乳歯の「幹細胞」を再生医療に活用するため、名古屋大に設立された「乳歯幹細胞研究バンク」が15日から稼働する。廃棄物だった乳歯が医療資源になるとあって、全国から提供の問い合わせが相次ぎ、研究グループは「目標より早く検体が集まりそう」と思わぬ反響に驚いている。
(<乳歯幹細胞バンク>名古屋大で稼働へ 再生医療に反響続々)


読売新聞によると、
乳歯は同大付属病院など6病院から提供を受け、数年で1万個程度の幹細胞を収集、研究データを集めて臨床応用を目指す。同大によると、大学などの公的機関に乳歯の幹細胞バンクを設置するのは世界初。

提供された乳歯や親知らずから、幹細胞を採取して培養。超低温で保存して研究する。幹細胞を使った再生医療では、骨髄や臍帯血があるが、乳歯の幹細胞はこれらに比べて、細胞の増殖能力が高く、採取が簡単なことから、実用化に期待が集まりそうだ。

上田教授らは子犬の歯から取り出した幹細胞で親犬のあごの骨を再生できることをすでに確認しており、近親者の再生医療に使える可能性もあるという。上田教授らは犬の実験例を重ねて研究成果を発表したうえで、厚生労働省や学内の倫理委員会の審査を経て、人の臨床実験を実施したいとしている。

…とのことです。「乳歯の幹細胞はこれらに比べて、細胞の増殖能力が高く、採取が簡単」といった特徴があるため、実現化できるのではないか、と考えられたわけですね(実現性は別にして)。

乳歯の歯髄から幹細胞を分離・超低温で保存し、細胞治療や再生医療に役立つ基礎研究を行う、というのがセンターの役割(実質的に現在、臨床応用しているわけではない)。ちなみに、抜けた乳歯は牛乳につけて冷蔵保存し、48時間以内にバンクに持ち込めば細胞が死滅することなく使用できる、とのこと。

ちなみに、どんな応用方法があるかといえば、以下のようなものがあるそうです。
近い将来には、本人や親(場合によっては親類)の歯(歯槽骨)の再生医療などに応用できるのではないか、と考えられているようです。他にも、乳歯幹細胞を利用した骨粗鬆症治療、骨折など骨疾患への利用、膝関節や顎関節などの軟骨疾患、脳梗塞などの難治性の神経疾患、ケロイドや傷あとなどの皮膚疾患などの治療への応用を見込んでいるそうです。

「可能性」の話をすれば、途方もないことまで話すことが出来るかとは思われますが、今後の発展に期待してしまいますね。この方法の利点としては、乳歯は誰でも抜けるもの。となれば、骨髄移植のようにドナーの負担が大きく、十分な量が集まっていないのが現状を打開できるのではないか、ということが言えると思います。

また、幹細胞は骨髄や臍帯血にもありますが、乳歯の幹細胞の方が、細胞密度が高く、骨や軟骨以外に神経、血管などに分化する可能性を持つという研究データもあるそうです。実現性はまだ分かりませんが、是非とも「乳歯が抜けた?じゃあすぐに『幹細胞バンク』に連絡して、保存してもらおう」なんて時代がくることがくれば、と思われます。

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