長年、発達障害や不登校の臨床研究を続けている熊本大学大学院医学薬学研究部の三池輝久教授によると、小中学生の場合、午前0時を過ぎて就寝する状態が長期間続くと、午後になってうたた寝をするようになる。夕方、学校から帰ってから寝るようになったら要注意だ。

「睡眠不足が続くと脳機能が低下し、記憶の能力のうち、新しい情報を覚えること(記銘)が難しくなる。さらに学習意欲も低下し、体調も悪くなり、過眠型睡眠障害を伴う『小児慢性疲労症候群』という病気になることもあります」。三池教授はそう言って警鐘を鳴らす。

昼まで眠ると、睡眠時間を補っているように見えるが、実際は体内時計が狂っていて脳機能が低下しているため、起きている間も無気力状態になりやすいという。また、睡眠障害は不登校の原因にもなるといい、三池教授らは子供に一日のうちにいつ寝ているかの睡眠表を書かせ、不登校予備軍を早期に発見する研究も進めている。

慢性睡眠障害は乳幼児にも起きる。共働きの親が増え、夜間保育所なども整ってきたが、そうした施設に子供を預けることが“落とし穴”になる場合もある。

三池教授のもとに、3歳7カ月の息子を連れてきた母親がいた。「(息子は)言葉が遅れ、指差しができず、コミュニケーションもうまく取れない。自閉症ではないかと言われ、心配している」という。

母親は夜間の仕事に就き、息子は午後7時から午前4時まで夜間保育所に預けられていた。息子の睡眠表を書いてもらったところ、保育所ではゆっくり寝られず何度も目が覚め、昼間も不規則な睡眠になっていることが分かった。そこで三池教授は、息子に睡眠導入剤を飲ませ、毎夜、決まった時間に眠らせるようアドバイス。母親は仕事を辞めて指示に従ったところ、2カ月間で劇的に発達が進んだという。

親が不規則な生活を送ると、乳幼児には夜間の睡眠が分断される「睡眠の断片化」という問題が生じる。親が立てる物音で子供が目を覚ますという場合もあるようだ。
(眠れぬ子供たち 夜型生活の“犠牲者”)


米スタンフォード大学睡眠障害クリニックのJason C. Ong氏らの研究によると、夜更かしする人は、早起きする人と比較して、睡眠時間帯にベッドにいない時間が長く、より睡眠不足を感じることが明らかになっています。

また、夜更かしする人は就寝起床習慣に一貫性がなく、不眠症による抑うつ気分やストレスが強かったそうです。夜更かしする人は、不眠症の影響や睡眠をコントロールできないため、多く眠ることを選択し、結果的に睡眠時間が長くなっていたそうです。

不眠症の症状やストレスといった影響は、やはり夜更かしをしている人たちに強い、ということのようです。成人でさえこうした結果になっているのですから、子供では余計に影響が強く出てくることが予想されます。

最近では、北海道大研究チームの調査で、小学4年〜中学1年の一般児童・生徒738人に、鬱病と躁鬱病の有病率が計4.2%であったと明らかになっています。一般的には、12歳未満の児童期は0.5%から2.5%、12歳から17歳の思春期以降では、2.0% から8.0% の有病率が認められると考えられていましたが、増加傾向にあるようです。夜型の生活パターンが、ここに関連しているのではないか、と考えられます。

また、もう一つの影響として上記に挙げられている小児慢性疲労症候群とは、以下のようなものを指します。
慢性疲労症候群とは、通常の生活を送ることさえも困難な原因不明の全身倦怠感、疲労感を主症状とするもので、以前からウイルスとの関係や免疫異常あるいは精神疾患との関連で注目をあびていますが、その原因、本態はまだ不明の部分が多く、したがって確固たる治療法も確立されていません。

小児慢性疲労症候群の状態の主症状は、以下のようなものがあります。
1)記銘力あるいは集中力の障害
2)睡眠異常
3)疲労感(わずかな労作後でも非常に疲れ、休んでも疲れがとれない
4)頭痛・頭重感など

副症状としては、咽頭痛、頸部あるいは腋窩リンパ節の圧痛、筋骨格系の痛み、頭痛・吐き気、微熱、めまいなどがあります。こうした症状が原因で、不登校や引きこもり状態になってしまうこともあるようです。

最近では、画像診断学にて視床と前頭葉の血流が全体的に落ちていたり(結果、集中力の低下やうつ状態がみられる)、MRSで前頭葉のスペクトロスコピーをみると、前頭葉にコリン蓄積がある、などの特徴があります。他にも、糖の代謝を調べるとインシュリンが反応しないで、血糖値だけが高くなっていたり、ANA(抗核抗体)が陽性になる、といった検査結果がでることがあるようです。

以前では、エプスタイン‐バー(EB)ウイルス、風疹ウイルス、ヘルペスウイルスなどのウィルス感染が原因とも考えられていましたが、最近の研究では、ウイルス性感染は症状が現れるのを早めることはあり得るものの、慢性疲労症候群の原因ではないことが明らかになっています。

まだまだ不明な点が多いですが、慢性疲労を含め、頭痛や腹痛、微熱、倦怠感などを訴える子どもがここ最近、増加傾向にあるのは生活スタイルの変化が関与しているのは否定しがたいところです。少なくとも、睡眠不足が子供の発達を妨げてしまう可能性がある以上、親としては、しっかりと習慣づけをしてあげる必要があるのではないでしょうか。

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