅で毎日の実践できるという利点があります。

こうしたリハビリの結果、宮田さんは実家の病院でレントゲン撮影を手伝うことができるまでに回復しました。彼は今、高次脳機能障害を持つ患者さんの治療やリハビリはどうあるべきか、といった研究を始めたそうです。

全国に約10万人いるといわれる、高次脳機能障害は、身近な人や自分自身も持ちうるかも知れない障害です。今後、社会的な受容やリハビリの拡充といったことが必要となると思われます。

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