効き目が高く、増え続ける医療費の削減にも効果のある「スイッチOTC」と呼ばれる医薬品が注目を集めている。医者に処方してもらう医療用医薬品に使われる成分を一般の薬局・薬店で買える大衆薬(OTC)に転用したもの。厚生労働省が普及促進体制を強化しており、医薬品メーカー各社も縮小が続く大衆薬市場の起爆剤として開発に力を入れている。

エスエス製薬は28日、スイッチOTCの総合風邪薬「エスタックイブファイン」を12月26日に発売すると発表した。

医療用医薬品で実績をあげたたんの除去成分の「アンブロキソール塩酸塩」を日本で初めて大衆薬に配合した。初年度の売上高目標は30億円。同社としては6年ぶりとなるスイッチOTCの投入で、感冒薬市場のシェアで4位から3位へとランクアップしたい考えだ。

同社は現在複数のスイッチOTCを厚労省に承認申請中で、「効能がはっきりと体感できるため、緩やかな効き目のイメージがある大衆薬に対する見方が変わる」と、市場拡大を期待する。

業界最大手の大正製薬も今月、アンブロキソール配合の風邪薬でスイッチOTCの承認を取得した。同社は「スイッチOTCは画期的なビジネスチャンスになり得る」と期待を寄せる。

日本でスイッチOTCが認められたのは昭和58年。しかし、承認には医療用薬品並みの臨床データが必要で、開発コストがかかることなどから、「承認数が伸び悩み、普及が進まなかった」(厚労省)という。

しかし、平成18年の薬事法改正で普及促進体制が強化された。改正法では、大衆薬である「一般用医薬品」をリスクの程度に応じて3つに分類。スイッチOTCはリスクが最も高い医薬品に分類し薬剤師による販売時の説明を義務づけ、消費者が安心・納得して購入できるようにした。

また、副作用が大きくない成分については、承認に必要な臨床データを軽減。「スイッチOTCに転用できる候補成分」を業界向けに公表することも盛り込み、医薬品メーカーが開発を進めやすい環境も整えた。

厚労省が普及を積極的に後押しする背景には、高齢化の進展で増え続ける医療費問題がある。国の医療費は平成18年度で32兆4000億円に上り、15年度以降毎年、過去最高を更新している。効き目が高いスイッチOTCが普及すれば、その分、国の支出を伴う医療用医薬品を抑制できるからだ。
(スイッチOTC、風邪薬がメガヒットの予感)


OTCとは、Over The Counter Drugの略で、直訳すれば「カウンター越しの医薬品」という意味です。一般用医薬品のことであり、患者あるいはその家族らが医師の診断によらず、自覚症状に基づいて自らの判断で使用することを目的として使われる医薬品のことを指します。

中でもスイッチOTC薬とは、医療用医薬品として用いられていた有効成分を一般用医薬品として使用できるようにスイッチ(転換)したものです。一般用医薬品として適切な医薬品かどうかについて審査が行われ、医療用医薬品の再審査または再評価が終了していることが必要となります。

ですが、やはり元々は医師・薬剤師の指導のもとで使われるものですので、承認後の一定期間は、薬事法第29条に基づく厚生労働大臣の指定医薬品として、販売を薬剤師が管理する薬局・薬店に限定して市販後調査する必要があります。その後、広く販売されるようになります。

他にも、OTC薬にはダイレクトOTC薬と呼ばれるものもあります。これは、以下のようなものです。
医療用医薬品として承認されている新規有効成分が、ダイレクトに(直接)一般用医薬品として承認されたものをダイレクトOTC薬といいます。代表的なものは発毛・育毛の効果のある成分と言われる「ミノキシジル」があります。製品名「リアップ」というほうが馴染みがあるでしょうか。

この薬はもともと、血圧降下剤(血管拡張剤の1つであり、最初は高血圧の経口薬としてのみ用いられていた)として本来は開発されたものです。ですが、副作用として発毛効果が認められたため、現在では副作用の方が主作用となっています。

こうしたダイレクトOTCやスイッチOTCは、医療用医薬品に匹敵する高い有効性がある一方、副作用もあるため、承認される際には情報提供の方法、広告の宣伝方法、販売の方法などには厳しい審査基準が設けられています。

実際、「リアップ」発売に際しては、「いきなり、誰でも買えるOTC(大衆薬)で発売するのは危険」とする医師・薬剤師・業界関係者などの識者も多かったといいます。

たしかに、手軽に手に入るというのは、病院に行く時間がなかなかとれない忙しい方などには有用なものかもしれませんが、その使用方法や使用量、思わぬ副作用の出現などに関して、危険が存在しています。また、病気の自己判断で「単なる風邪かと思ったが…」という風に、実は重い病気が隠されていたということもあります。

やはり「なかなか治らない風邪」や「一般的な風邪の症状とは異なるものが出てきた」「薬を飲んでから体調がおかしい」といったことがありましたら、是非とも病院へ行って診察を受けていただきたいと思われます。

【関連記事】
睡眠薬の添付文書 警告欄に「夢遊症状」を記載指示−厚労省

インフルエンザやSARSにも 感染予防には薬より手洗いを