日本で子供たちに接種される予防ワクチンの数は、ほかの先進国と比べて明らかに少ない。重大な後遺症が出る髄膜炎などの病気を未然に防ぐため、高価な輸入ワクチンを接種させている保護者もいる。副作用に対する考え方の違いもあるが、親の経済状態や出会った医師の差により、子供の健康と将来に格差が出ているのが現状だ。

大使館などが多く集まり、在日外国人の子供らも多い東京都渋谷区の日赤医療センター。「髄膜炎の予防について聞きたい」と相談に訪れる保護者が後を絶たない。「子供の髄膜炎を防ぐワクチンは、ありません」と説明すると、多くの在日外国人の保護者が「なぜ?」と驚くという。

わが国の小児の定期接種ワクチンは、
1)ジフテリア
2)百日ぜき
3)破傷風
→これらは、DPT三種混合
4)BCG
5)ポリオ
6)麻疹
7)風疹
→これらは、MR二種混合
8)日本脳炎
の8種類。一方、米国ではこれらに加えて、
9)B型肝炎
10)ロタウィルス
11)b型ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Hib=ヒブ)
12)肺炎球菌
13)インフルエンザ
14)おたふく
15)水ぼうそう
16)A型肝炎

など計16種類に及ぶ。肝炎や髄膜炎などを米国並みに予防しようとすると、少なくとも15万円から20万円の自己負担が生じるという。

細菌が脳に達することで、高熱を発し、脳障害などの重大な後遺症を引き起こす細菌性髄膜炎。現在、年間1000人の5歳未満の乳幼児が罹患している。そのうち53・8%(年間500人から600人)がHib、17・5%が肺炎球菌が原因菌とみられる。

厚生労働省によると、Hibによる髄膜炎の治癒率は9割。国内の研究者によると、肺炎球菌による髄膜炎はさらに予後が悪く、治癒にいたるのはわずか6割。14%が死亡し、28・6%に脳障害などの後遺症がでて生涯、介護が必要な体になる。耐性菌が急増し、ペニシリンなどの抗生物質がきかない菌が60%から80%にも及ぶからだ。

Hibワクチンは、日本でもようやく認可され、4月ごろに市販される見込みだ。しかし、当面は任意接種で、Hibと肺炎球菌ワクチンの普及を求める「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」(大阪市)は22日、Hibワクチンを販売する製薬会社に対し、子育て世代にも受け入れられやすい2500円以内の販売価格設定となるよう要望した。

厚生労働省結核感染症課は、米国と比較して接種できるワクチンが少ないのは、
1)流行している疾病や患者数が異なる
2)ワクチンで予防できるものはすべて予防するという米国の国情と、数百万人に1人であっても副作用があるなら、健康体への接種に慎重になる日本の国情の違い
3)審査にかかる人員が少ない

と理由を説明する。

日赤医療センターの薗部友良・小児科部長は「肺炎球菌ワクチンもHibワクチンも、国の定期接種に優先的に導入すべきだとWHO(世界保健機関)が推奨している世界標準の予防治療。『防げるものは防ぐ』という当たり前のことを早くすべきです」と話していた。
(ワクチン格差 WHO推奨も…日本では定期接種なし)


予防接種は、注射または経口的にワクチンを生体に接種して人工的に免疫をつけることです。個人を感染から予防する役割とともに、国民全体を感染症の流行から守る役割があります。

予防接種の種類としては、予防接種法に基づいて接種が義務付けられている定期接種と希望者が各自、医療機関で受ける任意接種に分けられます。

定期接種は費用は公費負担であり、DPTワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン)、∨秧症疹混合ワクチン、F本脳炎ワクチン、ぅ櫂螢(急性灰白髄炎)ワクチン、BCG(結核)ワクチンが該当します。他にも、65歳以上、または60歳以上65歳未満で心臓や腎臓、又は呼吸器に重い障害のある人、免疫機能低下がみられる人は、インフルエンザワクチンを定期接種として接種することも可能となっています。

任意ワクチンは、希望者が各自、医療機関で受けるものです。接種費用は、全額自己負担となります。,たふくかぜ(流行性耳下腺炎)生ワクチン、⊃綸生ワクチン、I坡莢愁ぅ鵐侫襯┘鵐競錺チン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチンなどがあります。これに加え、上記のようにインフルエンザ菌b型(Hib)に対するワクチン導入に対する期待も高まりつつあるようです。

上記にもありますが、インフルエンザ菌b型(Hib)は、乳幼児の全身感染症の起炎菌であり、乳幼児における細菌性髄膜炎の主要菌となっています。国内では年間500〜600名程度のHib髄膜炎が主として5歳未満児に発生しています。

大きな問題として、13〜15%は予後不良であり、28.6%に脳障害などの後遺症が残るということもあり、細菌性髄膜炎は、疾患としての重要性は高いと考えられます。また、最近では薬剤耐性菌が増加しているとの報告もあります。BLNAR(β-ラクタマーゼ非産生ABPC耐性株)、BLPACR(β-ラクタマーゼ産生CVA/AMPC耐性株)などの耐性菌が存在し、適宜、抗生物質を選んで効果的な治療をする必要があります。

細菌性髄膜炎の症状や診断方法、治療に関しては、以下のようなことがいえると思われます。
細菌性髄膜炎は、急性化膿性髄膜炎ともいわれます。急性に発症し、激しい頭痛、悪寒、発熱(38〜40℃)とともに項部硬直(患者の頭部を持ち上げると、抵抗を感じたり、患者さんが痛みを感じる)やケルニッヒ徴候(大腿を伸展したまま股関節を屈曲させると、膝関節が屈曲する現象。髄膜炎の有用な一徴候)などの髄膜刺激症状を認めます。

原因となる細菌は、年代によって異なり、新生児では大腸菌やB群レンサ球菌、リステリア、小児においてはインフルエンザ菌や肺炎球菌など、成人では肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などが多いといわれています。

診断としては、発熱や嘔吐、頭痛の3徴候がある場合、髄膜炎を疑います。検査としては、脳脊髄液の採取は必須です。外観で白濁していれば細菌性髄膜炎を疑います。他にも、蛋白が増加していたり、糖の著明な低下などがみられます。髄液から菌を証明できれば、確定的です。

他にも、血液検査を行います。好中球優位の末梢白血球増多や、CRP値高値などの炎症所見があれば、細菌性髄膜炎を疑います。

治療としては、一般的に発症後24時間で病変はピークに達するので早期診断、早期治療がポイントとなり、原因菌を特定する前に抗菌薬を投与します。起炎菌の判明前には、抗菌スペクトルラム(細菌の種類に対して抗菌作用をもつ範囲)が広く、髄液への移行のよいセフトリアキソン、またはセフォタキシムとリステリア菌をカバーするアンピシリンの併用が一般的であるといわれています。

Hibワクチンを接種するかどうかは、現在の所、各人の判断に任されるようですが、市販後調査を実施するなど安全性に配慮したうえで、接種希望者には接種できるような環境を整えることが必要であると思われます。

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