京都大再生医科学研究所の研究グループが7日、手足の骨が壊死する難病の患者に、体の組織の元になる体性幹細胞を本人の骨髄から採取、移植して骨の再生を目指す臨床試験を始めたと発表した。国が初めて臨床試験を承認。手術は来年2月に行う。全国約1万5000人の患者の治療法として期待されている。

戸口田淳也教授(再生医学)らのグループで、大腿骨の付け根の部分が血行不良で壊死する大腿骨頭壊死症の男性患者(27)に対して行う。患者の骨髄液から「間葉系幹細胞」と呼ばれる骨や血管などをつくる細胞を採取して培養。患者の骨盤からとった骨や人工骨とともに患部に移植する。

体性幹細胞を使う治療法は、受精卵から作られる胚性幹細胞(ES細胞)を使う方法よりも倫理的な問題が少ないメリットがある。体性幹細胞を用いた臨床研究は既に行われているが、国は昨年9月、安全性の確保などを目的に臨床試験の指針を策定。今年10月に京大から出されていた臨床試験実施の申請を承認した。

手首の骨が壊死する月状骨壊死症の患者についても承認を受けており、今後2年間で計40人の患者の手術を計画している。

研究グループによると、人工関節を使った治療法では、手術を2、3回行わなければならないという。「今回の方法が成功し骨が再生すれば、患者にとって大きな福音になる」としている。
(骨が壊死する難病患者に幹細胞使い臨床試験)


幹細胞(stem cell)は、発生における細胞系譜の幹 (stem) になることから名付けられたそうです。細胞分裂を経ても、同じ分化能を維持する細胞のことを指します。

普通の体細胞はテロメラーゼを欠いているため、細胞分裂の度にテロメアが短くなりますが、幹細胞ではテロメラーゼが発現しているため、テロメアの長さが維持されるという特徴があります。また、分化を誘導する遺伝子の発現を抑制する機構が働いており、分化能を維持している、という点も特徴的です。

幹細胞は、
1)胚性幹細胞(ES細胞)
受精卵からつくられる胚性幹細胞(ES細胞)は全ての種類の細胞に分化する事ができる(全能性)
2)成体幹細胞(組織幹細胞、体性幹細胞)
生体内の各組織にも成体幹細胞(組織幹細胞、体性幹細胞)と呼ばれる種々の幹細胞があり、通常は分化することができる細胞の種類が限定されている。

と分かれています。
上記ニュースでは、成体幹細胞を用いているようです。最近話題になった「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」は、ES細胞に似た性質をもっていると言われています。患者自身の細胞組織から遺伝子を抽出することによってiPS細胞を生成し、患者と同じ遺伝子を持つ臓器が再生できることができ、胚性幹細胞による方法では問題があった拒絶反応のない移植医療が実現すると期待されています。

この幹細胞を用いた治療を行った特発性大腿骨頭壊死症とは、以下のようなものを指します。
特発性大腿骨頭壊死症とは、なんらかの理由で大腿骨頭の血流が低下し、骨組織が死んで脆くなり、大腿骨頭の骨組織が壊死に陥り、関節面が陥没したり変形したりする疾患です。壊死の範囲が大きくなると、体重に耐えきれずに潰れたり折れたりしてしまいます。

この病気は上記の患者さんのように、青年〜壮年期に発症することが多いと言われています。1年間の新規発生数は、2000人よりやや多い程度と推定されています。男女比は5:4で少し男性に多く、確定診断されるのは男性では40代で、女性では30代にピークがあると言われています。遺伝性はないといわれています。

症状はあまりなく、大腿骨頭が潰れてしまったりしたときの痛みがあります(比較的急に生じる股関節部痛が特徴的)。他にも、痛、膝痛、殿部痛などで初発症状がみられることがあります。

大きさや位置から、予後がよいと判断できる場合や症状が発症していない場合は保存療法が行われ、リハビリや杖をつかったり、重いものを持たない、といった対策を取ります。

手術療法としては、内反骨切り術や大腿骨頭回転骨切り術、人工物置換術などが行われます。人工物自体には耐久性の問題があるため、若年者の場合は骨切り術をできるだけ行います。

今後、再生医療によって改善が見込めれば、侵襲や苦痛も少なく、非常に有益な治療となるのではないでしょうか。

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