以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われた内容です。

中堅商社のOLであるS・S(34)さんは、ある日、同期入社の友人から「乳ガンかも知れない」との相談を受けました。幸い友人は乳腺症だったことが分かりますが、本当の魔の手は、この時、相談に乗っていたS・Sさんに忍び寄っていました。

友人の一件以来、時折、自分の胸をチェックするようにしていたS・Sさん。ある日、右胸の外側に柔らかく弾力のあるしこりがあるのに気付きます。心配になり、インターネットで調べますが、「乳ガンのしこりは硬い」と書かれていた上、友人も「しこりの殆どが乳腺症」と言っていたため、「私のしこりも乳腺症に違いない」と自分勝手な判断をしてしまいます。

しかし、そんなS・Sさんに、さらなる異変が襲いかかりました。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)柔らかいしこり
自分で触ってみると、柔らかいしこりが右胸の外側上方にありました。ですが、「乳ガンのしこりは硬い」「しこりの殆どが乳腺症」ということを思いこみ、乳癌ではないだろう、と放っておいてしまいました。

2)しこりが痛む
しこりに気づいた後、しばらくして、しこりの部分が痛み出しました。再び友人に相談したところ、乳癌だったら痛みはないだろう、ということを言われてしまい、さらに放置してしまいます。

3)乳房が痛む
最初は限局的にしこりの部分が痛かったのですが、次第にその部位は広がり、今度は乳房の痛みへと変わっていきます。

4)しこりが硬くなる
最初は柔らかかったしこりが、今度は硬く触れるようになりました。そしてその後、まるで頬の「えくぼ」のように、窪むようになりました。

こうした状態になって、不安になりだしたS・Sさん。そのため、友人に再び相談すると、乳腺症の彼女は「私は生理の時だけ硬くなったんだけど」ということを言いました。

S・Sさんの場合は、しこりがずっと硬いままだったという違いがありました。「これは、乳腺症じゃないんだ…」そうした思い直しによって、ようやく病院に行くことになりました。その病院で問診や触診の後、精密検査を受けることになり、そこで告げられた病名は、以下のようなものでした。
S・Sさんに告げられた病名は、乳癌でした。
乳癌とは、乳房にある乳腺組織に発生する悪性腫瘍のことです。現在、年間約35,000人の女性が乳癌に罹患しており、女性の20人に1人が乳癌に罹患する計算となります。女性が罹患する悪性腫瘍の第1位が乳癌です。

乳癌罹患者数は1970年の約3倍で、食事内容の変化(脂肪摂取量の増加や初経年齢の低年齢化などで)今後も増加し、2015年には年間約48000人の女性が乳癌に罹患すると予測されています。年々増加の一途をたどり、現在、年間約1万人が死亡しています。

何故、亡くなる人がこんなに増えているのかというと、その大きな原因の一つが、乳癌に対する認知度の低さがあります。女性の大敵である乳ガンですが、日本ではまだ身近な病ととらえていない女性が多く、それが死亡者数の増加につながっていると考えられています。

現に、乳癌検診を受ける方は、まだ多くないようです。多くの女性が乳癌に最初に気づくのは、ほとんどが自分で「しこり」に気づいたため、との結果のようです。検診にて発見されるのは、たった2割でしかないと日本乳癌学会の大規模調査で判明しています。

一般的な乳癌のスクリーニング検査としては、問診、触診、軟X線乳房撮影(マンモグラフィー)、超音波検査等が実施され、臨床的に疑いが生じると、生検が実施され組織学的診断により癌かそうで無いかが判別されます。

早期がんの発見には、マンモグラフィ検診が有効です。乳癌の死亡率を下げるには、集団検診の受診率を上げることが不可欠とされています。というのも、胸を触る自己診断で見つかる乳癌の大きさは平均約2cmで、自然に気づく場合は3cm以上が多いとのことです。

早期癌は、直径2cm以下とされています。ですが、発見時には43%が2.1〜2.5cmに達しており、発見時にリンパ節に転移していた人も、3分の1を占めています。リンパ節に転移しない乳癌の10年後の生存率は約9割と高いが、転移をしていると7割以下に落ちるといいます。

上記のケースでは、以下のような思いこみが発見を遅らせていました。
1)「乳癌のしこりは硬い」という思いこみ
→そもそも、殆どの乳癌のしこりは乳管の中で発生・増殖した癌細胞が、乳管の外へと染み出し、塊をつくったもの。このしこりがある程度成長すると、外から触れる事ができる大きさにまで発達します。

確かに通常、乳癌のしこりの多くは、硬いものと言われています。しかし、中には周りの脂肪組織をまとうように増殖し、初期の頃には、しこりが柔らかいタイプのものもあります。

故に、柔らかいからといって、乳癌でないとはいえません。

2)「乳癌は痛まない」という思いこみ。
→一般的に、乳癌のしこりは痛まないものとされています。ところが、理由は定かではありませんが、まれに乳癌のしこりに痛みを感じる患者さんもいます。

こうした思いこみにより受診が遅れたこともあり、S・Sさんは右乳房を切除せざるをえませんでした。早期発見・早期治療できていれば、乳房温存術などが行えた可能性もあります。

普段から正しい方法で月に1度は自己触診を行い、少しでも異変を感じたら、すぐに乳腺専門のクリニックなどを受診することが重要であると考えられます。

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