茅ケ崎市立病院(神奈川県茅ケ崎市)は25日、昨年12月から今年4月にかけて、心臓カテーテル検査を受けた60〜70代の男性患者5人が、C型肝炎に感染したと発表した。血管から管を通して血圧を測定する機器「トランスデューサー」を、測定後に交換しなかったため、感染したとみられる。同病院は感染者5人のC型肝炎治療費などを負担するとともに、他にも感染者がいないかを調べる。

同病院によると、感染が起きたのは18年12月に1人、19年3月に1人、同年4月3人。患者5人から見つかったC型肝炎ウイルスの遺伝子解析の結果、同一の同ウイルスから感染した可能性が高いことが判明。病院内での聞き取り調査の結果、トランスデューサーを交換しないまま心臓カテーテル検査・治療が行われた患者がいた可能性が高いことも分かった。担当技師は「手術が立て込んで、忙しかった」と話しているという。

感染は今年11月、同じ日に心臓カテーテル検査を受けた患者2人がC型肝炎を発症したことから発覚した。
(患者5人がC型肝炎感染「忙しく機器交換せず」)


心臓カテーテルは、1800年代にドイツの医師であるヴェルナー・フォルスマンが着想し、アメリカのクールナン博士と、リチャ―ズ博士が開発しました。

ヴェルナーは、風船のついたカテーテルを馬の心臓に挿入し、血圧を測ったというの実験からヒントを得て、人間の肘の静脈から、心臓まで挿入し、直接、心臓に強心剤を投与できれば、心臓の周りの動脈を傷つけることもなく死なずに済む患者も多くなるのでは、と考えたそうです。結果、ヴェルナーは自分自身の体を用いて実験をおこない、それから25年後、ノーベル賞を受賞知らせる手紙を受け取ったそうです。

心臓カテーテルは、主に以下のような目的で行われます。
・狭心症・心筋梗塞の治療方針の決定・および治療(インターベンション)
・弁膜症の治療方針の決定
・心筋症の診断(心筋生検)
・大動脈瘤の検査

こうした心機能の詳しい検査(手術適応をふくめて)や治療などの目的として用いられているわけです。

特に、ショックや心不全など重篤な患者に於いて、心機能を連続的に測定するために使用するものを肺動脈カテーテル(発明者の名前をとってSwan-Ganzカテーテルともいう)といいます。重度の心筋梗塞後や心肺停止蘇生後など、特に重篤な患者に用いられますが、侵襲度が大きく、耐えうるかどうかの見極めも重要となります。

方法としては、大腿動静脈、肘部動静脈、橈骨動脈(手首の動脈)等のいずれかの血管を局所麻酔下で穿刺し、カテーテルを心臓まで挿入し血管造影や心機能測定などの検査や、場合によっては治療などを行います。

カテーテル検査では、以下のような合併症の危険もあります。
1)検査または治療に伴う死亡
2)塞栓症(脳塞栓症、心筋梗塞、末梢塞栓症、肺塞栓症などがあり肺塞栓症に関しては術後数日経っても生じる可能性がある)
3)出血性合併症(穿刺部血腫、ショック、心タンポナーデ等)場合により血腫除去手術、輸血等が必要となることがある。
4)血管穿孔、血管解離

こうしたものが問題点としてあります。さらに、上記ニュースでは血管から管を通して血圧を測定する機器「トランスデューサー」を交換しなかったために、感染が起こってしまっています。

もちろん、器機を繰り返し使う検査(たとえば内視鏡など)では、しっかりとした安全管理や衛生管理が行われているところがほとんどでしょうが、こうした感染症のリスクがあるのだと医療スタッフが再認識する必要があると思われます。今後、こうした事故が起こらないように、再発防止策の検討などが求められます。

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