階段の上り下りや、一歩を踏み出したときなど、中高年になると慢性的なひざの痛みに悩む人が多い。その多くは変形性膝関節症で、国内の推定患者は1000万人に上るともいわれている。年だからとあきらめる人も少なくないが、専門家は「早めの診断と適切な治療で、症状は改善する。痛みが続くようなら我慢せず受診してほしい」と呼びかけている。

変形性膝関節症は、加齢や肥満などによってひざの関節に負担がかかり、軟骨がすり減り、骨にも変形をきたす病気だ。初期の段階は歩き始めや階段の上り下りで痛む程度だが、症状が進むと、関節の炎症や、水がたまって腫れることもある。さらに悪化すると、ひざを動かすたびに骨と骨がぶつかりあって激しい痛みを生じ、歩行困難になるケースもある。

東邦大学医学部整形外科学教室の勝呂徹教授は「長年使ったタイヤがすり減るのと同じで、一種の老化現象ともいえる。高齢になるほど発症しやすく、女性ホルモンの減少が影響していると考えられ、特に女性に多いのが特徴」という。患者は60代から目立ち始め、70代で女性の60%、80代では実に80%以上という。

だが科研製薬が今年9月、40歳以上の男女約1200人にアンケート調査を行ったところ、ほぼ6割の人が何らかのひざの痛みを抱えながら、うち8割の人が治療を受けていなかった。「病院に行くほどではない」「我慢できる痛みだから」「年のせいで病気ではないと思う」が主な理由で、市販薬の購入など自己流で対処する人も多かった。

千葉大学名誉教授で鹿島労災病院の守屋秀繁院長は「すり減った軟骨は元に戻らないが、症状や年齢に応じて、さまざまな治療法の選択肢がある。痛みが続くようなら早めに受診して」と呼びかけている。

一般的な治療法として、初期の場合は、膝関節を支える太ももの筋肉を鍛える運動療法のほか、サポーターや足底板などの装具を使って関節にかかる荷重を軽くする装具療法、痛みや炎症を抑える消炎鎮痛剤の投与、ヒアルロン酸の関節内注射などが行われる。加齢で減少したヒアルロン酸を関節に直接注射して補うことで、ひざの動きをなめらかにする効果があるという。

運動療法や薬物療法で改善しない場合は、すねの骨を切ってO脚を矯正し、ひざの内側にかかる負担を軽くする「骨きり術」や、ひざの中に内視鏡を入れて行う関節鏡視下手術、金属やプラスチック製の人工関節に入れ替える手術などが選択肢になる。

勝呂教授によると、人工関節手術はこの10年でほぼ5倍に増え、年間4万件に上るという。高齢化に伴い、手術を受ける患者のピークも60代から70代へと上昇。92歳で手術を受け、海外旅行を楽しんできた元気な女性もいるという。

勝呂教授は「高齢女性の場合、孫の受験や夫の世話など家族のために手術をためらうケースも多い。だが、ひざは健康で自立した生活をおくるのに欠かせない。年だからとあきらめないで、自分のひざの状態を理解して早めのケアを心がけてほしい」と話している。
(「変形性膝関節症」 “年だから…”で我慢せず早めの受診を)


変形性関節症とは、関節のクッションである軟骨のすり減りなどが要因となって、膝や股関節など(他にも指節関節、親指の付け根、頸部、脊椎、下背部、足の親指などに生じることがあります)、膝関節などが高い頻度で侵されます)に炎症が起きたり、変形したりして痛みが生じる病気です。

簡単に言えば、変形性膝関節症とは、膝関節の2つの骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減り、骨が削れて変形し、周りの組織に炎症が起きて、発症すると考えられています。関節の動きが悪くなり、痛みや歩行障害などが出てしまいます。40代後半から50代に多く、全国でおよそ100万人の患者がいると言われています。

変形性膝関節症と気づく症状や治療は、以下のようなものがあります。
初期症状としては、立ち上がるなどの体重をかける動作も含めて体を動かすと痛みが強くなります。さらに進むと関節が動きにくくなり、ついには脚を伸ばしたり曲げたりができなくなります(正座や階段の昇降が苦手になる)。

また、原因としてはまず肥満が原因としてあげられます。体重が重いと、どうしても負荷が大きくなってしまうわけです。そして、過度のウォーキングも原因となります。軟骨は加齢とともに減っていくので、年齢も要因となります。

治療としては、病変が初期の場合は、理学療法として局所温熱療法、筋力強化や関節拘縮の予防を目的とした運動療法、さらに装具療法、薬物療法などが保存的に行われます。薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤投与、ステロイドの関節腔内注射などが行われます。

ただ、病変が進行して著しい機能障害を示すものに対しては、手術療法として関節固定術、関節形成術、骨切り術、人工関節置換術などが行われます。軟骨は一度すり減ると、二度と復活することはないため、早期発見・早期治療が重要です。特に体重コントロールなどは、しっかりとする必要があると思われます。

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