人類が進化によって手にしたもの。火、道具、言語、そして、痔。4本足のほ乳類にはなく、2本足で立つ人間にだけみられる病気が痔なのです。人はどのようなメカニズムで痔になるのでしょうか? 岩垂純一診療所の岩垂先生にお話を聞いてみました。

「痔とは肛門周囲に生じた病気の総称で、痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)が肛門の3大疾患と呼ばれています。ただ、一般的に“痔”といえばイボ痔を指すことが多く、男女ともに患者の半数以上がこの疾患。肛門を閉じるのに役立つクッション部分がうっ血して大きくなり、出血したり肛門の外に飛び出してしまうわけです。2足歩行は血流が悪くなりやすく肛門に負担をかける姿勢なので、これが人間しか痔にならない理由のひとつです」

なるほど。どうしたら予防できますか?

「規則正しい生活習慣を身につけること。痔の大敵は便秘や下痢なんです。だから朝食は欠かさず、水分や食物繊維をしっかり取るのがポイント。逆に過度のアルコール摂取や、香辛料の強い料理はよくないです。また、適度な運動や毎日の入浴も欠かせません。排便に関しては、便意を感じたときに済ませる、排便時間は3分以内、排便後はシャワーなどで肛門を清潔に洗い十分に乾燥させる、の3点を心がけてください」

できるか不安ですね…。もし痔核が発症した場合はどんな施術をするのですか?

「患部の痔核に血液を送っている血管を縛って切り取り、そこを縫います。そしてその傷口が化膿しないよう、そこから肛門の外にかけて溝のような傷をつくり、それを便の通り道にしています。ただ、手術が必要な人は患者の10〜20%。ほとんどの人は生活指導と薬による治療です。だから、まずは恥ずかしがらずに相談してください。最近は男性より女性の方が堂々と相談にいらっしゃいますけど(笑)」
(明日は我が身に起こるかも…“痔”のメカニズムと対処法は?)


痔核(イボ痔)とは、肛門管の静脈叢が静脈瘤状に膨らんだ状態をいいます。肛門病変の約60%を占め、最も頻度の高い疾患であるといわれています。男性にやや多いですが、女性では妊娠に続発するものが多いといわれています。

原因としては、肛門管に分布する上・下直腸静脈叢のうっ血によって起こるといわれています。どうしてこうしたことが起こるのかと言えば、排便時の怒責、便秘や妊娠などの腹圧、門脈亢進をきたす肝硬変など背景にあると言われています。

上記にもありますが、こうした要因を避けるのは生活習慣の改善が必要です。便秘や下痢を防ぎ、適度な水分や食物繊維の摂取を心がけます。便意に忠実な排便を心がけ、過度のいきみや長時間のトイレを避けることも重要です。できれば、排便後は強く拭き取るよりは、ウォシュレットなどで洗浄するようにしたほうがいいでしょう。また、出血や疼痛のあるときは、アルコールや刺激物は避ける必要があります。

裂肛(切れ痔)は、肛門部に生ずる急性の裂創から慢性の潰瘍までを総称するものです。痔核、痔瘻とならんで頻度の高い痔疾患です。急性のものはいきんで硬い便を排泄した時に、疼痛と出血を伴って生じます。数日の安静で治るものが多いですが、排便状態の不良や感染、内括約筋の痙攣痛を伴うものは慢性化するといわれています。

裂肛も、上記のような生活習慣の改善が重要です。便秘が根底にあるので、緩下剤を投与して便通を整えます。また、清潔に保つのも重要です。局所にはステロイド含有・非含有の軟膏を適宜使用して、痛みが強い場合は、鎮痛用坐薬を使用します。

聞き慣れない人もいるかもしれませんが、最後の痔瘻(あな痔)とは、以下のようなものを指します。
痔瘻(あな痔)は、肛門管内と肛門の周囲にある皮膚とが交通してしまった(瘻管といいます)状態です。原因の多くは、肛門小窩から細菌が侵入して、肛門導管、肛門腺に感染が生じて起こります。

つまり、まずは肛門腺に感染巣(原発巣)が作られます。ここを基地として、その膿瘍は肛門直腸周囲の粘膜下、筋間、皮下など様々な方向へ進展していきます。結果、膿瘍が自潰または切開により皮膚や粘膜面に開口して穴が開くわけです。

症状としては、膿瘍形成が認められる時期には炎症が起こり、腫脹・疼痛・発赤・白血球増多がみられます。排膿されると疼痛は軽減し、炎症が鎮静化すると硬くなります。

治療としては、場所が場所なだけに、常に汚染され続けるため、原則として手術の対象となります。手術は原発巣の切除などが基本術式です。最近では、括約機能を温存する術式が採用され、機能もしっかりと残ります。術後肛門変形も少なく、再発率も低いそうです。

薬局で買える薬のCMでもおなじみであることからも、結構、苦しんでいる人は多いのではないでしょうか。恥ずかしいかとは思いますが、痔の背後にクローン病などの疾患が隠れていることもあります。一度しっかりと病院でみてもらうほうが良いかもしれませんね。

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