NTT東日本長野病院(長野市三輪)は31日、入院患者や看護師など計25人が下痢や嘔吐などの症状を訴え、うち80代の女性入院患者が30日に死亡したと発表した。女性を含め6人からノロウイルスが検出された。感染性胃腸炎の集団発生とみられる。

同病院によると、症状を訴えたのは、73歳から97歳の患者17人と、28歳から60歳の看護師と薬剤師8人。24日から症状を訴え始めたという。
(ノロ集団感染で80代女性死亡 NTT東日本長野病院)


感染性胃腸炎の患者報告数が急増していることが、国立感染症研究所の12月16日までの集計で明らかになっています。大半はノロウイルスが原因とみられ、九州地方で特に多いという局地差があるようです。

全国約3,000の小児科定点医療機関からの報告は、12月2日までの1週間で4万1003人(定点当たり13.6人)で、前週の約1.5倍に増加したそうです。都道府県別の定点当たり報告数は、長崎の34.7人が最多。大分32.1人、佐賀29.0人、福岡26.7人、熊本26.2人と続き、九州での流行が目立ちます。

最近では、12月始めに横浜市立藤が丘小学校で、児童が相次いで嘔吐や発熱などの症状を訴え、169人が欠席、36人が早退していたことが分かっています。同市教育委員会によると、症状は軽く入院した児童はいなかったそうですが、青葉区福祉保健センターは、集団食中毒や、ウイルス性の感染症の疑いがあるとみて調査していました。

11月には、品川プリンスホテルで開かれたパーティーに参加した宴会客が下痢や腹痛、発熱といった症状を訴え、少なくとも5人の便からノロウイルスが検出されていたことが明らかとなりました。

4月にも、王子市の精神科病院の入院患者が嘔吐や下痢、発熱の症状を訴え、保健所が調査した結果、ノロウイルスが原因の食中毒と断定したと発表されていました。発症者は患者42人とのことです。

ノロウィルスの感染経路には、以下のようなものがあります。
1)汚染されていた貝類を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
2)食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を行う者などが含まれます)が感染しており、汚染した食品を食べた場合
3)患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染した場合
4)家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫感染等直接感染する場合
5)ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合

特に、「患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染」が多いように思われます。そのため、以下のような予防策が重要であると考えられます。
対策としては、石けんを使った流水での手洗いと、一般家庭にもある塩素系漂白剤による食器やまな板などの消毒が重要であるといわれています。特に、患者発生後には、感染の拡大を防ぐために、ウイルスを大量に含む患者の便や嘔吐物のついたものはしっかりと塩素系漂白剤などを用いて洗ってください。また、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効であるといわれています。

手洗いに関しては、厚生労働省のノロウイルスに関するQ&Aによれば、『石けんを十分泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル又はペーパータオルで拭きます』ということが重要なようです。

普通の石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが(ノロウイルスの失活化には、エタノールや逆性石鹸はあまり効果がないといわれています)、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があるそうです。ですが、できれば液状の薬用石けんなどを用いるほうが良いように思います。

治療法としては、2007年現在、ノロウイルスに有効な抗ウイルス薬は存在しません。下痢がひどい場合には水分の損失を防ぐために輸液などを対症療法的に用いる場合があります。スポーツドリンクなどで、十分に水分を摂って休むしかない、ということしかできないそうです。

また止瀉薬(下痢止め)の使用については、ウイルスを体内にとどめることになるので用いるべきでないと言う専門家もいます。医師の指示がなく、仕事等の生活上でも特に必要でない場合は下痢止めの服用は避けるのが賢明だという説もあります。日本国厚生労働省は止瀉薬使用を望ましくないと記載していますが、ここまでに明言しているのは米国FDAとは対称的です。

今後、さらに増えていくことも考えられます。しっかりと予防を行い、対策を行いましょう。

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