脳死や心停止後の臓器提供は無償の行為だと臓器移植法で定められているが、「金銭的対価はない」と正確に認識している人は3割にとどまることが、移植患者らでつくる日本移植者協議会東海支部(山本登支部長)が愛知県内で実施したアンケートで分かった。
ドナー(臓器提供者)の家族の中には「肉親の臓器を売った」と中傷され、悩みを抱える人もいる。同法施行から10年が経過したが、正しい理解が進んでいない実態が浮かんだ。
同支部が07年3〜8月、県内の街頭などで15歳以上の男女にアンケートし、1104人から回答を得た。臓器提供が「善意に基づく無償の行為」とされるのは、提供の自発性や移植の公平性を保つためだ。しかし、提供に謝礼や葬儀料などの「金銭的対価がある」と誤解している人が25%いた。「対価はない」と正しく答えた人は29%で、「分からない」も46%いた。
また、提供が無償であることについて、「気持ち程度の謝礼(弔慰金)が必要」だと考える人が26%、「相応の見返りが必要」だと答えた人も10%いた。一方、ドナー家族に対する印象については、「よいことをした」と思っている人が49%に達した。「よくないことをした」は1.3%で、肯定的な評価が半数を占めた。
調査に参加した虎の門病院の丸井祐二医師(腎臓外科)は「移植医療を定着させるためにも、臓器提供に関する正しい理解を広める必要がある」と話している。
(「提供は無償」理解者は3割)
国内の移植医療の黎明期としては、1956年に腎臓、1964年に肝臓の移植が初めて行われています。そして、1968年には札幌医科大学の和田寿郎教授によって、世界で30例目の心臓移植が行われました。これは、いわゆる和田心臓移植事件であり、移植患者の生存中は賞賛されましたが、死後に提供者の救命治療が十分に行われたかどうか、脳死判定が適切に行われたかどうかといった問題が議論をよび、この件以降、国内における脳死移植に対する拒否反応のようなものが生じたようにも思われます。
1979年には「角膜及び腎臓の移植に関する法律」が成立されましたが、これは心臓死による移植医療であり、脳死移植に関しては、18年後の1997年10月に「臓器の移植に関する法律」施行まで待たなければなりませんでした。
この法律では、本人が脳死判定に従い臓器を提供する意思を書面により表示しており、かつ家族が脳死判定並びに臓器提供に同意する場合に限り、法的に脳死がヒトの死と認められ、脳死移植が可能となっています。
ただ、上記のように「本人の書面による意志(臓器提供意思表示カードなど)」が必要であり、本人の意思が不明であっても家族の承諾で提供可能な他国と比べ、ドナーの数が少ないといった難点が指摘されています。
さらに、上記アンケート結果を考えると、臓器移植における誤解や間違った情報のため、ドナー不足をさらに深刻なものにしているとも考えられます。昨今、「海外で生体腎移植を受ける腎不全患者の人がいる」といったことがテレビで放映され、「臓器を売買する」といったダークなイメージが流布してしまっていることも問題なように思います。
臓器移植は本来、「善意に基づく無償の行為」であるということをしっかりと理解してもらう必要があり、もっとその知識や重要性を広める必要があると思われます。恐らく、ドナーカードの存在なども、法律施行前後では話題になった、というだけで、忘れ去られている可能性もあるのではないでしょうか。
そもそも移植医療として提供されている臓器は、以下のようなものがあります。
ドナー(臓器提供者)の家族の中には「肉親の臓器を売った」と中傷され、悩みを抱える人もいる。同法施行から10年が経過したが、正しい理解が進んでいない実態が浮かんだ。
同支部が07年3〜8月、県内の街頭などで15歳以上の男女にアンケートし、1104人から回答を得た。臓器提供が「善意に基づく無償の行為」とされるのは、提供の自発性や移植の公平性を保つためだ。しかし、提供に謝礼や葬儀料などの「金銭的対価がある」と誤解している人が25%いた。「対価はない」と正しく答えた人は29%で、「分からない」も46%いた。
また、提供が無償であることについて、「気持ち程度の謝礼(弔慰金)が必要」だと考える人が26%、「相応の見返りが必要」だと答えた人も10%いた。一方、ドナー家族に対する印象については、「よいことをした」と思っている人が49%に達した。「よくないことをした」は1.3%で、肯定的な評価が半数を占めた。
調査に参加した虎の門病院の丸井祐二医師(腎臓外科)は「移植医療を定着させるためにも、臓器提供に関する正しい理解を広める必要がある」と話している。
