1973年に20歳の女性に埋め込み手術が行われた「原子力ペースメーカー」が術後34年を経た現在もなお稼動し、この女性の心臓を支えている。コストや耐久面において理にかなっているともいえる。

だが、同ペースメーカーの埋め込み手術を行った米国のニューアーク・べス・イスラエル・メディカルセンターのビクター・パーソネット医師は、難点があるとして同ペースメーカーを再び採用することは支持できないとの見解を示した。

同医師は、医学情報誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に宛てた書簡の中で、電池式のペースメーカーの価格が5万5000ドル(約623万円)なのに対し、当時5000ドルだった原子力ペースメーカーは、現在の価格にして2万3000ドル以上に相当し、維持費は1万9000ドルほどかかるとしている。

現在54歳となった患者の女性は、ペースメーカーの連結部分の修理が必要な以外、経過は良好。定期的な検診を継続しているという。

原子力ペースメーカーについては、最も危険な物資とされるプルトニウムを動力源としているため、これまでも論議を呼んできた。
(「原子力ペースメーカー」、埋め込み後30年経てなお稼動中)


不整脈の中には、洞不全症候群や房室ブロック、心房細動などに代表される徐脈を起こす疾患群があります。これらの不整脈の一部には、放置すると心不全を合併したり、致死的な心停止に発展する可能性があります。そこで、心臓ペースメーカーは、このような場合に、適切な機能を喪失した本来の心臓の刺激伝導系に代わって、心筋を刺激し、心臓を収縮させてくれます。

ペースメーカーは、一般的に心臓に対する電気刺激発生装置のことで、バッテリーとICを含む本体部分とリード線から成ります。バッテリーは、電池寿命が約8年程度ですので、時期が来ると交換する必要があります。恒久的な使用を前提とした体内埋め込み式のものと、一時的な使用を前提とした体外式のものがありますが、上記ニュースのようなものはもちろん、体内埋め込み型です。

よく「ペースメーカーが誤作動する恐れがあるので、携帯電話のご使用はお控え下さい」などの張り紙が院内などで見られるかも知れませんが、これは以下のような理由によって起こるものです。
ペースメーカーは、患者の心臓の状態や重傷度に応じ、電気刺激のモードを変更して使用するのが一般的です。たとえば、「VVI」といったモードであったとします。これは、「心室を刺激し、心室の自己収縮を感知し、設定時間内に自己収縮があれば次の刺激をinhibit(抑制)する」と意味します。
最初の一文字目は「刺激する場所」を意味します。
→A: atrium(心房)、 V: ventricle(心室)、 D: dual、 O: none
二文字目は、心臓収縮を感知する場所を意味しています。
→A: atrium、 V: ventricle、 D: dual、 O: noneに分かれています。
三文字目は、感知した信号に対しての次の刺激をどうするのか意味しています。
→I: inhibit(抑制する)、T: trigger(引き起こす)、D: dual、 O: none

モードを変更する場合は、専用の装置を使用し、ペースメーカーへ向けてモード変更の電磁波を照射する事によって変更を行う方法が一般的です。このモード変更は、ペースメーカーを患者の体内に埋め込んだままの状態で行う事が可能です。

患者さんは再手術等の負担が無く、無痛で行えるというメリットがありますが、携帯電話等が発する電磁波を受信すると、その電磁波がモード変更のための電磁波であると誤検知し、誤作動を起こすというリスクがあるわけです。

ただ、実際には携帯電話が心臓ペースメーカーに対して誤動作を引き起こしたという事故が報告された事例は世界中でこれまで認められないと言われています。ですが、もしものことを考え、患者さんの近くで使わないようにするのは重要であると思われます。

ただでさえ「原子力」に抵抗感がある日本で、広まるは難しいかと思いますが、バッテリーの交換が不要であるというのは魅力的ではないでしょうか。また、寿命のより長いバッテリー開発などができれば、と期待されます。

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