厚生労働省は28日、75歳以上を対象に平成20年度からスタートする後期高齢者医療制度に関し、慢性疾患を抱える通院患者に対して年間診療計画の作成や検査料などの定額払いを行い、継続的に病状管理していく方針を、厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。また、重複投薬を防ぐため、医師や薬剤師に薬局で配布する「お薬手帳」の内容確認も義務付ける。20年度の診療報酬改定で実現を目指す。

後期高齢者は糖尿病や高血圧などの慢性疾患で長期間通院するケースが多く、診察内容は経過観察や継続的な指導が中心。新制度では、これらの患者の継続的な医学管理を、かかりつけの主治医に担当してもらう考えだ。

具体的には、主治医が治療方針や1年間の検査予定などを分かりやすく記入した年間診療計画書を作成し患者に提供。治療費の高騰を防ぐため、医師による指導、検査、画像診断などを包括して計算する定額払いも導入する。かかりつけ医に対しては研修の受講を義務付け、新制度の周知徹底を図る。

また、後期高齢者の薬歴管理として「お薬手帳」を積極活用する。調剤時に「手帳」へ薬剤情報や注意事項を記入した場合に調剤報酬を上乗せするほか、医師や薬剤師には「手帳」などで患者の服薬状況を確認することを義務付ける。
(外来患者に定額払い方式導入 後期高齢者医療で厚労省が提案)


厚生労働省は11月に、75歳以上を対象に平成20年度からスタートする後期高齢者医療制度について、初診料を現行より引き上げ、再診料は下げる方針を中央社会保険医療協議会(中医協)に示していました。

この方針を取り入れた理由としては、初診時には患者の病歴や受診歴に加え、利用中の医療・介護サービスなどを詳細に聞き取る必要があり、時間や手間がかかる。ただ、治療が長期化する高齢者は、2回目以降の治療は慢性疾患の経過観察や継続的な管理・指導が中心となるため、再診料は引き下げが適当、としたようです。

治療が長期化傾向にある75歳以上の診療報酬については、若年世代と別体系にする、といった考えのもとに議論が進められていたようですが、上記ニュースでも同様の枠組みの元に考えたようです。

たしかに、増え続ける医療費の負担を考えると、定額制による抑止力を必要とする考えは分かります。さらに、薬歴管理を行い、不必要な薬剤投与や服薬状況の確認義務づけは患者さんにとっても有益なことかもしれません。しかしながら、この制度の問題点としては、以下のようなものがあると思われます。
まず、検査料・治療費などが定額払い制になった場合、その限度額を超えた分は病院の負担になってしまうのであろうと思われます。そうなると、検査や治療などは出来る限り行わない方が病院経営としては儲かる、ということになります。

となると、必要な検査や治療すら行わない(省いてしまう)病院が出てくるのではないか、と懸念されます。そこまでいかなくとも、「必要な検査・治療であるが、これ以上は経営上できない」という自体が生じてきてしまうのではないか、と思われます。

こうした状況は、2006年04月から医療保険を使って受けられるリハビリテーションの期間が、最長で6ヶ月に制限されたときにも起こりました。医療費削減に取り組む厚労省は「不十分なリハビリを長期間続けるより、早期に専門的な訓練を行う方が効果的」として、4月に診療報酬を改定し、脳血管疾患は6ヶ月、心疾患は5ヶ月などと、保険適用の日数が制限されてしまいました。結果、必要なリハビリが受けられないという事態に陥ってしまったケースもあるようです。

もちろん、膨れ続ける医療費の抑止や削減は、急務となっていますが、果たしてこうした提案がもたらす結果は、患者さんにとってどのような影響を持つのか、しっかりと認識していただきたいと思われます。

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