喉頭がんを克服し、昨年12月から活動を再開させたロック歌手、忌野清志郎(56)が10日、「完全復活祭」と題し、東京・北の丸の日本武道館で2年2カ月ぶりの単独公演を行った。

「オーイエー!! 帰ってきたぜベイベー!!」と1万3200人に手をふり、張りのある歌声とエネルギッシュなステージで、3時間、24曲を歌い切った。アンコールでは長男と長女がサプライズで登場。清志郎の目頭を熱くさせた。

大きなスクリーンには、抗がん剤の影響でスキンヘッドの清志郎が映し出された。コマを追うごとに彼の頭髪は伸び始め、髪の毛を逆立てステージ衣装を着るまで元気になっていく、1年半の軌跡を公開した。
(がん克服、清志郎が武道館単独ライブ)


俳優の唐渡亮さんも、喉頭がんを患って闘病生活を送っていたこと明かされています。発病は8年前であり、約2年半の入院中に計5回の手術を受けていたそうです。

喉頭とは、喉頭とは、食物の通路と呼吸のための空気の通路との交差点である咽頭の奥で、空気専用通路の始まりの部分を指します。外から見れば、いわゆる「のどぼとけ(甲状軟骨先端)」の位置にあります。

喉頭の機能としては、咽頭に開いた空気の取り入れ口で、吸気では下の気管へ空気を送り、呼気では気管からの空気を咽頭に送ります(この空気が声帯を震わせ、発生ができるわけです)。そのため、もし喉頭全摘出術の場合は、歌うことも、話すことも難しい状態になると考えられます。

喉頭癌の治療としては、放射線療法と外科療法が2本の柱となります。外科療法は、がんの原発部位の周辺だけを切除する喉頭部分切除術(早期癌などに)と、喉頭をすべて摘出する喉頭全摘出術(進行癌などに)に分けられます。

最近では、従来は標準治療として喉頭全摘出が行われていた症例に対しても、放射線と多剤化学療法との同時併用治療を行い、喉頭の温存をはかる治療も行われています。忌野さんの場合も、化学療法を組み合わせて治療なさったようです。

具体的には、以下のような治療方針があります。
まず、喉頭癌と一口に言っても、原発部位により、声門上癌、声門癌、声門下癌に分類されます。喉頭癌の中でも、声門(声帯)に発生するがんが60〜65%を占め、声門上は30〜35%で 、声門下は極めて少なく1〜2%であるといわれています(声門上癌は次第に減少し、声門癌が増加しています)。

症状としては、声門上癌では咽喉頭違和感や嚥下痛(飲み込むときの痛み)、耳に放散する痛みなどが出現してきます。また、高率(約40%)に頸部リンパ節転移が認められることで、時にリンパ節腫脹が初発症状となることもあります。

声門癌では嗄声(声が、しゃがれて出しにくい)がみられます。小さな癌病変でも嗄声を起こすため、早期発見されることが多いといわれています。

声門下癌は声帯に癌が波及して初めて症状が出現してきます。初期には無症状で経過することが多く、進行して初めて嗄声や呼吸困難などの症状が出現してきます。そのため、進行例が多いといわれています。

声門癌は全体の7割を占めます。早くから嗄声を生じるので比較的早期に発見されやすいという特徴があります。声門上癌は2割強を占め、初診時リンパ節転移は声門癌では1割以下にしかみられませんが、声門上癌では約半数にみられるといった違いがあります。

この違いにより、早期癌であれば喉頭部分切除術、進行癌であれば喉頭全摘出術などが施行されます。放射線療法や外科療法でも治癒する可能性がある場合は、年齢(手術に耐えられるかどうかなど)、全身状態、職業(声を使う職業で、できるだけ手術を避けたい、など)などを考慮した上で、それぞれの治療の長所、短所を十分説明して決定します。

喉頭癌全体の5年生存率は80−90%と非常に良好ですが、嚥下・呼吸・発声という喉頭機能を保存して治癒率を上げることが目標であるとも考えられます。忌野さんの場合、しっかりと声を残すことが出来、非常に喜ばしいことであると思われます。今後も、歌手として歌い続けることができることをお祈り申し上げます。

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