奈良県橿原市の妊婦が救急搬送先が決まらず死産した問題を受け、大阪府は22日、夜間の妊婦搬送依頼に備え、妊婦の症状や空床状況をもとに病院を選び、受け入れの依頼などを行う「コーディネート業務」の専任医師制度を、全国で初めて導入すると発表した。重症の妊婦の搬送依頼が入る府立母子保健総合医療センター(和泉市)に今月26日から配置する。

府精神保健疾病対策課によると、同センターでは現在、毎晩2人の当直医師がコーディネート業務を兼務。このため、2人とも手術中だった場合は、搬送依頼の電話を待たせざるをえないケースもあったという。

専任医師は9人。午後8時から翌日午前8時までの当直時間中、このうち1人が業務にあたる。同課は「これまでは、手術中の当直医師が、看護師に受話器を耳に押し当ててもらいながら搬送病院を選んでいたこともあった。専任医師を置くことで、迅速でより適切な対応ができるようになる」と話している。

また、府は、多胎などリスクの高い分娩に対応できる地域の中核病院を「地域周産期母子医療センター」として認定することを決め、同日、済生会吹田病院(吹田市)など12病院を選んだことを明らかにした。
(大阪府、搬送病院手配の専任医師制度 全国初)


救急搬送の数は年々増加し、受け入れ拒否に関する問題は、全国的なものとなりつつあるように思われます。

その一端として、福島市で乗用車にはねられた女性の搬送先の病院が約1時間決まらず、約6時間後に死亡した事例がありました。このことを受け、福島市や消防、市内の病院などでつくる「福島市救急医療病院群輪番制運営協議会」は、臨時の総会を開き、消防から救急患者の受け入れを打診された病院は、原則として拒否しないことを決定しています。

「各病院の医師は、満床だからと受け入れを断ることなく、まず患者を診るべきだ」という原則に立ち、受け入れた後の対応については、満床などのためそのまま治療することが困難な場合、病院間で調整し、より高度な医療ができる病院に移送すること、としています。

このシステムと上記の「コーディネート業務」専任医師制度を比べると、以下のようなメリットやデメリットがあると考えられます。
まず、福島市の受け入れ拒否を原則行わないとするシステムでは、病院をたらい回しにされることがなくなり、重症患者が長時間危険な状況に置かれる心配が減ると考えられます。タイムロスが減少することで、少なくとも緊急を要する場合には、救命率は上がるのではないか、と思われます。

しかしながら一方で、必要な医療設備や人員の整わない病院に運ばれた場合、十分な対応が行われるのか、そしてそこからさらに他病院を探す場合、それを担当するスタッフはいるのか、といったことも懸念されます。

このことを考えると、やはり「コーディネート業務」専任医師制度が必要になってくるのではないか、と思われます。さらに言えば、個々の病院が現在、医師がどのような勤務状況にあるのか、といった情報を集約し共有できるシステム作りが可能になれば、より迅速に適切な病院へ紹介できると思われます。

医療の高度化や医師の偏在に伴う医師不足により、もはや個々の病院のみで抱え込むことはできなくなっているように思われます。今後は、病院同士の横の連携やネットワーク作りが重要であると思われます。

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