厳しい冷え込みの続く中、布団に入る前にちょっと1杯…。毎日の締めくくりに、「寝酒」をたしなむ人は多いだろう。しかし、眠る前にアルコールをとると深い眠りにつけないばかりか、さまざまな睡眠障害の原因にもなりうるという。「寝酒の習慣化にはくれぐれもご注意を」と専門家は呼びかけている。

「酒を飲んで眠り込んでいるのは、睡眠ではなく、“意識を失っている”状態」とその危険性を訴えるのは東京医科大学教授で代々木睡眠クリニックの井上雄一院長。井上院長によると、アルコールによる睡眠は、正常な睡眠とは異なり、浅いノンレム睡眠の状態が長時間続くため、「脳も体も十分には休まらない」。夜中に何度も目を覚ます中途覚醒や、早朝覚醒の原因にもなるという。

アルコール依存症になる危険性もはらんでいる。「不眠対策で寝酒を始めた人の方が、ストレス発散で酒を飲む人より依存症になる割合が高い」と井上院長。体がアルコールに慣れてきて、少量の飲酒では眠れなくなり、徐々に飲酒量が増えてしまうためだ。ひとたび大量の寝酒習慣がつくと、いざやめても、一時的に強い不眠症に陥ったり、動悸や震えなどの症状が起きることもある。

アルコールには生体リズムの周期を遅らせる作用があるため、だんだん夜更かしになり、しまいには朝起きられずに出勤できなくなる例も。脳・脊髄の神経障害を引き起こして、睡眠中にむずむずしてじっとしていられなくなる「むずむず脚症候群」、夢遊病などの睡眠中の異常行動を悪化させる場合もある。

中でも、「自殺行為」と戒めるのが睡眠薬との併用だ。いわゆる睡眠時無呼吸症候群を悪化させ、長時間呼吸が止まることもあるという。

「『お酒で眠る』という考え方をまずやめるべきです。不眠で困っているなら、医師の指導に基づいて睡眠薬を飲んだ方がずっと安全」と井上院長。「夕食時だけ、しかも少量にとどめて、就寝時間の3〜4時間前は飲まないようにすれば、睡眠中の問題は起きにくくなります」と話している。
(「寝酒」にご用心 睡眠障害の原因に)


睡眠障害、特に不眠は結構な頻度でお困りの方がいらっしゃるようです。1995年に厚生省が行った調査でも、一般外来受診者の約20%が睡眠に関する問題を持っていたことが示されています。

睡眠の質または量が不足している場合を、不眠症といいます。症状によって、以下の4タイプに大別することができます。
1. 入眠障害:寝つきが悪く、なかなか眠れない。
2. 中途覚醒:朝起きる時間までに、何度も目が覚める。中高年に多い。
3. 早朝覚醒:朝早く目覚めてしまい、再度眠ることが出来ない。
4. 熟眠障害:十分に睡眠時間はとっているが、眠りが浅く熟眠感が得られない。

上記のように、「寝酒をしないと眠れない」という方は、 入眠障害(寝つきが悪く、なかなか眠れない)という分類になります。ただ、そのために寝酒をして眠る、というような生活になってしまうと、やはりさまざまな問題が生じてきてしまうようです。

アルコール摂取は、少量であれば入眠の促進には役立つといわれていますが、一定量を超えると中途覚醒を増やし、睡眠に対して悪影響を与えるといわれ、逆効果になってしまいます。

やはり、不眠の原因を探り、解決することが重要であると思われます。そのため、以下のような生活習慣を見直す方法があります。
「就寝1時間前の電子メールのチェックは睡眠を妨げる」との研究結果が、昨年の12月の英紙デーリー・テレグラフに掲載されていました。PCモニタなどで、メールを読む行為は、濃いコーヒーのエスプレッソ2杯分を飲むのと同じ不眠効果があるということのようです。

その理由として、エディンバラ睡眠センターのクリス・イジコフスキ博士は「コンピューターの光が、眠りを助けるホルモンのメラトニン分泌をやめるよう脳にシグナルを送ってしまう」と指摘しているそうです。同様に、ゲームやテレビ、ネットなどは寝る前には控えた方が、快適な睡眠を得られそうです。

あと、重要なのは「睡眠習慣の規則化」です。眠る時刻を一定にするのは難しいかとは思われますが、夜間の総睡眠時間に関係なく、「同じ時刻に起床する」と決めれば、自然とそうした生活スタイルになっていくと思われます。

これでも解決しない場合、薬物療法を用いることがあります。睡眠導入剤が用いられ、ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤が多く処方されているようです。睡眠導入剤は、化学構造によりベンゾジアゼピン系、チエノジアゼピン系、バルビツール酸系、シクロピロロン系や抗ヒスタミン薬などに分類されます。また、作用時間による分類としては、超短時間作用型、短時間作用型、中時間作用型、長時間作用型などがあります。

「寝付きが悪い」という方(1回、寝てしまえば寝られる)には、超短時間作用型であるトリアゾラムなどが用いられます。中途覚醒が起こってしまう場合は、中〜長時間作用型が用いられるわけです。

ただ、注意していただきたいのは、自己判断で睡眠導入剤を飲んでしまったり、止めてしまったり、量の増減をしたりなさらないでいただきたい、ということです。突然の服薬中断では、数日間にわたり元来よりひどい不眠(反跳性不眠といいます)が生じる可能性があります。アルコールと一緒に服用すると、効果増強されてしまう恐れがあるので、止めた方が良いと考えられます。

実は、不眠症の原因は、精神疾患、そして各種身体疾患の順で多いといわれています。特に、うつ病の早朝覚醒や熟眠感の欠如は、うつ病の部分症状としてよく知られています。知らないうちに、精神的な問題を抱え、それが睡眠障害という形で表出していることもあるわけです。

もし「眠れずに困っている」という方は一度、精神科を訪ねられることをお勧めいたします。

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