広島県食品衛生室は5日、自分で釣ったフグを調理して食べた広島市の60代の男性が、昨年12月31日に死亡したと発表した。男性はフグを調理する免許を持っておらず、フグ毒の中毒とみられる。
 
同室によると、男性は12月30日夜に広島県三次市でフグの内臓をカレイと一緒に煮て食べた。約3時間半後に口がしびれるなどの症状を訴えて、病院に搬送された。
(年の瀬にフグ 男性中毒死)

茨城県は16日、同県ひたちなか市の魚介類販売業「森田水産」で、毒を除いていないフグを買って調理して食べた水戸市の女性(45)が中毒を起こしたと発表した。意識不明の重体という。

食品衛生法は毒を除いていないフグの販売を禁じている。ひたちなか保健所は同日、森田水産の対応に改善が確認されるまで無期限の営業禁止処分とした。

県によると、女性は11日、森田水産でフグを購入し自宅で調理。皮と肝臓を食べたところ、心停止状態となり病院に運ばれた。フグ毒のテトロドトキシンが原因とみられる。女性はフグを調理する免許を持っていないが、以前も調理したことがあったという。
(自宅でフグ調理した女性重体)


フグの素人による調理は、非常に危険であると再三言われているのにも関わらず、毎年のようにこうした事故が起こっています。平成17年にも、40件の事故が起こっており、2名の死者が出ています。ここ10年、ほぼ同様な動向です。

フグ毒の成分はテトロドトキシンで、もともと細菌が生産したものが餌となる貝類を通して生物濃縮され、体内に蓄積されたものと考えられています。一般的に、フグの毒と言えばテトロドトキシンが有名です。

特徴としては、300℃以上に加熱しても、分解されません。そのため注意が必要であり、調理には免許が必要というわけです。また、ヒトの経口摂取による致死量は2–3mgであり、ごく微量で死に至ってしまいます。

ちなみに、どのようにして作用するのかと言えば、神経細胞や筋線維の細胞膜に存在する電位依存性ナトリウムチャネルを抑制することで、活動電位の発生と伝導を抑制します。つまり、筋肉の動きを止めてしまうわけです。結果、主な症状は麻痺として生じてきます。

症状の進行は、以下のようになっています。
まず、食後20分から3時間までに口唇や舌、指先のしびれが始まります。頭痛、腹痛などを伴い、激しい嘔吐が続くこともあります。歩行は酩酊歩行(いわゆる千鳥足)となります。

その次に、知覚麻痺、言語障害、呼吸困難などが起こり、血圧が下降します。その後、もはや全身が完全な運動麻痺の状態になります。非常に危険な状態です。

最も恐ろしいのが、呼吸筋の麻痺であり、呼吸困難が生じてきます。人工呼吸管理が必要となります。初期症状としては舌や唇がしびれ、指先のしびれなどが生じます。その後、頭痛・腹痛・嘔吐などを起こし、歩行や発声が困難になる恐れがあります。最悪の場合、呼吸困難・意識障害になり死亡に至ることもあります。

解毒剤や血清は開発されておらず、吐き出させたり呼吸困難が収まるまで、人工呼吸器をつなげることが唯一の治療法となります。

注意する点として、季節によって毒力が著しく変化し、無毒のものが有毒になったりすることや、個体差があり、同じ種類、同時期でもその毒性は異なります。ですので、「去年も大丈夫だったし」というのは通用しません。他にも、外見が似ていて間違えやすいフグもあり、判断は非常に難しいです。

捌くには、専門的な知識と技術が必要です。素人が生半可な知識で調理することはできれば避けていただきたいと思われます。

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