私事で恐縮だが、先日健康診断で「尿酸値高し! 痛風寸前!」という結果が出たばかり。痛風といえば中高年の病気と思っていたが、まだ30過ぎのこの身に危険が及ぶとは。若くても安心できないのか!? 早速、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター准教授の谷口敦夫先生にお話を伺った。まずは痛風のメカニズムについて。

「体内で尿酸濃度が高い状態が続くと、関節内で尿酸が固まります。この尿酸の結晶が痛風といわれる関節炎の原因です」

痛風予防の第一歩は「尿酸値を上げないこと」のようだ。では、具体的にはどんな注意すれば良いのだろうか。

「尿酸は、プリン体が代謝されてできるものです。プリン体は、人間の細胞や食物に含まれます。毎日作られて尿から排泄されるものなのですが、産生量が多くなったり排泄が低下すると尿酸値が上がるわけです。“肥満”や“過度の飲酒”、プリン体を多く含む“モツなどの内臓類”は尿酸値を上げる作用があります」(同)

「呑みすぎない」「太らない」「プリン体を摂りすぎない」。尿酸値を上げないために「3ない運動」を推進すればいいのである。ところで、痛風患者が若年化し、R25世代を直撃する可能性はあるのだろうか。

「若者の食習慣は以前と違います。栄養バランスを欠く傾向にあるし、生活面でも夜更かしをしたり、ストレスも多い。そうした原因が合わさると、あり得ますよ」(同)

病名に「痛」という字が含まれることからもわかるように、一度発作が起こると大の大人が悲鳴をあげて数日歩けなくなるほどつらいという…それだけは嫌だ。ダメ押しで、もう一つ予防法があればぜひ。

「尿酸は尿から排泄されるので、水をたくさん飲むと尿酸も出やすくなります。腎臓や心臓などに異常が無ければ、水分をたくさん摂取してもらって、尿は一日に2リットルくらい出した方がいいですね」(同)
(痛風ってどんだけつらいの?その予防法は?)


痛風とは、高尿酸血症(血清尿酸値 7.0mg/dl 以上)の 5〜10年以上の持続に伴い、尿酸塩結晶の沈着をきたし、急性関節炎を発症した病態を痛風といいます。広義には沈着した尿酸塩に起因する腎障害、尿路結節なども含みます。

尿酸は、生体内ではプリン(細胞の核蛋白)の最終分解産物として、キサンチンから合成されます。成人男性では1日 0.7g が体内で生成され、そのうち 0.5gが腎から、0.2gが消化管から排泄されます。

どうして尿酸の値が高くなるのかといえば、尿酸の過剰産生と腎からの排泄低下のタイプに大別されます。過剰産生型としては、遺伝性(プリン代謝酵素異常症,糖原病)、核酸代謝回転の亢進(血液疾患,乾癬)、ATP分解の亢進(飲酒,低酸素血症)、プリン体過剰摂取などがあります。排泄低下型には、遺伝性のほか、低酸素血症、ケトアシドーシス、尿崩症、薬物(フロセミド,サイアザイド,シクロスポリンA)などがあります。

症状としては、初発は約90%の患者が単関節炎の形をとり、片側の第1趾中足趾骨関節の突然の激しい疼痛と腫脹で発症します(痛風発作)。症状は24時間以内にピークとなり、通常 1〜2週間で完全に消退します。

どうしてこうした痛風発作が起こるのかと言えば、まず痛風関節炎は過剰な尿酸が関節内に尿酸ナトリウム結晶として沈着することで引き起こされると考えられます。この関節腔内の尿酸ナトリウム結晶は直接、補体や凝固因子を活性化し、滑膜細胞やマクロファージから炎症性サイトカインが産生され、炎症が起こります。最終的には好中球が活性酸素や蛋白分解酵素などの炎症性メディエーターが産生され、より大きな炎症が起こってきます。

こうした症状の他にも、痛風患者では尿路結石(尿酸を含む結石)、虚血性心疾患、脳血管障害、高血圧、高脂血症、インスリン非依存性糖尿病、肥満などを合併することもあります。

治療としては、以下のようなものがあります。
痛風関節炎を起こしていない無症候性高尿酸血症に対しては、「高尿酸血症・痛風治療のガイドライン」に従って、血清尿酸値が8mg/dLを超えるまでは生活指導に重点を置き、8mg/dL以上が持続する場合に腎障害や心血管障害などをきたしやすい合併症の有無を考慮して薬物療法の適用を考えます。

痛風関節炎を繰り返す症例には、発作を回避するために薬物療法が適用されます。痛風関節炎には速効性で、鎮痛作用の強い非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を、できるかぎり速やかに投与します。投与量は常用量の2倍量とし短期間の使用に留め、痛みや炎症が引いた場合は中止します。

高尿酸血症の治療としては、食事療法(プリン体制限食)に加えて、薬物療法として尿酸排泄低下型と産生過剰型にそれぞれ尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、プロベネシド)と尿酸合成阻害薬(アロプリノール)を投与します。

「風が吹いても痛い」というほどの痛みが、どれほどか想像も出来ませんが、とてもツライ状態だというのは想像に難くありません。食生活やストレスを溜め込まない、夜更かしをせずに水をこまめに摂る、といったことを気を付けた方が良さそうです。

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