腹痛や片頭痛、耳鳴り、腕のしびれなど、症状はあるのに原因がわからず、治療をしても症状が改善されない−これらの体の不調の原因は「鬱病」の身体症状の可能性があるという。精神科クリニックで25年にわたり治療にあたってきた大塚クリニック(千葉市稲毛区)の大塚明彦院長は、「鬱病は適切な治療で必ず治る」とし、内科医など一般科の医師も正しく診断・治療することの必要性を訴えている。

鬱病は、気分が落ち込むなどの症状や、だれでもかかる可能性があることから「心の風邪」ともよばれる。しかし、大塚院長は「鬱病は“心”ではなく、脳の神経伝達物質の不足からくる病気」と言いきる。実際、近年急速に発展している脳科学で、鬱病と脳の神経伝達物質の関係が少しずつ証明されてきている。

脳の神経伝達物質をコントロールする薬は数種類あり、鬱病と診断されれば、治療することができる。問題は、鬱病と診断されず、適切な治療がされないまま放置されている人が少なくないことだ。

鬱病は、睡眠障害をはじめとして、疲れやすい、食欲不振、頭痛、便秘、肩こり、めまい、吐き気、腹痛、下痢、しびれ、呼吸困難など多彩な症状をともなう。しかし、たとえば「便秘」や「吐き気」で鬱病を疑う人はまずいない。そのため、鬱病患者の多くが内科や耳鼻科などを受診、検査をしても鬱病と診断できないことが多いという。
(痛みや体の不調 原因は鬱病かも?)


最近では上記のように、身体症状を前景とする軽症うつ病(仮面うつ病)が増加しているそうです。うつ病の8割が、一般診療科を受診するという報告もあるそうです。身体に多彩な症状がみられ、症状の部位によって、多くの診療機関を受診(いわゆるドクター・ショッピング)するそうです。

よくある症状は、「睡眠障害」「全身倦怠・疲労」「全身のいろいろな部位の疼痛」の3つです。うつ病と診断された患者が初診時にどのような身体症状を訴えていたかを調べた結果(新臨床内科学第8版)、消化器症状が63%と最も多く、次に循環器症状20%、呼吸器症状14%、泌尿・生殖器症状6%、運動感覚器症状4%だったそうです。

中でも、うつと消化器症状はきわめて関連が深いそうです。うつ病に伴う消化器症状として食欲不振78%、体重減少56%、便通異常44%、ガス症状33%、悪心・嘔吐29%、咽喉頭部・食道の異常感26%、腹痛23%、胃部不快感20%、口内異常感14%、胸やけ・げっぷ10%などが認められたそうです。

また、うつ病をきたす原因となるものは、以下のようなものがあります。
治療薬の中にもうつ状態を起こすものもあり、この点も検証する必要があります。有名なところでは、インターフェロンや血圧降下薬、ホルモン製剤、抗結核薬、抗パーキンソン薬などがあります。

さらに、基礎疾患があってうつ病になっているケースもあります。内分泌疾患が原因となることもあり、クッシング症候群、シーハン症候群、橋本病などがあります。膠原病の中では、全身性エリテマトーデス、代謝異常(ペラグラ)などが原因となることもあります。脳の器質的な問題として、脳血管障害やパーキンソン病、アルツハイマー病などが原因となることもあります。

うつ病に対しては、抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多いです。これは、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っているため、こうした副作用が現れると考えられます。

近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされています。ですが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされています。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多いです。

このほかにも、認知行動療法やいわゆるカウンセリング、電気けいれん療法(頭皮の上から電流を通電し、人工的にけいれんを起こす事で治療を行います。薬物療法が無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などに行います。保険適応があります)などの治療法があります。

「何だか胃や腸の調子が悪い」といったことが長く続くが原因がはっきりしない場合、うつ病を疑うことが必要かも知れません。悩んでいる方は一度、精神科へいってみるのも良いと思われます。

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