男性ホルモンは、男性を男性特有の体つきや思考回路に発育させるホルモン。たとえば、筋肉隆々の体つきや、地図を読むなど2次元を3次元に置き換える能力に男性ホルモンが関係していることはよく知られている。テストステロンやアンドロステネジオンなど数種類あるが、テストステロンが最も生理活性が強いとされる。

以前から男性ホルモンについての研究はあったが、男性の健康維持と深いかかわりがあるとわかってきたのは最近のことだ。帝京大医学部附属病院の堀江重郎教授(泌尿器科)によると、男性ホルモンの減少は、50歳代の1割、60〜70歳代の3割にみられるという。

この10年ほどで男性にも更年期があることはよく知られるようになった。男性更年期障害は、疲労感が取れない、やる気がおきない、筋肉痛が続く、寝付きが悪いなどの症状がみられるが、こうした症状に男性ホルモンの減少がかかわっていることが分かっている。とくに男性更年期障害患者の9割にED(勃起障害)があることからも、男性ホルモンがかかわっていると考えられている。

さらに男性ホルモンは、高血圧や動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病と密接な関係があることがわかってきた。たとえば、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は男性に多い。男性の方が内臓脂肪がつきやすいためだが、若い男性で腹が出ている人はそう多くない。40代、50代で腹が出てくるのは、食べ過ぎや運動不足のせいだけでなく、男性ホルモンが減ることで内臓脂肪がつきやすい体になっていることが関係しているという。

また鬱病、排尿障害、認知障害のある高齢男性を調べたところ、やはり男性ホルモンが減少していたことから、これらの機能にも関係があると考えられるという。

鬱病については、男性ホルモンが副交感神経の働きに影響していることから、男性ホルモンの減少で、心のゆとりと密接な関係にある副交感神経の働きが低下し、鬱病になるリスクが高まるのではないかと見られている。

男性ホルモンは加齢とともに減少するが、ストレスによっても減少することが分かっている。ストレスを減らすには、適度な運動と適切な食事、リラックスすることが大事なのはいうまでもない。また、自分の男性ホルモンが減少しているかどうかは普通は気がつかないが、堀江教授はひとつの手がかりとしてEDをあげる。

「ED患者はメタボや心血管疾患の発症率が高いことが分かっている。高血圧や糖尿病は検査しないとわからないが、EDは自覚できる。日本ではEDは『年だから』と気にしない人も多いが、将来の男性の健康の指標になる」と話す。

日本泌尿器科学会や日本メンズヘルス医学会では、男性ホルモン低下による男性更年期障害やED、心身症などの診療マニュアルを現在作成中だ。
(男性ホルモン減少 生活習慣病や鬱病の危険)


更年期といえば、女性だけのものかと思われるかも知れませんが、男性にも更年期障害は存在します。男性更年期障害(PADAM:Partial Androgen Deficiency in Aging Male)と呼ばれます。

加齢に伴うアンドロゲンの低下による諸症状が生じてくると言われており、女性の更年期障害とも症状が似ているそうです。漫画家のはらたいらさんが、PADAMであることを告白したことがあります。

臨床症状としては、疲労感、集中力低下、体力(筋力)低下、抑うつ、意欲の低下、性欲低下、勃起障害、自律神経失調症など、多彩です。もしかしたら、

診断や治療法としては、以下のようなものがあります。
診断としては、札幌医科大学の伊藤直樹准教授による男性更年期障害チェックリストや、男性の老化症状に関する質問票などがあります。

治療法としては、男性更年期障害は男性ホルモン(テストステロン)の減少が引き金になっていると考えられているので、その補充を行います。カウンセリングを行うとともに、男性ホルモンの低下症例にはホルモン補充を行います。ホルモン補充に関しては、前立腺癌では癌の増殖を促してしまうため、あらかじめ確認する必要があります。また、お酒やタバコを控え、運動をする習慣を持つことも重要です。

国内で認可されている男性ホルモン薬は、注射薬のエナント酸テストステロンがあります。125〜250mgを2〜4週に1回筋注します。副作用として多血症が挙げられていますので、採血し、男性ホルモンと一緒に血色素濃度を測定する必要があります。

ただ、男性ホルモンは前立腺癌を悪化させたりする恐れがありますので、こうした病気がない人が治療の対象となります。

最近だるい、疲れやすい、仕事に集中できない…といった症状がある男性の方は、一度、泌尿器科などに行かれてはいかがでしょうか。

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