フィギュアスケートの世界女王、安藤美姫が11日、2連覇がかかる3月の世界選手権後に、古傷の右肩を手術する考えを明らかにした。
 
安藤は一昨年12月の全日本選手権で右肩を脱臼し、昨年10月の日米対抗でも右肩を強打。テーピングをして再発防止に努めているが、睡眠中に肩が外れるなど状態は思わしくない。手術は4月ごろを予定しており、金属製のボルト3、4本などを埋め込むという。
 
この日、名古屋市で行われたエキシビション大会に出場した安藤は「早く手術したい。2010年の冬季五輪までに(肩に負担がかかる)ビールマンなどをできるようにしたいから」と話した。
 
手術後約3カ月で練習に復帰でき、10月から始まる来季のグランプリ(GP)シリーズには間に合う見込みという。
(安藤美姫が右肩手術へ 睡眠中に外れる)


反復性肩関節脱臼とは、外傷によって脱臼が起こった際に損傷した骨・軟部組織が、完全に治癒せず、その後に軽い外力でも脱臼を繰り返すようになってしまったものを指します。安藤さんの場合も、2006年日本選手権で演技中に脱臼して以来、痛みを伴ってきた右肩は、昨年10月の日米対抗で悪化し、今季はテーピングで固めて演技を続けてきたそうです。朝起きた際、肩が外れていたということですから、明らかに反復性肩関節脱臼であると思われます。

こうした反復性脱臼は、主に肩関節にみられ、初めて脱臼した(前方脱臼)後に、同じ脱臼を繰り返す反復性肩関節前方脱臼が代表的です。。関節の安定化機構である部分が損傷して(バンカート損傷といいます。肩関節の前方構成体である肩甲骨関節窩の骨折や、前方関節唇または関節上腕靭帯の損傷を指します)、破綻してしまっているため、正常な肩では脱臼を起こさない程度の外力でも脱臼を起こしてしまうわけです。

具体例としては、着替えや安藤さんのように寝返りなどの些細な日常生活動作でも、脱臼を起こすようになってしまいます。ちなみに、初めて脱臼を起こした年齢が若いほど、反復性脱臼に移行しやすいといわれます。そのため、好発年齢は、10−20歳代前半が最も多いとのことです。

診断や治療は、以下のようなことで行います。
まず問診などで、明らかな外傷による肩関節脱臼・亜脱臼があったことを確認します。その後、肩関節を外転外旋した際に(肩を外側に向けたり、後ろに回してみる)時の脱臼不安感や、肩の単純レントゲン写真や関節造影後、CTやMRIでBankart損傷(前方関節唇の剥離)の有無を確認します。こうしたことから、診断を行います。


治療としては、とりあえずは脱臼した肩を関節内局所麻酔薬注射後、Stimson法や挙上法などで整復します。反復性になってしまったり、脱臼不安感で生活上の支障や、スポーツ活動に支障をきたす場合では、手術を行います。

手術としては、関節鏡を用いるか、もしくは観血的(関節を開いて行う)にBankart法という方式がとられます。Bankart法とは、関節唇および関節上腕靭帯の修復をおこないます。

それぞれの違いとして、関節鏡視下手術は手術侵襲が少なく筋力回復が早い点が優れているといわれています。ですが、再脱臼率は5〜20%以上と高く、下方不安定性を伴う症例、大きな骨性Bankart損傷を伴う症例やコンタクトスポーツ症例には限界があるといわれています。

一方、観血的Bankart法は長期成績において再脱臼率は1〜3%程度であり、確実な安定性が得られるとともに早期運動療法を行うことで良好な可動域が獲得可能であるといわれています。ですが、関節鏡下手術と比べて、傷はどうしても大きくなってしまいます。

外傷性肩関節前方不安定症に対しては、手術法以外に根治的な方法はないと考えられます。やはりここは、遠回りになっても手術を受け、再び復帰する方が将来的にもいいと考えられます。

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