今年こそやせると意気込んでいる中高年も無理は禁物。人気のダイエットマシンには危険な“落とし穴”があった。国民生活センターにも「お尻の皮が擦りむけた」とか「腰がおかしくなった」などの苦情が寄せられているという。

「乗馬マシンには要注意です」と警告するのは、「さかい保健整骨院」(東京・王子)の酒井慎太郎代表院長。ボクシングの内藤大助や、元メジャーリーガーの野茂英雄の腰痛治療でも知られる。

「乗馬マシンは自分の意思とは関係なく、下半身が動く。そのため、背骨の中にある脊柱管がずれて、脊柱管狭窄症になることがある。実際、腰を痛めたという患者さんが増えています」

脊柱管狭窄症とは文字通り、脊柱管が狭くなり、中を通る神経が圧迫される病気。ひどくなると歩行が困難になり、100メートル歩くごとに座らずにいられなくなる。立っているのがおっくうになり、ついつい何かにつかまろうとする。タレントのみのもんたもこれで手術したが、今でも時々机に両手をつく。クセになっているようだ。

「ダイエットブームでいろんな運動が持てはやされていますが、腰に響くものが多い。たとえば、ビリーズブートキャンプだと、空手のように蹴り上げる動きが危険。股関節の上にある中殿筋を痛める可能性がある。この筋肉は使いすぎてはダメなんです。乗馬マシンにしろビリーにしろ、運動に慣れていない人が、いきなりやるのは危ない。ゆっくりとした運動から始めるべきです」
(人気ダイエットマシンの「落とし穴」)


いわゆる腰痛症とは、椎間板や椎間関節、筋・筋膜、靭帯群などの小さな損傷により生じると考えられています。ですが、現在の画像診断レベルでもそれを確実に証明することはできません。20−55歳の腰痛のうち、85%がこれに該当すると考えられています。

経過から、急性(発症〜4週)、亜急性(4〜12週)、慢性(12週以上)に分けることができます。腰痛症の約90%は、発症後6週以内に軽快します。慢性腰痛の範疇に含まれるのは10%以内とされます。一方、少なくとも6〜8週以上の間隔をおいて腰痛を繰り返す場合は再発性腰痛といわれます。

いわゆる「ぎっくり腰」といった急性腰痛は、90%が自然軽快する良性な経過をたどるといわれています。痛みの範囲内でできるだけ正常な生活を送っていることで、自然と治っていきます。コルセットを使用してもいいですが、長期使用は体幹筋力低下を引き起こしてしまうこともあるので、注意が必要です。必要以上に「治療」をする必要はなく、ロキソニンなどの痛み止め以外は、特に治療は要しません。

ちなみに、腰痛の原因ともなる脊柱管狭窄症は、以下のようなものです。
腰部脊柱管狭窄症とは、神経組織を入れる腰部脊柱管あるいは椎間孔部がさまざまな原因によって狭窄を来し、馬尾(脊髄の下端から伸びている神経の束は、馬の尻尾に似ているので、こう呼ばれます)や脊髄神経根が圧迫されることによって発症する症候群です。

症状としては、間欠性跛行が最も頻度が高いといわれています。これは、少し歩くと脚が痛くて歩けなくなり、少し休むと歩けるようになる、という現象です。ですが、自転車なら長時間漕いでいられる、というのがこの疾患の特徴でもあります。両下肢に症状が観察され,膀胱直腸症状(失禁など)が観察される場合は、馬尾の障害が考えられます。

診断としては、画像検査では単純X線写真、機能撮影以外にMRI,CTが診断に有用であるといわれています。確定診断としては、神経学的所見(どこの筋力が低下しているとか、知覚障害が起こっているとか)と、画像所見とが一致するか否かが重要であるといわれています。

治療としては、薬物療法では消炎鎮痛剤、ビタミンB12などの薬剤と硬膜外神経ブロック、神経根ブロック療法を行います。手術的治療としては、一般に椎弓切除術が実施されます。不安定性を有する場合には脊椎固定を併用します。

腰・下肢の疼痛、しびれ感や間欠跛行などの症状がある場合、これは保存的治療の効果がないため、手術が行われます。他にも、神経学的異常所見が進行性に増悪する場合や、日常生活に支障をきたすような痛みも、手術の適応となります。

いくら「ダイエットのため」といっても、腰を悪くしてしまったら元も子もありません。できるだけ負担の少ないウォーキングなどのダイエットが薦められるのではないでしょうか。

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