イタリアの検察当局は29日、混雑するローマの交通を出し抜くため救急車を利用したグスタボ・セルバ上院議員(81)について、詐欺罪で裁判所に提訴した。

保守派の同議員は6月、ブッシュ米大統領の訪問で交通規制が敷かれ道路が混雑していた際に、仮病を使って救急車を利用し、テレビのトーク番組に駆け付けたと述べていた。さらに、救急チームの「スピードと効率性」をたたえる発言もしていた。

この行為に対しては、国民から非難の声が上がり、保健当局者も、本当に救急車を必要としていた誰かの命を危険にさらしたかもしれないと警告した。

セルバ上院議員は、このスキャンダルを受けて辞任を申し出たが、すぐに方針を転換し、現在も上院議員を務めている。
(救急車でTV番組に駆け付けた伊議員、裁判の可能性)


上記のニュースは、言語道断といった感じですが、国内での状況も人ごととは言っていられない状況にあります。救急搬送の件数は年々増え続けており、東京消防庁によると、都内だけでも救急車の出動件数は、1995年の44万8,450件から、2005年には69万9971件となっています。

この背景としては、最近、軽傷であっても救急外来に運ばれてくる人や、救急車をタクシー代わりにしてしまうような人が出ているなど、緊急性の低い人が使用していることが背景にあるといわれています。

そのため救急車の到着が遅れ、なおかつ、そういった患者さんに対応するため、本当に緊急性の高い上記のような人を受け入れることが出来ない、といったことが起こっていると考えられます。

福島市では、乗用車にはねられた女性の搬送先の病院が約1時間決まらず、約6時間後に死亡した、という事例がありました。救急搬送される際、4つの病院に計8回受け入れを断られ、約1時間後に別の病院に搬送されたが、事故から約6時間後に脳挫傷で死亡してしまったそうです。

この件を受け、以下のような対策が取られたそうです。
福島市や消防、市内の病院などでつくる「福島市救急医療病院群輪番制運営協議会」は、臨時の総会を開き、消防から救急患者の受け入れを打診された病院は、原則として拒否しないことを決定したそうです。受け入れた後の対応については、満床などのためそのまま治療することが困難な場合、病院間で調整し、より高度な医療ができる病院に移送する、とのことです。

一方で、東京都は「救急搬送トリアージ」という以下のようなシステムを取り入れています。救急搬送トリアージは、救急車の出動件数の増加に伴い、重傷者の搬送を優先し、「けがや病気の緊急性に応じて救急車による搬送が必要か判断する制度」のことです。

救急隊員が現場で患者らから症状を聞き、年齢や呼吸、意識などをチェックし、緊急性が低いと判断した場合、患者らの同意を得て民間搬送業者などを紹介します。現在は、"仮運用"中で、来年3月まで試行した後、本格運用されます。

また、救急車が必要なケースかどうかを助言する「救急相談センター(電話番号#7119)」も同時に開設し、救急車を呼ぶかどうかの判断がつかない場合に相談する窓口も置かれたそうです。

こうした対策からも分かるとおり、救急搬送や救急救命の現場はもはや処理能力の限界近くにあります。あまりにもお手軽に救急車を呼ぶ、といったことは控えるべきであると思われます。

【関連記事】
救急搬送トリアージとは:49件中39件が救急搬送せず−東京消防庁

救急搬送の受け入れ拒否問題−福島市「病院は原則受け入れ」へ