群馬県太田市の県立がんセンターで8月、手術をした患者の腹部に吸引用の管の一部を残したままにする医療ミスがあったことが4日、分かった。病院側は患者に謝罪、再手術して異物を取り除く。
 
病院によると、8月下旬の手術で、腹部にたまる腹水などを取り除くために挿入した吸引用チューブの先端にある長さ約20センチ、直径約1センチのプラスチック製カバーを腹部に残したままにしてしまった。
 
手術は成功し、患者は退院したが、痛みを訴えたため11月下旬に音波診断を実施、異物があることが明らかになった。
 
手術後にガーゼなどの医療器具の数などを点検しているが、吸引用チューブは対象外だった。病院は今後点検項目に加えるという。
 
病院は「県の公表基準に達しないミスなので、執刀医の情報やミスの原因はコメントできない」としている。
 
群馬県病院局によると、医療ミスについて被害の程度によって公表基準を設けており「永続的な障害や後遺症があり、有意な機能障害や症状を伴う場合」に該当しないミスは公表していないという。
(がんセンターで医療ミス 腹部に管残す)


最近では8月に、兵庫県伊丹市の病院で甲状腺眼症治療のため眼窩の骨を削る手術を受けた患者さんの眼球の下付近に、止血用ガーゼを置き忘れる医療ミスが少なくとも4件あったと発表しされていました。いずれも当時10〜30代の女性で、手術後、副鼻腔炎などを発症してしまうというケースもありました。

執刀した担当医によると、「突然出血が多くなったりしてガーゼの数を数えなかったこともあった」と釈明したといいます。

こうした、患者さんの体内における手術器具の置き忘れに関して、2003年のNew England Jarnal of Medicineに、Gawandeらが「手術後の異物置き忘れ群とコントロール群を比較した研究」という発表を行っています。

そこで挙げられているリスク因子としては、以下のようなものがありました。
手術後の異物置忘れ群54人とコントロール群235人を比較した結果、ガーゼが64%、 器具が31%であり、緊急手術、予期せぬ手技の変更、ガーゼ・器具のカウントがなかった、患者の体格指数が高い、といった場合には、異物置き忘れが有意に高いということが分かったそうです。

これに加え、やはり大量出血で慌ててしまった場合や、他の医療事故でもいえますが、医師同士、医師と看護師のコミュニケーション不足が背景にあるのではないか、と思われます。

最近では、ガーゼに金属を縫いつけておいて、術後にレントゲンを撮って確認したり、ICカードや埋め込みチップに使われる小型発信器内蔵のガーゼ類が開発されているということもあります。

せっかく手術が成功したのに、また手術をしなくてはならない、なんてケースでは、患者さんの負担が非常に大きいと考えられます。今後は、こうした置き忘れを防ぐため、しっかりとした予防策が求められます。

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