西村議員によると、林太郎さんは昨年暮れごろから精神状態が不安定になり、8日に医師の診察を受けたところ、「強いうつ状態」「入院が望ましい」などと伝えられたという。その翌朝の悲劇だった。

「当時、西村議員は外出しており、部屋には母親と妹、林太郎さんの3人がいたそうです。母親が歯を磨くために30秒ほど目を離した隙に、林太郎さんはベランダに出て、1.3メートルの手すりを乗り越えたのです」(捜査事情通)

林太郎さんは学習院大法学部を卒業後、父親と同じ弁護士を目指し、地元の大阪で司法試験の勉強をしていた。

「2〜3年前までは、司法試験と一緒にプロボクサーのライセンスも取るなんて張り切っていた。ところが、昨年2月、弁護士法違反の罪に問われた父親の有罪が確定。一族の期待は一気に林太郎さんに集まりましたが、2度目の司法試験にも失敗した。かなり落ち込んだ様子でした」(地元関係者)

結局、弁護士の夢はあきらめて東京に戻り、議員宿舎で“仮住まい”しながら、今月4日から、都内の出版社で働き始めたばかりだった。
(西村真悟議員長男“飛び降り自殺の真相”)


うつ病の最近の疫学研究によると、生涯有病率20%であり、障害の内に5人に1人はうつ病になると考えられています。日本で2002年に行われた1600人の一般人口に対する面接調査によれば、時点有病率2%、生涯有病率6.5%とされています。決して人ごとではないと思われます。

うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患です。あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような重症例まで存在します。うつ病を反復する症例では、20年間の経過観察で自殺率が10%程度とされています。98年に自殺者は3万人を越え、未遂者に至っては既遂者の10倍はいると考えられています。

最近の傾向としては、身体症状を前景とする軽症うつ病(仮面うつ病)が増加しているそうです。うつ病の8割が、一般診療科を受診するという報告もあるそうです。身体に多彩な症状がみられ、症状の部位によって、多くの診療機関を受診(いわゆるドクター・ショッピング)するそうです。

よくある症状は、「睡眠障害」「全身倦怠・疲労」「全身のいろいろな部位の疼痛」の3つです。うつ病と診断された患者が初診時にどのような身体症状を訴えていたかを調べた結果(新臨床内科学第8版)、消化器症状が63%と最も多く、次に循環器症状20%、呼吸器症状14%、泌尿・生殖器症状6%、運動感覚器症状4%だったそうです。

中でも、うつと消化器症状はきわめて関連が深いそうです。うつ病に伴う消化器症状として食欲不振78%、体重減少56%、便通異常44%、ガス症状33%、悪心・嘔吐29%、咽喉頭部・食道の異常感26%、腹痛23%、胃部不快感20%、口内異常感14%、胸やけ・げっぷ10%などが認められたそうです。

自殺者の半数以上が、決行する1ヶ月以内に何らかの身体症状を訴えて精神科以外の医療機関を受診している、という報告があるそうです。故に、精神科だけの問題ではないことがここからもわかります。患者の会話や表情からうつ病と思えない場合であっても、うつ病の症状、特に希死念慮に関しては、問診で確かめることが大切であると思われます。

治療方針の一環として、希死念慮の程度を確認し、必要なら行動制限・行動監視を行うというものがあります。入院とまではいかなくても、危険物を身辺に置かない、家族に付き添ってもらう、といった現実的な工夫を行います。必ずよくなることを繰り返し保証し、早まったことは絶対しないとの約束を取りつけます。

その上で、抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

恐らく、ご家族の方が見守ってらしたのでしょうが、「母親が歯を磨くために30秒ほど目を離した隙に」こうしたことになってしまったと思われます。やはり入院した上で治療を行うことが望ましかったのではないか、と思われます。

ただ、こうしたことに関連して、診療方針と一般的な感覚は、以下のように解離しているという結果がでています。
「『自殺する』という人は、本当は自殺しない」という、自殺に対する偏見を5割以上の人が抱いていることが、2007年08月に内閣府が発表した「こころの健康(自殺対策)に関する世論調査」で分かっています。

調査によると、「自殺者は年間3万人を超え、交通事故死者の4〜5倍」という実態は、66.4%が知っているなど、自殺への関心は高い。一方で、世界保健機関(WHO)が指摘する自殺について広くいわれる偏見の典型例を示したところ、「自殺は覚悟の上の行為」58.3%、「自殺を口にする人は本当は自殺はしない」50.0%「自殺は何の前触れもなく突然起きる」46.0%などといずれも半数前後が誤って理解していたそうです。

また、身近な人の鬱病の症状に気づいた場合、89.2%が受診を勧めると答える一方、自分が鬱病の症状に気づいた場合、受診するとしたのは56.5%にとどまっています。

今後、謝った認識を変えるように知識を広め、二度とこうした悲劇が起こらないようにすることが望まれます。

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