治る見込みのないがんの子供に向き合う親や医療現場に役立ててもらおうと、患者家族でつくる「がんの子供を守る会」(東京)は14日までに、医師らと連携し小児がんの終末期ケア指針を作成することを決めた。国内初の取り組みという。11月に千葉県で開かれる日本小児がん学会で指針案を公表し、議論を重ねた上で来年中の完成を目指す。
守る会理事の近藤博子さんは「亡くなっていく子供や家族への接し方に迷う医療従事者もおり、親にとっても治療方針など悩みは尽きない。指針では在宅の療養や病院内の環境整備などさまざまなケースを紹介し、多様な選択肢を示したい」としている。
指針作成には、小児がんの終末期ケアに詳しい聖路加国際病院の細谷亮太・小児総合医療センター長や小沢美和医師も参加。親や医師、看護師、ソーシャルワーカーらによる委員会を近く発足させ、作業を本格化させる。
小沢医師によると、がんで亡くなる子供の大半は病院で最期を迎えているのが現状。在宅医療に力を入れている聖路加国際病院でも、過去20年間に小児がんで亡くなった約110人のうち在宅でみとったケースは1割程度。背景には地域でのケア体制の不足などがあるとされ、亡くなる小児がん患者の8割が自宅でみとられる英国などと大きな開きがある。
「どの子も家に帰りたいと望むが、システム作りには大変な時間がかかる。家に帰ることだけを理想と考えるのではなく、病院にいても家族と一緒に過ごせたり好きな遊びができたりと、家にいるのと同じ日常生活をどうつくってあげるかが大切」と小沢医師は言う。
指針ではこうした療養環境整備のほか、積極的治療から緩和ケアへの切り替えや、子供に病気や死のことを伝える方法、きょうだい支援、死別後の親へのケアなどを取り上げる。
がん対策基本法が施行され全国の自治体で取り組みが進む中、守る会は「指針作りを通じて『がんの子供のことも忘れないで』と訴えていきたい」としている。
(小児がん終末期、初の指針作成 患者家族の会)
15歳以下におこる「がん」を小児がんと呼び、成人以降の癌とはやはり性質が異なります。病理学的には、癌(上皮から発生)よりも肉腫(筋肉などから発生)が多いと言われています。また、頻度が高いものとしては、白血病、脳腫瘍、悪性リンパ腫、神経芽腫、ウイルムス腫瘍などがあります。
たとえば、急性リンパ性白血病は2歳から5歳の子どもに、骨肉腫は10代の子供に多いといわれています。白血病と悪性リンパ腫を合わせると、小児がん全体の約4割を占めます。
小児がんでは、深部から発生するものが多く、早期発見が難しい傾向にあるといえます。そのため、がんの発生頻度からすれば、小児がんは少ないですが、子どもの死亡原因を考えると、小児がんは事故に次いで第2位となっており、十分に脅威となりうると考えられます。
小児がんの治療としては、化学療法が有効なことが特徴的です。特に白血病では成人と違い、抗がん剤がよく効くことや、近年の治療法の発達などで、根治できるものも多くなっているといえます。たとえば急性リンパ性白血病は、1960年代から70年代初期に20-40%であった治療開始5年後の生存率は、今や75-80%となっています。
ただ、小児がんの治療が進歩しているとは言っても、死を迎えざるを得ない子供もいます。治療を進めていく上で、ご両親やお子さんも次第に病気について理解を深めていっていることは確かでしょうが、「治らない」という現実は、やはり受け入れることは難しいと思われます。そこで、こうした状況において、どのような環境を整え、家族に向かい合うべきなのか、浜松医科大学助教授の本郷輝明先生は以下のように書かれています。
守る会理事の近藤博子さんは「亡くなっていく子供や家族への接し方に迷う医療従事者もおり、親にとっても治療方針など悩みは尽きない。指針では在宅の療養や病院内の環境整備などさまざまなケースを紹介し、多様な選択肢を示したい」としている。
指針作成には、小児がんの終末期ケアに詳しい聖路加国際病院の細谷亮太・小児総合医療センター長や小沢美和医師も参加。親や医師、看護師、ソーシャルワーカーらによる委員会を近く発足させ、作業を本格化させる。
小沢医師によると、がんで亡くなる子供の大半は病院で最期を迎えているのが現状。在宅医療に力を入れている聖路加国際病院でも、過去20年間に小児がんで亡くなった約110人のうち在宅でみとったケースは1割程度。背景には地域でのケア体制の不足などがあるとされ、亡くなる小児がん患者の8割が自宅でみとられる英国などと大きな開きがある。
「どの子も家に帰りたいと望むが、システム作りには大変な時間がかかる。家に帰ることだけを理想と考えるのではなく、病院にいても家族と一緒に過ごせたり好きな遊びができたりと、家にいるのと同じ日常生活をどうつくってあげるかが大切」と小沢医師は言う。
指針ではこうした療養環境整備のほか、積極的治療から緩和ケアへの切り替えや、子供に病気や死のことを伝える方法、きょうだい支援、死別後の親へのケアなどを取り上げる。
がん対策基本法が施行され全国の自治体で取り組みが進む中、守る会は「指針作りを通じて『がんの子供のことも忘れないで』と訴えていきたい」としている。
