新型インフルエンザが発生しヒト−ヒト感染が確認された場合、真っ先に取られるのが感染者、感染地域の「封じ込め」だ。発生初期に封じ込めが成功すれば、流行を一歩手前で抑えるといったこともあり得ないことではない。そこまで劇的な効果が期待できなくても流行の拡大スピードを初動で遅らせ、ワクチン製造などのための時間を稼ぐことはできる。

行動計画は、新型ウイルスのヒト−ヒト感染が海外で発生した場合、空港や港にある検疫所のチェックレベルを上げ、感染の疑いのある人を隔離するなどの対策を取るとしている。蔓延防止には従来の法律で想定していない強い措置が必要だ。逆に言えば、現在の法律のままでは行動計画はまだ絵に描いた餅ということになる。

このため、厚労省は検疫法と感染症法の改正案を今国会に提出した。改正案は、感染した恐れのある人に健康状態の報告要請や外出自粛要請を行う規定を設け、検疫で隔離が必要と判断された人を停留する施設として、空港近くのホテルなどの利用を可能にする規定も盛り込んでいる。

「封じ込め」シナリオの整備以外にも、症状の重症化を抑える抗インフルエンザ薬や、現在の鳥型ウイルスをもとに製造するプレ・パンデミック(世界大流行)ワクチンの備蓄も進める。備蓄はタミフル、リレンザなど抗インフルエンザ薬が約3000万人分。プレ・パンデミックワクチンが1000万人分だ。

鳥インフルエンザがどのようなウイルスに変容して流行するのか、現状では分からない。したがって備蓄がどこまで有効なのかは未知数だが、最近の研究ではプレ・パンデミックワクチンなどがかなり期待できそうだとのう報告もある。備蓄を求める声が強まり「それで足りるのか」といった議論も出てくるだろう。

新型インフルエンザそのもののワクチンは、新型ウイルスを採取する必要があるため、製造に少なくとも発生から半年近くかかる。封じ込めやプレ・パンデミックワクチンなどで、その半年がどこまでしのげるか。これが全体の被害の大きさを左右することにもなる。
(新型インフルエンザ 日本の備えは大丈夫?)


今年に入り、厚生労働省はタミフルに9割超の比重を置くインフルエンザ治療薬の備蓄体制を見直しに入ったと明らかにしています。その理由としては、タミフル耐性を持つウイルスの発見報告が相次いでおり、タミフルのみでは対処できない状態を想定してのことのようです。

ヨーロッパなどでははすでに、タミフル同様ノイラミニダーゼ阻害薬の一種である、リレンザの備蓄強化の指針を打ち出しています。さらに、鳥インフルエンザウイルスの変異など、未知のウイルス出現リスクに関しても単なる机上の空論ではなく、実際に大規模な感染を想定して動き出しているようです。

服用型のタミフルに対し、リレンザは吸入型です。タミフルに比べてリレンザには即効性がありますが、服用で扱いやすいタミフルを主軸とした備蓄を行ってきており、流通シェアも9割近い状況でした。
 
ですが、インフルエンザ治療薬タミフルに対する耐性を獲得したインフルエンザウイルスが、人から人に感染した可能性のあることを、河岡義裕・東大医科学研究所教授と菅谷憲夫・けいゆう病院小児科部長らのグループが初めて確認、2007年4月の米医師会雑誌に発表しています。

研究グループは、2004年〜2005年のシーズンに日本で流行したインフルエンザB型に感染した患者のうち、タミフルを飲んだ子ども74人、タミフルを飲んでいない348人(うち大人66人)からウイルスを取り出し、タミフル耐性獲得の有無を遺伝子で調べています。

結果、計422人のうち1.7%にあたる7人のウイルスから、タミフルが効きにくい遺伝子変異が見つかったそうです。うち6人は、タミフルを服用していませんでした。日常生活の中で家族や他人から感染したと推測されます。

こうした新型インフルエンザの感染が、たとえ海外で起こったとしても、もはやそれは対岸の火事として傍観しては居られない状況でしょう。なぜなら、交通機関の発達によるヒトと物の大量や短時間での移動は、病原の移動をも容易にし、離れた土地での発生も可能となっており、上記のように封じ込めや国内に入り込まないよう、サーベイランスをしっかり行う必要があります。

最近、特に問題になっているトリインフルエンザの問題は、以下のようなものがあります。
トリインフルエンザとは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起きる鳥類の感染症です。中でも、ニワトリなどの家禽類に感染して、宿主を死に至らしめる高病原性トリインフルエンザが問題となっています。

ヒトのインフルエンザの原因になるウイルス(ヒトインフルエンザウイルス)と、トリインフルエンザの原因になるウイルス(トリインフルエンザウイルス)では、感染対象となる動物(宿主)が異なるため、一般的にはトリインフルエンザウイルスがヒトに感染する能力は低く、また感染してもヒトからヒトへの伝染は起こりにくいと考えられています。

ですが、大量のウイルスとの接触や、宿主の体質などによってヒトに感染するケースも報告されています。問題となっているのは、鳥A型インフルエンザウイルスH5N1のヒトにおける感染例の出現です。他にも、A/H7N7(オランダ)、A/H1N7(エジプト)などによるヒト感染例もあります。

H1では発熱や咳、H7では結膜炎、H9感染では上気道炎などの症状が主であるといわれており、それぞれの特徴があります。家禽類にとって高病原性であるA/H5N1のヒト感染例では、気道感染症状に加えて下痢が30%ほどにみられ、急速に肺炎に進行し、急性呼吸促迫症候群(ARDS)になることが特徴といわれています。

これらは、現段階では鳥からヒトへの直接的感染であると考えられています。ですが、最も問題になるのは、ヒトからヒトへ感染しやすい型へ変異した場合(新型インフルエンザ)です。こうした場合、大規模な感染が考えられます。

上記のような対策は、決して杞憂とは言えない状況にあると思われます。多国間での感染対策を模索することも必要となってくると思われます。

【関連記事】
インフルエンザに関するまとめ

タミフル耐性インフル登場 リレンザ備蓄を強化へ