米ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞に輝いたばかりの映画俳優ジョニー・デップさんが14日、ロンドンの小児科専門病院であるグレート・オーモンド・ストリート病院をひそかに訪れ、娘を救ってもらったお礼として、100万ポンド(約2億1000万円)を寄付した。
 
15日付の英紙デーリー・メールによると、昨年3月、「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」の撮影のため、ロンドンに家族で滞在中、娘のリリーローズちゃん(8つ)が病原性大腸菌O157感染をきっかけに腎不全を併発し、この病院に9日間入院。一時は命にかかわるほどだった。
 
デップさんは先週、病院の医師らを「スウィーニー・トッド」のプレミアパーティーに招待。昨年11月には、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の彼の配役であるジャック・スパロウ船長の衣装で、患者の子供たちにおとぎ話を聞かせたという。 
(J・デップさん、2億円を寄付=英の病院に「娘救ったお礼」)


溶血性尿毒症症候群(HUS)とは、乳幼児期〜学童期の急性腎不全の重要原因疾患の1つといわれています。O-157をはじめとする腸管出血性大腸菌によるものは、溶血性尿毒症症候群の原因の90%以上を占め、腸管出血性大腸菌(VTEC)感染者の約1〜10%の症例に発症するといわれています。腎臓を主座とする糸球体内皮細胞傷害と、引き続く血栓性微小血管炎がその本態であると考えられています。

HUSは急性腎不全、血小板減少、細血管障害性溶血性貧血を3主徴とする症候群であり、型により症状、治療は異なります(感染性、薬物性、症候性、遺伝性に分かれる)。下痢あるいは発熱出現後4〜10日に発症します(前駆症状として、上気道炎,嘔吐,下痢,血便などがある)。

他にも、血小板減少による症状として点状出血斑や皮下出血斑、溶血性貧血による症状として蒼白、心悸亢進、全身倦怠感、黄疸などが生じます。急性腎不全による症状としては、ヘモグロビン尿(必発です)、乏尿・無尿、浮腫、高血圧、心不全、肺水腫、代謝性アシドーシスなどが起こります。

重篤な場合では、急性脳症による症状が起こり、痙攣や昏睡などが起こります。痙攣は多くは重積状態になり、痙攣を止め(ジアゼパムなどを用います)、呼吸管理などが必要となることがあります。

脳症の合併症患児では、約5%が死亡し、5%に何らかの後遺症を残すといわれています。ただ、生存率は90%以上であり、腎障害を残すのは10〜20%であると言われ、それほど高い致死率があるというわけではありません。ただ、2週間以上の透析を要する乏尿や無尿、神経症状を認める場合は予後があまりよくないと言われています。

治療としては、以下のようなものが必要となります。
腸管出血性大腸菌によるHUSに対する特異的療法は確立されていないため、適切な支持療法が最も大切であるといわれています。具体的には、腎不全に対する治療や痙攣、脳症などに対する治療が主立ったものになります。

たとえば、腎不全に対する治療は、一般の急性腎不全に対する治療と同様ですが、下痢や嘔吐が続くため、脱水かどうかの評価が難しいことが異なります。体液管理、電解質管理を厳重に行う必要があります。急速に腎糸球体に障害が進展し、乏尿・無尿に至ることもあり、その場合には透析を開始します。他にも、高血圧を呈することがあり、そうした場合には利尿薬やカルシウム拮抗薬などで降圧します。

けいれんに対しては、第1選択としてジアゼパムや第2選択としてフェニトインなどの抗痙攣薬などを用います。脳浮腫が起こった場合などは、グリセオールなどの脳保護薬などを用います。

腸管出血性大腸菌感染によるHUSの急性期の予後は、ほかの原因によるHUSに比べて一般には良好とされているそうですが、それでも親御さんとしては心配だったでしょう。その後の経過として、無事だったようで、何よりです。

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