(小児がん終末期、初の指針作成 患者家族の会)
15歳以下におこる「がん」を小児がんと呼び、成人以降の癌とはやはり性質が異なります。病理学的には、癌(上皮から発生)よりも肉腫(筋肉などから発生)が多いと言われています。また、頻度が高いものとしては、白血病、脳腫瘍、悪性リンパ腫、神経芽腫、ウイルムス腫瘍などがあります。
たとえば、急性リンパ性白血病は2歳から5歳の子どもに、骨肉腫は10代の子供に多いといわれています。白血病と悪性リンパ腫を合わせると、小児がん全体の約4割を占めます。
小児がんでは、深部から発生するものが多く、早期発見が難しい傾向にあるといえます。そのため、がんの発生頻度からすれば、小児がんは少ないですが、子どもの死亡原因を考えると、小児がんは事故に次いで第2位となっており、十分に脅威となりうると考えられます。
小児がんの治療としては、化学療法が有効なことが特徴的です。特に白血病では成人と違い、抗がん剤がよく効くことや、近年の治療法の発達などで、根治できるものも多くなっているといえます。たとえば急性リンパ性白血病は、1960年代から70年代初期に20-40%であった治療開始5年後の生存率は、今や75-80%となっています。
ただ、小児がんの治療が進歩しているとは言っても、死を迎えざるを得ない子供もいます。治療を進めていく上で、ご両親やお子さんも次第に病気について理解を深めていっていることは確かでしょうが、「治らない」という現実は、やはり受け入れることは難しいと思われます。そこで、こうした状況において、どのような環境を整え、家族に向かい合うべきなのか、浜松医科大学助教授の本郷輝明先生は以下のように書かれています。
小児のターミナルケアにおいて、特に大切にしなければならないことは、以下の8点であるそうです。
やはり、「家に帰りたい」という思いを持つお子さんが多いのでしょうね。それまで家族と離れ、病院で過ごさざるを得なかった寂しさもあるのでしょう。
ですが、状態が悪く、帰宅が難しい(易感染性を示している患者さんなどでは特に)場合も考えられます。そうした場合も、ご家族やスタッフができるだけ寄り添い、声を掛け、独りにしない工夫などが必要になるようです。もちろん、「長くはない…」と宣告されてしまい、悲しみのあまり、一緒に居るのが辛い場合もあるでしょうが、そんなときこそ、支えになってあげることが重要なようです。
上記ニュースのようなガイドライン作成に伴い、在宅ケアの環境作りなど、多くのハードルはあると思われますが、ぜひとも家族全体をケアできるような体制作りがなされることが望まれます。
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生まれてすぐにチアノーゼに−完全大血管転位症
1)根治的治療中と緩和ケアの時期とでは、患児・家族とのコミュニケーションやスタッフ間のコミュニケーションの在り方が質的に異なることを再確認し、「してあげること」よりは,患児と「一緒にいること」の大切さを強調し、患児がいちばん安らげる場所と時間を確保し、ともにいることの価値を見いだす。
2)最も大切にすることは患児の気持ちを聞くことであり、表出された気持ちはすぐカルテに記載して両親、スタッフで共有する。
3)痛みにとどまらず熱、便秘、全身疲労感、吐き気など患児の苦痛の軽減を迅速にはかる。
4)1日に何度でも手を握り横に座り、いつでも声をかけていいよという雰囲気を作る。
5)家に帰りたい要求があるときは実現させる。そのために必要なら地域の訪問看護ステーションに協力を依頼する。ただし在宅ターミナルケアの場合、今まで治療していたスタッフもある程度の関与は必要にならざるをえない。
6)状態を兄弟姉妹にも十分説明し、一緒にいることの大切さを理解してもらう。
7)旅立ちのときも心のこもったアレンジを行う。例えば、両親に抱くように促すとか、風呂が好きな子どもには入れてあげるとか、好きな音楽を流すとかである。
8)患児死亡後の家族支援(グリーフケア)を行う。定期的な追悼の会をもつようにする。あるいは亡くなった子を偲ぶ会を企画する。
やはり、「家に帰りたい」という思いを持つお子さんが多いのでしょうね。それまで家族と離れ、病院で過ごさざるを得なかった寂しさもあるのでしょう。
ですが、状態が悪く、帰宅が難しい(易感染性を示している患者さんなどでは特に)場合も考えられます。そうした場合も、ご家族やスタッフができるだけ寄り添い、声を掛け、独りにしない工夫などが必要になるようです。もちろん、「長くはない…」と宣告されてしまい、悲しみのあまり、一緒に居るのが辛い場合もあるでしょうが、そんなときこそ、支えになってあげることが重要なようです。
上記ニュースのようなガイドライン作成に伴い、在宅ケアの環境作りなど、多くのハードルはあると思われますが、ぜひとも家族全体をケアできるような体制作りがなされることが望まれます。
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