手術件数は経験豊富な病院でさらに増える傾向がみられた。昨年の手術件数が247件と、大阪府内で最も多かった大阪医大病院(高槻市)は、この8年で手術件数が3倍になり、今年は300件を超える見通しだ。同病院一般・消化器外科准教授の奥田準二さんは「治療実績を地元の医師らが評価してくれて、患者紹介が増えている」と話す。

同病院が力を入れるのが、腹部に開けた数か所の小さな穴から、小型カメラや切除器具を入れて行う腹腔鏡手術。手術後の痛みが少ないなどの長所があるが、医師の技術差が出やすい手術法でもある。器具の操作が複雑で、手術時間が長くなる傾向もある。

だが、大腸がん手術の8割を腹腔鏡で行う同病院では、手術時間は通常2、3時間と、開腹手術とあまり変わらない。「以前は4、5時間でしたが、経験と共に短縮されました」。また、手術後の合併症として起こる縫合不全の発生率も、取り組み始めた約10年前の10%から、今では2・9%に低下した。経験の蓄積と工夫の集積が成果を上げている。

大腸がんの進行度は大きさではなく、表面の粘膜の下にどれだけ深く食い込んでいるかで判断される。がんが、粘膜の下の粘膜下層に1mm以上食い込んでいると、リンパ節に転移している可能性があり、腸管を大きく切除する手術が必要になる。しかし、がんの表面の模様などから、粘膜下層への食い込みが1ミリ未満と判断できれば、肛門から入れた内視鏡による切除で済ますことができる。

この場合、ポリープ型のがんでは、根元にかけたワイヤに高周波電流を流して焼き切る「ポリペクトミー」が行われる。平らながんは、粘膜下に生理食塩水を注入して病変を隆起させた後、ワイヤで焼き切る「内視鏡的粘膜切除術」(EMR)で切除できる。ただ、がんが2センチを超えると一度に取り切れず、分割切除になる。すると、がん細胞が腸に残る可能性が高まってしまう。

そこで登場したのが「内視鏡的粘膜下層はく離術(ESD)」。ヒアルロン酸を含む粘度の高い液体を粘膜下に注入し、がんを長時間浮かび上がらせ、特殊な形状の電気メスで周囲に切り込みを入れ、がんを一度にそぎ取る。特に、ESDを安全に行うには高い技術が必要で、経験豊富な病院を選びたい。
(大腸がん 高い技術が必要)


腹腔鏡手術(laparoscopic surgery)とは、開腹せずに腹腔に穿刺したトロカールtrocarと呼ばれる中空の円筒形の管を通して、内視鏡や手術器具を腹腔内に挿入して行う手術のことをいいます。

標準的な手技としては、CO2の注入による気腹下に手術を行います。ですが、高炭酸血症の防止のため、一般には気管内挿管・全身麻酔下に手術を行います。

気腹針を穿刺し、気腹を行った後にトロカール針を穿刺してトロカールの挿入を行います。術式によっても異なりますが、トロカールはだいたいお臍の上や下部に腹腔鏡用のものを挿入します。

さらに手術器具挿入・操作のためのトロカールを通常3〜4本挿入します。ここから手術器具の操作と切除した臓器の腹腔外への摘出を行います。

利点としては、開腹手術に比べて手術侵襲・傷跡が小さく、疼痛が軽度で入院期間も短いという点があります。当初は、胆嚢摘出術に用いられてきましたが、現在では総胆管結石症や食道疾患、胃・十二指腸・小腸・大腸疾患、虫垂,肝・脾領域、各種ヘルニア、泌尿器科・産婦人科領域の手術などあらゆる分野に普及しつつあります。

ただ、以下のような欠点もあります。
合併症、偶発症および欠点としては、気腹針・トロカール穿刺時の不適切な操作による腹部大血管や消化管の損傷・出血などや、術中の視野・操作スペースの制限による誤認や不適切な術操作に伴う合併症などがあげられます。

死亡事故も起き、患者の信頼を取り戻すため、日本内視鏡外科学会は2004年に技術認定制度を始めています。手術のビデオから実技の能力を評価するもので、その結果、第一線の医師の半数が不合格となり、課題が浮き彫りとなったそうです。

通常の外科手術と腹腔鏡手術は、求められる技術がかなり異なるります。その一方で、流行りの手術を始める外科医が出てきた、ということが問題になっていたり、修練を積みたくても、機会に恵まれない状況などが背景にあると思われます。

今後、より一般的に普及していくと思われますが、受けるときには手術成績、十分な説明やリスクなどをしっかりと聞かれることが重要であると思われます。

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