乳がん細胞が悪性化して転移しやすくなる仕組みを、大阪バイオサイエンス研究所(大阪府吹田市)の佐辺寿孝部長(分子生物学)らのグループが解明し、16日付の英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版に発表した。
 
GEP100と呼ばれるタンパク質が、2種類のがん関連物質と連携することで悪性化が引き起こされていた。佐辺部長は「この連携を邪魔することができれば新たな抗がん剤開発につながる」と話している。
 
京都大、大分大との共同研究。グループはがん細胞の増殖に関係する上皮成長因子(EGF)受容体に着目。受容体の根元にGEPがくっつくと、細胞内に眠っていてがんの悪性度にかかわるArf6という物質が活性化しやすくなることを突き止めた。初期の乳がん細胞は乳腺にとどまっているが、進行すると悪性化してリンパ節などに転移する。ただ詳しい仕組みはこれまで不明だった。
(乳がん悪性化の仕組み解明)


遺伝的に乳癌になる患者さんもおり、遺伝的乳癌の約45%、遺伝的乳癌と卵巣癌を合わせると80%以上では、BRCA1という遺伝子の突然変異が、癌の原因であると予測されています。BRCA1遺伝子は、ヒト家族性乳がんの原因遺伝子として知られる、癌抑制遺伝子であるといわれています(正確には、酸化的DNA損傷の転写共役修復に関与しているといわれています。つまり、傷ついたDNAの修復に関与しているわけです)。

既に、BRCA1遺伝子に関してはイギリスにて、発症リスクを高める遺伝子を持たない受精卵だけを検査で選別して妊娠、出産につなげる試みが、近く承認される見通しであると言われています。倫理的な問題はあるかと思われますが、臨床的な応用が可能であるという道筋は示しています。

さらに、上記のようにGEP100と呼ばれるタンパク質が関係して、悪性化する仕組みもわかりつつあるようです。臨床的な応用ができれば、「悪性化する前に腫瘍を切除する」といったことや、選択的にGEP100に関連する物質を抑制することで、癌発生を抑えることが出来るかも知れません。

乳癌の早期発見には、乳がん検診が重要です。その検診については、以下のような問題点が指摘されています。
乳癌患者のうち、乳房のエックス線(マンモグラフィ)などを使った検診で癌が見つかったのは2割に過ぎず、4人に3人は、検診を受けずに自分でしこりなどの異常に初めて気づいて病院を受診したことが、日本乳癌学会の大規模調査でわかっています。

これは、多くの女性が乳癌に最初に気づくのは、ほとんどが自分で「しこり」に気づいたため、との結果のようです。検診にて発見されるのは、たった2割でしかないと判明しました。

その原因としては、乳癌検診の受診率が低いままで、「しこりが無ければ大丈夫」と思われる女性が多いと考えられます。ですが、「胸を触る自己診断で見つかる乳がんの大きさは平均約2センチで、自然に気づく場合は3センチ以上が多い」といったことや、「発見時には既に、リンパ節に転移していた人も、1/3」といったことからも、検診率の上昇を目指す必要があります。

一般的な乳癌のスクリーニング検査としては、問診、触診、軟X線乳房撮影(マンモグラフィー)、超音波検査等が実施され、臨床的に疑いが生じると、生検が実施され組織学的診断により癌かそうで無いかが判別されます。

乳癌発症年齢は20代から認められ、45歳がピークとされます。特に40〜50歳代の方は、是非とも乳癌検診を受けられることが望まれています。

早期発見できれば、もちろん、生存率を高めることもそうですが、乳房温存術によってあまり創を大きくすることなく手術することが出来ます。また、広汎なリンパ節郭清などを省くことが出来るため、リンパ浮腫といった術後の合併症が起こることを防ぐことができると思われます。

今後は、遺伝子的な検索によって、よりピンポイントで有効な治療が可能になるのではないか、と期待されます。

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