日本医師会(日医)は8日、唐沢祥人会長(65)が先週末、小脳出血で倒れ、東京都内の病院で緊急手術を受けていたことを明らかにした。現在も入院中だが、命に別条はなく、容体は安定しているという。

唐沢氏は今年4月の次期会長選にも再選を目指し出馬する意向を示しているが、今後の病状次第では会長選に影響が出る可能性もある。

日医によると、唐沢氏は今月4日、東京都医師会の新年会の席で「気分が悪い」などと吐き気やめまいを訴え、都内の病院に搬送された。診断の結果、小脳出血が確認されたため、ただちに手術を受けた。手術は成功し、意識もはっきりしており、現在は入院治療を続けている。後遺症の有無は今のところ不明で、退院の見通しは立っていない。日医は「出血範囲は狭く、言語障害など重大な後遺症が出る可能性は低い」としている。唐沢氏の入院を受けて、日医は7日付で竹嶋康弘副会長(69)を会長代行にあてた。

唐沢氏は東京都出身で、昭和43年、千葉大医学部卒。墨田区医師会長、東京都医師会長などを経て、平成18年の日医会長選で「自民党との対話路線」を掲げ、当時の現職会長だった元大阪府医師会長の植松治雄氏(76)らを破り初当選。20年度の診療報酬改定では、政府・与党に積極的に働きかけ、医師の技術料にあたる本体部分の8年ぶりの引き上げを実現した。
(日医会長が緊急手術 小脳出血で再選に影響も)


脳出血とは、脳内の血管が何らかの原因で破れ、大脳、小脳および脳幹の脳実質内に出血した状態をいいます。そのために意識障害、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れます。血腫が大きくなると脳浮腫によって頭蓋内圧が高くなって脳ヘルニアを起こし、重い場合は脳幹部が圧迫されて死に至ります。

高血圧が原因で起こる脳出血が最も多く、全体の70%を占めます。
高血圧性脳出血を部門別にみてみると、最も頻度が高いのは被殻出血(40%)と視床出血(35%)で、この2つが約4分の3を占めます。次いで皮質下出血(10%)、橋出血(5%)、小脳出血(5%)、その他(5%)と続きます。

小脳出血は、小脳半球、特に歯状核(小脳髄質内の神経細胞集団である、4対のヒト小脳核の1つで、最外側にある)部付近原発の出血が多いといわれています。症状としては、初期にめまい、嘔気、嘔吐、頭痛を訴えます。頸部を前屈、顎を患側に向け、頭部を動かすと激しく嘔吐します。神経症状は体幹・上下肢失調、側方注視性眼振、末梢性顔面神経麻痺、構音障害(ろれつが回らない)などを示します。

意識障害がないケースでは、血腫も限局性で予後も良好であるといわれています。唐沢先生のケースでも、新年会の席で「気分が悪い」などと吐き気やめまいを訴え、都内の病院に搬送された、とのことであり、意識もはっきりしていたようです。ただ、急激に出血が増大する劇症例では、血腫による脳幹の直接損傷や圧迫、あるいは急性水頭症の合併により、脳幹症状の増悪をみることもあります。こちらは非常に危険で、予後も悪いと言われています。ただ、発症すぐの外科治療により、劇的な症状改善の得られるケースもあるとのことです。

診断や治療は、以下のようなものがあります。
診断としては、CTによる血腫の確認がポイントであり、画像診断なしで確定することは難しいと思われます。突発性頭痛、めまいなどの症状の確認や、神経症状として片麻痺、言語障害、瞳孔変化などの確認も重要です。高血圧の既往が原因となることもあり、こちらも確認が必要です。クモ膜下出血など、血管病変の確定診断には血管撮影を行うこともあります。

治療としては、血圧は150/90mmHgを目安にして、これを超えないようコントロールし、気道確保や導尿、体位交換などによる呼吸管理、感染症予防などを行います。脳浮腫対策としては、浸透圧利尿薬(グリセオール,マンニトール)を投与します。

外科的手術の適応は、神経症状,血腫量を基準とするガイドラインが示されています。被殻、小脳、脳葉出血では良い適応であると言われています。水頭症による頭蓋内圧亢進例では、脳室持続ドレナージが行われることもあります。こうした治療の後は、機能改善や保持のためには、早期からのリハビリテーションが重要です。

手術は成功し、命には別状がなかったということで何よりです。特に冬は温度差が激しいという状況になりやすく、血圧が変動しやすいといわれています。心筋梗塞や脳梗塞など、くれぐれもお風呂場などでの気温差にはお気をつけ下さい。

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