動脈瘤などの手術に使う人工血管「トリプレックス」に血液が漏れる可能性がある不具合が見つかったとして、同製品を輸入販売する医療機器メーカー「テルモ」(東京都渋谷区)が15日から自主回収を始めたことが21日、分かった。

同社によると、トリプレックスは合成繊維の人工血管で、動脈瘤が原因で破裂しそうな血管などを人工血管に置きかえる手術に使うという。

回収対象は今年11〜12月、42医療機関に納入した234本。そのうち22医療機関で既に60人に利用されているが、これまでに健康被害の報告はないという。

東日本地域の病院で14日、動脈瘤の手術を受けていた患者に、人工血管が使われた際、製品から血液が漏れているのを、医師が見つけ、不具合が発覚した。その後の調査で、製品の縫合確認工程において、未縫合品が混ざって出荷されていることが判明したため、自主回収を始めたという。
(テルモの人工血管に血液漏れる不具合 自主回収)


人工血管は、大動脈解離や大動脈瘤などの疾患で用いられます。人工血管には、生体になじみやすいことに加え曲がりやすくつぶれにくい特性が求められており、市販品はポリエチレンなどの合成繊維製や合成樹脂製が主流です。

特に、手術に用いる人工血管の材質は Dacron とよばれる化学繊維で織り込んで作ったものやGoreTexという撥水性材料で作られた筒状構造のものです。

Dacronの織物の場合は、血液が折り込みの目から 漏れることで出血がおこるわけですが、最近の人工血管材料の場合、筒の外表面にコラーゲンやゼラチンを”塗って”出血がおこらないようにしたものとなっており、吻合部以外からの出血の問題はほぼ完全に解決されています。もちろん、人工血管の耐用性は長くあってしかるべきであり、人工血管の劣化によって再手術を要するような事態になっては困るわけです。

こうした人工血管は、大動脈解離や大動脈瘤などの手術で用いられます。適応となるのは、以下のような場合です。
大動脈瘤とは、主に動脈硬化等に理由により、腹部や胸部の大動脈が部分的に瘤状に膨れる疾患です。大動脈瘤の中でも、頻度として最も多いのが腹部大動脈瘤です。腹部大動脈の正常直径は約2cm以下であり、4cm以上(2倍以上)で腹部大動脈瘤と診断されます。

動脈瘤が大きくなるだけでは、無症状なことが多いです(大きくなると、お腹が膨れてくることもあります)。しかしながら、動脈瘤が大きくなると破裂して約9割の方が失血死してしまいます。ですので、その前に治療を行う必要があります。

手術適応となるのは、以下のような時です。
・男性の場合は直径5cm、女性では4.5cm以上
・1年間で0.5cm以上拡大するケース
・嚢状瘤の場合(焼いたお餅のように、一方だけ膨らんだタイプ。破裂しやすい)

一般的には、人工血管に置換する方法がとられます。現在の所、60人に利用されていますが、これまでに健康被害の報告はないとのことです。ですが、今後に血液の漏出などが起こる可能性もあると思われます。さすがに、再置換などは行わないでしょうが、今後もしっかりとフォローアップしていくことが望まれます。

【関連記事】
不整脈患者に朗報となるか?「原子力ペースメーカー」

コンタクトレンズ3枚重ね1年間装用の男性、緊急手術へ