以下は、読売新聞で掲載されていた内容です。
IgA腎症と診断され18年です。3年前に出産、現在腎機能は正常で、疲れている時に血尿が出ますが、たんぱく尿は何年も出ていません。2人目の妊娠を考えていますが、病状の悪化が心配です。(28歳・主婦)

IgA腎症とは、免疫グロブリン(抗体)であるIgAが、優位にメサンギウムから係蹄壁に顆粒状沈着を示すことで起こる糸球体腎炎の一種です。紫斑病性腎炎や肝硬変、肺疾患などでも同様にIgA沈着を示しますが、これらの疾患に伴うものは含めません。原因は不明ですが、IgA型の免疫複合体疾患に属するとされ、B細胞およびT細胞系における免疫調節異常の関与が指摘されています。

発生頻度としては、欧米よりも日本で高く、一次性腎炎をもつ成人例の30%、小児例の20%を占めます。どの年齢層にも出現しますが、若干男性に多く、20〜30歳代にピークがあります。

約2/3の症例では、症状のないタンパク尿や血尿で発見され、残りは急性腎炎症状その他で発症します。尿所見は血尿を特徴として、高頻度に肉眼的血尿を伴います。尿タンパクは70%に陽性となり、1日1g以下にとどまります。20〜30%に高血圧、腎機能低下、10%にネフローゼ症候群を合併します。

10〜20%は腎不全に進行し、生存率は10年で80〜85%、20年で50〜70%であるといわれています。1 g/日以上の尿タンパクや高血圧、初診時に腎機能低下がある場合は、予後不良であると言われています。

さて、上記の質問の回答ですが、埼玉医大病院腎臓内科教授の鈴木洋通先生は、以下のように答えていらっしゃいます。
血尿のみで、たんぱく尿があってもわずかな状態が何年も続いている場合は、妊娠しても、ほとんど影響はないとされています。ただし、高齢で、肥満や高血圧の症状を併せ持つ場合は、十分な注意が必要です。

血尿に加え、たんぱく尿が試験紙で(+)〜(3+)(おおむね1日のたんぱく尿が0・5グラム以上)なら、副腎皮質ホルモン(ステロイド)による治療や、IgAが大量に作られている扁桃の摘出手術で、たんぱく尿や血尿を減らしてから妊娠した方が良いと考えられています。

最も問題になるのは、腎機能障害がすでに進行している場合(血清クレアチニンで1・2ミリ・グラム/デシ・リットル以上、推定糸球体ろ過量で75ミリ・リットル/分以下が目安)です。妊娠後に腎機能障害が悪化することが多く、一般的には妊娠は勧められません。

ご質問者は血尿のみの状態が続いていることから、2人目の妊娠も症状の進行には大きな影響を与える可能性は少ないでしょう。ただし、安心してしまわずに妊娠中の血圧や体重増加には十分に注意して下さい。

IgA腎症の治療法としては、以下のようなものがあります。
々碍貍板薬
→抗血小板薬の長期投与を行う(蛋白尿減少効果をもつ)。
降圧薬
→腎不全を伴わない高血圧症例についてはACEIやARB(これらは妊娠中は禁忌)、降圧利尿薬を使用し、降圧不十分あるいは腎不全を伴う症例に対してはカルシウム拮抗薬あるいはα-遮断薬を用いる(降圧による効果に加え、慢性腎障害時における腎機能保持効果や蛋白尿減少効果を期待できる)。
I腎皮質ステロイド
→尿蛋白量が0.5g/日以上で,クレアチニンクリアランスが70 ml/min 以上であれば適応となる(蛋白尿減少や腎機能保持効果をもつとされている)。
す涯展婆
→腎生検で半月体形成,糸球体硬化,ボウマン嚢との癒着などが目立つ場合はワルファリンを用いるが、入院患者ではヘパリンを使用することもある(カクテル療法)。
ヌ髪嵳淦薬
→副作用が考慮されるため、IgA腎症の基本的治療薬には選択されず、急速進行例や高度の急性炎症所見を認める症例に用いられる。

『IgA 腎症診療指針』によれば、予後比較的不良群以降は、過労は避け、妊娠・出産も避けることが望ましいといわれています。ですが、すべての患者さんが妊娠を諦める必要があるというわけではなく、上記のような対処を行うことで、妊娠の継続が可能となるのではないか、と思われます。

【関連記事】
本当は怖い家庭の医学 症例集

急性糸球体腎炎