以下は、2008年01月04日放送の「難病の子どもたち」で紹介されていた内容です。
中学2年生の兄・西晃平くん(14)と、小学6年生の妹・西加純ちゃん(12)の2人は、身長が100cmちょっとであり、5歳児ほどの身長しかない。その原因となるのは、成長が止まってしまう「ムコ多糖症(モルキオ症候群)」である。
番組の冒頭、二人の服選びが映されていた。もちろん、身長にあった5歳〜6歳用の服から選ばなくてはならない。しかも、脚や腹部などの骨変形により、体型によっても選べる服は狭まってしまう。また、長らく立っていることも難しい。脚の変形などによる(X脚)痛みがひどく、眠れない夜もあるという。
二人がモルキオ症候群と診断されたのは、加純ちゃんが5歳の時。兄の晃平くんが悪性腫瘍を患い、入院するなど、両親がかかりきりになっているとき、加純ちゃんの背が1年間に全く伸びなかったことから病院に行き、明らかになった。結果、二人ともモルキオ症候群であった。
加純ちゃんは今回、初めて友達同士でショッピングに出かけた。長時間立っていることも難しかったが、何とか友達との大切な思い出作りをすることができた。
兄の晃平くんは、「結婚できるのか?」「就職できるのか?」…など、将来の不安に対し、14歳の兄はある決断をすることになった。それは、同じ病気の大人の患者に会うこと。そこで、現在は木工所の事務を行う男性に会いに行く。彼は、同じ歳の女性と結婚し、2人の子供をもうけていた。運転も自分の体にあった車ですることができる。
「片意地張らず、自分のできる範囲のことをするほうが、プラスになる」と彼は、晃平くんに語った。それは、病気を一種の個性とみなし、それとともに生きることを選ぶべきなのではないか、と言っているように思う。
「将来の夢は?」と訊かれて、晃平くんは「物理学者」と答えた。その理由として、「物理は、自分の想像の中でさまざまな研究をすることができる(理論物理学のことを指していると思われる)から」と答えていた。加純ちゃんは「ファッションデザイナーになって、大人っぽい子供服を作りたい」と答えていた。
先天的な病気をもちながら、あくまでも前向きに生きていく姿が、なんとも頼もしく見えた。
ムコ多糖症は、ライソゾームという分解酵素のうち、古くなったムコ多糖を分解する酵素が生まれつき欠損しています。ライソゾームとは、細胞の細胞質に存在する分解酵素です。そこで、細胞質に溜まった老廃物を分解しています。ですが、ムコ多糖症ではここに異常があるわけです。
つまり、ムコ多糖の分解酵素の一つの遺伝子に傷が付いてしまっている遺伝性の疾患です(ライソゾーム病の一種)。1型から8型まで存在し、2型だけが伴性劣性遺伝(X連鎖性劣性遺伝)で、そのほかの型は全て常染色体性劣性遺伝です。ムコ多糖を分解するのには、多くの酵素が関与しており、そのため、欠損している酵素の種類それぞれによって病気の型が異なっています。
モルキオ症候群は、ムコ多糖症4型にあたります。患者組織尿中に、ケラト硫酸が蓄積することが特徴的です。中でも、A型(N-acetylgalactosamine 6-sulfatase欠損症)とB型(β-galactosidase欠損症)とに分けられます。A型が圧倒的に多いといわれています。
症状や治療としては、以下のようなものがあります。
中学2年生の兄・西晃平くん(14)と、小学6年生の妹・西加純ちゃん(12)の2人は、身長が100cmちょっとであり、5歳児ほどの身長しかない。その原因となるのは、成長が止まってしまう「ムコ多糖症(モルキオ症候群)」である。
番組の冒頭、二人の服選びが映されていた。もちろん、身長にあった5歳〜6歳用の服から選ばなくてはならない。しかも、脚や腹部などの骨変形により、体型によっても選べる服は狭まってしまう。また、長らく立っていることも難しい。脚の変形などによる(X脚)痛みがひどく、眠れない夜もあるという。
二人がモルキオ症候群と診断されたのは、加純ちゃんが5歳の時。兄の晃平くんが悪性腫瘍を患い、入院するなど、両親がかかりきりになっているとき、加純ちゃんの背が1年間に全く伸びなかったことから病院に行き、明らかになった。結果、二人ともモルキオ症候群であった。
加純ちゃんは今回、初めて友達同士でショッピングに出かけた。長時間立っていることも難しかったが、何とか友達との大切な思い出作りをすることができた。
兄の晃平くんは、「結婚できるのか?」「就職できるのか?」…など、将来の不安に対し、14歳の兄はある決断をすることになった。それは、同じ病気の大人の患者に会うこと。そこで、現在は木工所の事務を行う男性に会いに行く。彼は、同じ歳の女性と結婚し、2人の子供をもうけていた。運転も自分の体にあった車ですることができる。
「片意地張らず、自分のできる範囲のことをするほうが、プラスになる」と彼は、晃平くんに語った。それは、病気を一種の個性とみなし、それとともに生きることを選ぶべきなのではないか、と言っているように思う。
「将来の夢は?」と訊かれて、晃平くんは「物理学者」と答えた。その理由として、「物理は、自分の想像の中でさまざまな研究をすることができる(理論物理学のことを指していると思われる)から」と答えていた。加純ちゃんは「ファッションデザイナーになって、大人っぽい子供服を作りたい」と答えていた。
先天的な病気をもちながら、あくまでも前向きに生きていく姿が、なんとも頼もしく見えた。
