大学生の長男(23)の脳梗塞が悪化し、半身まひなどの後遺症が出たのは、東京慈恵医大病院(東京都港区)が適切な処置を取らなかったためだとして、医師でジャーナリストの富家(ふけ)孝さん(60)や長男らが22日、同病院を運営する「慈恵大学」に計約1億3500万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
 
訴状などによると、手足のしびれを訴えた富家さんの長男は平成18年5月9日、慈恵医大病院で血管が炎症を起こす「血管炎」が原因の「多発性脳梗塞」と診断された。同月19日、医師らは診断を確定するため、動脈にカテーテルを挿入し、造影剤を注入する「脳血管造影」の検査を実施。検査中に長男は急性脳梗塞を発症し、今も半身まひの後遺症があるという。
 
富家さんは「脳血管造影は血管炎を悪化させる危険性があり、行うべきでなかった」と主張している。
 
慈恵大学広報推進室は「訴状をみていないのでコメントしかねるが、適正な医療行為と認識している」とコメントを出した。
(医師・ジャーナリスト富家孝さん、「医療ミスで半身麻痺」と慈恵医大を提訴)


脳梗塞は、 脳を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため、脳虚血を来たし、脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死、または壊死に近い状態になることをいいます。日本人の死亡原因の中でも多くを占めている高頻度な疾患である上、後遺症を残して介護が必要となることが多く福祉の面でも大きな課題を伴う疾患です。

脳梗塞は、壊死した領域の巣症状(その領域の脳機能が失われたことによる症状)で発症するため症例によって多彩な症状を示します。代表的な症状としては、麻痺(運動障害)、感覚障害、失調(小脳または脳幹の梗塞で出現し、巧緻運動や歩行、発話、平衡感覚の障害が出現)、意識障害(脳幹の覚醒系が障害や広汎な大脳障害で出現)がおこることもあります。

脳梗塞では、片麻痺といって、半身の一方に麻痺をきたしてしまいます。運動の障害を意味し、もっとも頻度の高い症状が麻痺です。中大脳動脈の閉塞によって前頭葉の運動中枢が壊死するか、脳幹の梗塞で錐体路が壊死するかで発症することが多いようです。

多くの場合は、片方の上肢・下肢・顔面が脱力または筋力低下におちいる片麻痺の形です。ただ、脳幹梗塞では顔面と四肢で麻痺側が異なる交代性麻痺を来すこともあります。また、意識障害が起こることもあり、脳塞栓症ではこのように一気に意識を消失するようなことが起こります。一方、脳血栓では症状が数日かけてゆっくり出現することが多いようです。

診断としては、脳梗塞が疑われる場合、病変の起きた部位を確認するために、CT、MRI、脳血管撮影などの検査を行います。とくに、心源性脳梗塞症の場合は、心房細動が原因となるのでホルター心電図(24時間心電図)をとって調べます。ヘマトクリット、電解質、血圧、体温などの血液学的、理学的所見も脳血管攣縮の病態把握に有用と言われています。

脳血管撮影に関しては、以下のような目的で行います。
脳血管撮影やMRA(MRアンジオグラフィ)は、より詳細な狭窄性病変の検出には必要となります。また、脳塞栓症との区別や外科的治療を考慮するときにも行います。

ただ、検査が原因で脳梗塞を生じることが報告されており、検査中にカテーテルの壁に血栓ができたり、既存の血栓がカテーテル操作で剥離して、これが脳の血管につまることにより脳梗塞が起こってしまうことがあります。上記のケースでは、この検査が原因で起こったのかは不明ですが、検査後に急性脳梗塞を起こしてしまったそうです。

他にも、検査中に脳動脈瘤が再破裂したり、脳内出血をおこすことや、肺血栓症を起こすといったことも合併症として考えられます。中でも、造影剤アレルギーによってアナフィラキシーショックをを生じることがあります。ショック状態(血圧が下がったり、心臓の調子が悪くなること)となった場合、死亡を含む重篤な状態になることが報告されており、注意が必要です。

こうした自体に陥ってしまった以上、訴訟に発展してしまったのは致し方ないでしょう。必要だと思われた検査を行い、こういう結果を招いてしまうというところに、医療訴訟の難しさや哀しさがあると思われます。

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