(「提供は無償」理解者は3割)
国内の移植医療の黎明期としては、1956年に腎臓、1964年に肝臓の移植が初めて行われています。そして、1968年には札幌医科大学の和田寿郎教授によって、世界で30例目の心臓移植が行われました。これは、いわゆる和田心臓移植事件であり、移植患者の生存中は賞賛されましたが、死後に提供者の救命治療が十分に行われたかどうか、脳死判定が適切に行われたかどうかといった問題が議論をよび、この件以降、国内における脳死移植に対する拒否反応のようなものが生じたようにも思われます。
1979年には「角膜及び腎臓の移植に関する法律」が成立されましたが、これは心臓死による移植医療であり、脳死移植に関しては、18年後の1997年10月に「臓器の移植に関する法律」施行まで待たなければなりませんでした。
この法律では、本人が脳死判定に従い臓器を提供する意思を書面により表示しており、かつ家族が脳死判定並びに臓器提供に同意する場合に限り、法的に脳死がヒトの死と認められ、脳死移植が可能となっています。
ただ、上記のように「本人の書面による意志(臓器提供意思表示カードなど)」が必要であり、本人の意思が不明であっても家族の承諾で提供可能な他国と比べ、ドナーの数が少ないといった難点が指摘されています。
さらに、上記アンケート結果を考えると、臓器移植における誤解や間違った情報のため、ドナー不足をさらに深刻なものにしているとも考えられます。昨今、「海外で生体腎移植を受ける腎不全患者の人がいる」といったことがテレビで放映され、「臓器を売買する」といったダークなイメージが流布してしまっていることも問題なように思います。
臓器移植は本来、「善意に基づく無償の行為」であるということをしっかりと理解してもらう必要があり、もっとその知識や重要性を広める必要があると思われます。恐らく、ドナーカードの存在なども、法律施行前後では話題になった、というだけで、忘れ去られている可能性もあるのではないでしょうか。
そもそも移植医療として提供されている臓器は、以下のようなものがあります。
現在では、腎、肝、心、膵、肺、骨、皮膚、小腸、角膜などの移植が行われています。腎、角膜、骨など心停止後の摘出臓器の移植も一定条件下では可能ですが、心臓や肝臓なども含め、心停止前の脳死下での摘出臓器による移植がやはり必要であると考えられます。
臓器の摘出時の条件にもよりますが、移植が可能な脳死下での摘出臓器の保存時間は腎が50〜72時間、心4〜6時間、肺4〜6時間、肝9〜12時間、膵24時間であるといわれています。もし臓器移植をする、といった状況になれば、すばやい対応が必要になります。そのためにも、ドナーカードの用意やご家族との意思疎通(家族が反対した場合には、臓器提供は行われません。また、ドナーカードには家族の自筆のサインをする箇所があります)が必要であると思われます。
ちなみに、ドナーカードは15歳以上であれば、記入し所持することにより意思表示が有効であると認められます。これは、遺言の一種であるという解釈から、民法上の遺言可能年齢に準じて15歳以上となっています。
「臓器の移植に関する法律」は法律施行後3年を目処に見直すことになっていましたが、現在でも改正されていません。慢性的なドナー不足を解消するためにも、今一度見直す必要があると思われます。
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臓器移植法10年、進まぬ法改正−子供は海外へ
臓器の摘出時の条件にもよりますが、移植が可能な脳死下での摘出臓器の保存時間は腎が50〜72時間、心4〜6時間、肺4〜6時間、肝9〜12時間、膵24時間であるといわれています。もし臓器移植をする、といった状況になれば、すばやい対応が必要になります。そのためにも、ドナーカードの用意やご家族との意思疎通(家族が反対した場合には、臓器提供は行われません。また、ドナーカードには家族の自筆のサインをする箇所があります)が必要であると思われます。
ちなみに、ドナーカードは15歳以上であれば、記入し所持することにより意思表示が有効であると認められます。これは、遺言の一種であるという解釈から、民法上の遺言可能年齢に準じて15歳以上となっています。
「臓器の移植に関する法律」は法律施行後3年を目処に見直すことになっていましたが、現在でも改正されていません。慢性的なドナー不足を解消するためにも、今一度見直す必要があると思われます。
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