麻疹やおたふく風邪などは、一般的に子どもの病気だと思われている。確かに患者のほとんどは子どもだが、例えば麻疹は、昨年から今年にかけて全国の大学を中心に大流行するなど、最近は大人にも猛威をふるうことがあるのだ。予防接種を受けているはずなのに、なぜ成人になって子どもの病気にかかってしまうのだろう?

「麻疹に関していえば日本で長い間、流行が起こっていなかったからでしょうね。本来、ワクチンの接種によって得た免疫は、どんどん効力が落ちていってしまうものです。ウイルスと戦い、抗体を上げる機会が定期的にあれば、そのたびに免疫は強化されるのですが、最近流行することが少なかったために、高い免疫を維持できなかったのでは、と考えられます」(東京医科大学病院・小児科講師・河島尚志先生)

日本で麻疹ワクチンの定期接種が始まったのは昭和53年のこと。それ以前はたびたび麻疹が流行し、子どもが一度はかかる病気のひとつだった。そのため強い抗体を持っている人も多かった。しかし、予防接種が普及したことで、麻疹の流行頻度が大幅に減少。そのためワクチン未接種の人に加え、20代以下の世代は、感染を予防できる抗体を持っていない人が多いのだ。

さらに注目すべきは、麻疹やおたふく風邪などに成人がかかると、重症化するケースが多いということ。でも病気に対する免疫って子どもよりも、長年生きてきた大人の方があるんじゃないの?

「体の中に侵入してきたウイルスをやっつけようと激しく抵抗するので、小児期よりも高熱が出たり、発疹がひどくなってしまうのです。また大人の場合、体のどこかに疾患を抱えていて、それと合併して重症化するケースもあります。子どもなら軽く済む病気でも、大人がかかると命の危険さえあるのです」(同)

水疱瘡にいたっては、死亡率は子どもの数十倍とか。子どもの病気だと思ってなめてはいけないのだ。
(“子どもの病気”に大人がかかると重症化する理由とは?)


麻疹は、"はしか"とも呼ばれ、麻疹ウィルスの感染により起こります。今年の5月頃、関東地方を中心に流行しました。国立感染症研究所によると、15歳以上の患者が2002年以降で最多のペースで増え続けました。高校34校、高専18校、大学54校が休校し、高校・高専・大学のみで1337人の患者が発生しました(2007年06月時点で)。

この流行の原因としては、1)定期接種世代の時点で使用されていたMMRワクチンの副反応の影響による接種率の低迷、2)麻疹発生の減少によりブースタ効果(抗体が出来ている人がウィルスにさらされることで、再び抗体が増える)が期待できなくなったことで、抗体価の低下が低下して発生したことなどが考えられます。

麻疹には、症状の出現する順序や症状の続く期間に個人差が少ないという特徴があります。一般的には、以下のようなものがあります。
1)潜伏期間
麻疹ウイルスへの曝露から、発症まで8〜12日間かかります。

2)カタル期
発症すると、発熱(39℃程度の高熱となることが多い)に、咳、鼻汁、結膜充血、眼脂といったカタル症状を伴います。発熱2〜3日目で頬粘膜にコプリック(Koplik)斑が出現します。コプリック斑を認めれば特異的な診断価値が高いです。カタル期は3〜4日間続いた後、いったん解熱します。他者への感染力は、このカタル期に最も強いです。

3)発疹期
カタル期の後にいったん解熱しますが、半日ほどで再び39〜40℃の高熱が出現し(二峰性発熱)、発疹が出現します。発疹は体幹や顔面から目立ち始め、後に四肢の末梢にまで及びます。
発疹は鮮紅色で、やや隆起している。特に体幹では癒合して体全体を覆うようになりますが、一部には健常皮膚を残します。
発熱・発疹のほか、咳・鼻汁もいっそう強くなり、下痢を伴うことも多いです。口腔粘膜が荒れて痛みを伴います。これらの症状と高熱に伴う全身倦怠感のため、経口摂取は不良となり、特に乳幼児では脱水になりやすいです。

4)回復期
解熱後も咳は強く残るが徐々に改善してきます。発疹は退色後、色素沈着を残すものの、5〜6日程で皮がむけるように取れるとも報告されています。回復期2日目ごろまでは感染力が残っているため、学校保健法により解熱後3日を経過するまでは出席停止の措置がとられます。

治療としては、特異的なものはなく、解熱剤、鎮咳去痰薬、輸液や酸素投与などの支持療法を行います。成人では、重症化しやすいので、注意が必要です。

ワクチン接種後の抗体価の低下を防ぐため、諸外国では年長幼児〜学童期に2回目のワクチン接種を行い、抗体価の再上昇(ブースター効果)を図っています。日本においても、2006年4月以降に1回目のワクチン接種を受ける児からは、就学前の1年間に2回目の接種を受けるように予防接種法が改正されました。

免疫のある患者では、非典型的で軽症な経過をとることがあります。ワクチン接種歴により、一般的には軽く済むといわれています。やはりできるならば、ワクチンを受けていただきたいと思います。

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