ムコ多糖症は、ライソゾームという分解酵素のうち、古くなったムコ多糖を分解する酵素が生まれつき欠損しています。ライソゾームとは、細胞の細胞質に存在する分解酵素です。そこで、細胞質に溜まった老廃物を分解しています。ですが、ムコ多糖症ではここに異常があるわけです。
つまり、ムコ多糖の分解酵素の一つの遺伝子に傷が付いてしまっている遺伝性の疾患です(ライソゾーム病の一種)。1型から8型まで存在し、2型だけが伴性劣性遺伝(X連鎖性劣性遺伝)で、そのほかの型は全て常染色体性劣性遺伝です。ムコ多糖を分解するのには、多くの酵素が関与しており、そのため、欠損している酵素の種類それぞれによって病気の型が異なっています。
モルキオ症候群は、ムコ多糖症4型にあたります。患者組織尿中に、ケラト硫酸が蓄積することが特徴的です。中でも、A型(N-acetylgalactosamine 6-sulfatase欠損症)とB型(β-galactosidase欠損症)とに分けられます。A型が圧倒的に多いといわれています。
症状や治療としては、以下のようなものがあります。
症状としては、上記でも示したとおり、骨の変形が特徴的で、ムコ多糖症の中で最も強い骨の変形を示すといわれています。身長も100cm前後といわれています。角膜混濁や難聴をしめすこともあります。臨床症状としては、低身長症や、胸郭の変形(背骨のゆがみなど)、短頚(首が短い)、X脚(外反膝)などがあります。
加純ちゃんや晃平くんも、こうした骨変形や低身長に悩んでいるようです。高いところの物がとれなかったり、エスカレーターに乗ることも難儀してしまうという場面がありました。
診断としては、このようなムコ多糖症を疑うような症状が認められたら、尿のムコ多糖分析を行います。多量の異常なムコ多糖(デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸)の排泄が認められたらムコ多糖症と診断されます。
治療としては、酵素補充療法や造血幹細胞移植が試みられているようです。酵素補充療法とは、欠損している酵素を製剤として体外から補充するものです。国内では、1型治療薬ラロニダーゼ(「アウドラザイム」という商品名)が、2006年10月20日に承認されています。VI型治療薬ガルサルファーゼは、現在承認申請中です。
造血幹細胞移植は、骨髄移植および臍帯血移植の2種類が行われています。移植された正常な造血幹細胞が分泌する酵素が、細胞膜表面のM6P受容体を介してライソゾーム内に輸送されることにより、ムコ多糖の分解を促進することができると考えられています。晃平くんも運良くドナーが見つかり、9歳の時に骨髄移植ができました。結果、症状の進行が抑えられたようです。肝脾腫、呼吸機能、関節拘縮などに効果があるといわれています。ただ、骨変形や中枢神経、角膜混濁、心臓弁などには効果がないとのことです。
今後、遺伝子治療などで新たな展望が期待されますが、まだ先のことであると考えられ、目下は酵素補充療法など、新たな新薬開発などが重要であると思われます。そのためには、いわゆるドラッグ・ラグなどの国内の医療体制のあり方を見直す必要があると思われます。それまで、どうか患者の方々が上記の兄妹のように、前向きに将来のことを考えていられることを祈っております。
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加純ちゃんや晃平くんも、こうした骨変形や低身長に悩んでいるようです。高いところの物がとれなかったり、エスカレーターに乗ることも難儀してしまうという場面がありました。
診断としては、このようなムコ多糖症を疑うような症状が認められたら、尿のムコ多糖分析を行います。多量の異常なムコ多糖(デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸)の排泄が認められたらムコ多糖症と診断されます。
治療としては、酵素補充療法や造血幹細胞移植が試みられているようです。酵素補充療法とは、欠損している酵素を製剤として体外から補充するものです。国内では、1型治療薬ラロニダーゼ(「アウドラザイム」という商品名)が、2006年10月20日に承認されています。VI型治療薬ガルサルファーゼは、現在承認申請中です。
造血幹細胞移植は、骨髄移植および臍帯血移植の2種類が行われています。移植された正常な造血幹細胞が分泌する酵素が、細胞膜表面のM6P受容体を介してライソゾーム内に輸送されることにより、ムコ多糖の分解を促進することができると考えられています。晃平くんも運良くドナーが見つかり、9歳の時に骨髄移植ができました。結果、症状の進行が抑えられたようです。肝脾腫、呼吸機能、関節拘縮などに効果があるといわれています。ただ、骨変形や中枢神経、角膜混濁、心臓弁などには効果がないとのことです。
今後、遺伝子治療などで新たな展望が期待されますが、まだ先のことであると考えられ、目下は酵素補充療法など、新たな新薬開発などが重要であると思われます。そのためには、いわゆるドラッグ・ラグなどの国内の医療体制のあり方を見直す必要があると思われます。それまで、どうか患者の方々が上記の兄妹のように、前向きに将来のことを考えていられることを祈っております。
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