厚生労働省は10日、中国江蘇省南京市で、ヒトからヒトへ感染した疑いのある鳥インフルエンザ(H5N1)の発症例があるとして、空港などの検疫を強化した。WHO(世界保健機関)などからの情報を根拠にした対応。

厚労省によると、中国江蘇省で24歳の男性が鳥インフルエンザに感染し今月2日に死亡。その後、男性の父親(52)も感染が判明した。男性は発病する前に病気の鳥との接触が確認されておらず、中国政府は、男性と接触した人の健康監視を続けている。

日本の検疫所では、サーモグラフィで発熱が確認された旅客に南京滞在の有無を質問し、滞在が判明した場合は検査を実施する対応を9日から始めた。10日夕現在で検査対象者は出ていない。

鳥インフルエンザの「ヒトからヒト」への感染は昨年、インドネシアで感染が疑われる事例があったことが報告されている。鳥インフルエンザは本来、ヒトからヒトには感染しないが、変異によって感染するウイルスが発生すれば、大流行することが懸念されている。
(中国で鳥インフルエンザ 厚労省が検疫強化)


サーモグラフィの発熱による検疫は、SARSの際にも用いられていました。しかしながら、患者が解熱剤で熱を下げてしまうこともあり、実際にサーベイランスを行うには難しい方法ではないか、と思われます。

トリインフルエンザとは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起きる鳥類の感染症です。中でも、ニワトリなどの家禽類に感染して、宿主を死に至らしめる高病原性トリインフルエンザが問題となっています。

今年も、宮崎県清武町や日向市、岡山県高梨市などでH5N1型高病原性トリインフルエンザウイルスが多数の鶏に感染し、殺処分されたことがあり、記憶に新しいのではないでしょうか。

ヒトのインフルエンザの原因になるウイルス(ヒトインフルエンザウイルス)と、トリインフルエンザの原因になるウイルス(トリインフルエンザウイルス)では、感染対象となる動物(宿主)が異なるため、一般的にはトリインフルエンザウイルスがヒトに感染する能力は低く、また感染してもヒトからヒトへの伝染は起こりにくいと考えられています。ですが、大量のウイルスとの接触や、宿主の体質などによってヒトに感染するケースも報告されています。

トリ用ワクチンは開発されていますが、感染予防には完全ではなく、ニワトリの感染を完全回避はできず、感染しても発症を低減できるのみとされています。そのため、ワクチンによる完全な予防は難しいと考えられます。

「人への感染」は、以下のようなことが考えられています。
鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が、人間に感染しやすい性質を獲得する際に不可欠とみられる新たな変異を、河岡義裕・東京大教授を中心とする日本とベトナムの国際チームが特定し、米専門誌に発表しました。

チームは2004年にベトナムの1人の患者ののどと肺からそれぞれ採取した、2種類のH5N1型ウイルスを比較。のどの方のウイルスは、表面のタンパク質のアミノ酸が1カ所、グルタミン酸からリシンに変わっており、マウスに感染させると、のどや鼻など気道上部のさまざまな細胞で増殖しやすく、ほ乳類の一般的な体温(約37度)より低い約33度でも増えることが分かったそうです。

トリ型のインフルエンザウイルスのポリメラーゼ(相補的な塩基配列を持つ遺伝子を合成する酵素)は、高温でよく働く構造になっています。人間の体温は36〜37度ですが、鳥の体温は42度前後と人間より高い。そのため、この体温の差によって、感染しにくいと考えられていました。しかしながら、トルコで見つかったH5N1型鳥インフルエンザウイルスなどでは、人間の低い体温(36度)でも働くような変異が起こっていたのではないか、と考えられています。

もはや、杞憂とは言っていられず、水際でしっかりと防衛する方策が必要になっていると考えられます。

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