舛添要一厚生労働相と全国知事会メンバーとの社会保障政策をめぐる意見交換会が26日午前、都内で開かれた。地方で深刻化している医師不足や出産医療体制の確保をめぐる知事側からの要望を受け、舛添氏は医療をめぐる長期ビジョン策定のための研究会を近く設置する考えを示した。

新潟県の泉田裕彦知事は医師不足対策の一環として「広域連携が困難なへき地での勤務を義務付けるべきだ」と、若い医師らに一定期間の地方研修を経験させることを提案。埼玉県の上田清司知事は「新生児集中治療管理室がほぼ満床の状態で、新たな受け入れが困難になっている」と指摘した。

舛添氏は「日本の医療について長期的なビジョンをつくりたい」と述べるとともに、近く発足する研究会での議論を受け、医師不足対策や混合診療などの課題を議論していく考えを表明した。長期入院が必要な新生児の受け入れに対する支援拡充などへの取り組みを約束した。
(舛添厚労相、医療長期ビジョン策定の研究会設置を表明)


厚生労働省は、来年度の診療報酬の改定に向け、基本方針案を社会保障審議会の医療部会に示しています。方針案では、病院で働く医師の負担軽減を緊急課題として挙げ、産科や小児科の診療報酬について加算を求めています。勤務医を優遇して、医師不足を解消をめざすという方針のようです。

一方で、日本医師会は「開業医を経営責任の問われない勤務医と比較するのは不見識だ」との見解を示しているそうです。もちろん、診療報酬は患者の健康保険料や税金、患者負担で賄われます。診療報酬が上がると、当然、国民の負担は増え、そこからの不満が噴出してくることも考えられます。

こうした多くの意見を取り入れながら、どのように医療改革を進めていくべきなのかを探る場は必要と思います。場当たり的な改革案ばかりが実現化される現状をあらため、長期スパンでの改革骨子を作成し、そこに向けて徐々に軌道修正していく、という方針が必要だと考えられます。

現在の医療問題の山積した問題の中で、上記ニュースでも挙げられているように、特に医師の偏在にともなう医師不足が急務の課題であると思われます。こうした医師不足の問題は、具体的には以下のような対策案が考えられています。
政府・与党は5月29日、医師不足の緊急対策案をまとめ、国レベルで「医師バンク」を設置し、不足している地域に医師を臨時に派遣することを提言しています。大都市圏の臨床研修病院の定員を減らし、若手医師を地方に誘導することが柱であり、参院選の与党公約に反映させる見込みのようです。

他にも、へき地や離島など地域の医師不足・偏在を解消するため、全国の大学の医学部に、卒業後10年程度はへき地など地域医療に従事することを条件とした「地域医療枠(仮称)」の新設を認める方針を固めています。地域枠は、47都道府県ごとに年5人程度、全国で約250人の定員増を想定している。地域枠の学生には、授業料の免除といった優遇措置を設けるそうです。

後者の方は、入学前からへき地勤務を前提条件とし、在学中に学費貸与などで支援すれば、職業の自由といった観点からの批判は避けられそうです。しかしながら、前者の「医師バンク」は実現が難しいのではないでしょうか。

そもそも、都市部へ医師が集中した原因となっているのは、医局離れによって医局の人員を派遣することが立ち行かなくなったことや、臨床研修制度導入により研修医が都市部の病院へ集中しことが挙げられるのではないでしょうか。

さらに、「自ら研修先を選ぶ」「研修医が集まるように、病院がより良い研修カリキュラムを策定するようになる」といった臨床研修のメリットが無くなるように思えてしまいます。何のための臨床研修制度なのか、といった意味合いを考えるべきであると思います。

今後、こうした提案について議論されていくのでしょう。その結果、選挙の公約という形で目に見えてくると思います。そこでしっかりと選ぶことで、今後の医療制度の行く末が決まってくると思います。

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