フィンランドの研究チームが20日、音楽が脳梗塞患者の早期回復を助けるという研究結果を専門誌ブレイン上で発表した。

調査を行ったのは、ヘルシンキ大の心理学者テッポ・サーカモ氏が率いたチーム。右脳か左脳どちらかの中大脳動脈の梗塞を最近発病した患者60人を対象に実施した。

それによると、通常の治療行為に加えて音楽や音声を記録したオーディオブックを毎日数時間聴いていた患者たちは、音楽などを聴かなかった患者たちよりも言語暗記力が向上したほか、気分も優れていたという。

研究チームでは、音楽療法はこれまでにもさまざまな場面で用いられてきたものの、人に対する効果を実際に示したのは初めてだとしている。
(脳梗塞の患者にとって音楽は重要)


脳梗塞は、 脳を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため、脳虚血を来たし、脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死、または壊死に近い状態になることをいいます。日本人の死亡原因の中でも多くを占めている高頻度な疾患である上、後遺症を残して介護が必要となることが多く福祉の面でも大きな課題を伴う疾患です。

脳梗塞は、壊死した領域の巣症状(その領域の脳機能が失われたことによる症状)で発症するため症例によって多彩な症状を示します。代表的な症状としては、麻痺(運動障害)、感覚障害、失調(小脳または脳幹の梗塞で出現し、巧緻運動や歩行、発話、平衡感覚の障害が出現)、意識障害(脳幹の覚醒系が障害や広汎な大脳障害で出現)がおこることもあります。

脳梗塞で言葉が不自由になる場合は、
1)構音障害
喉頭・咽頭・舌の運動にも麻痺や感覚障害(延髄、小脳の障害)が及ぶことで、嚥下や発声機能にも障害が出現します。構音障害は失語とは違い、脳の言語処理機能は保たれながらも発声段階での障害のためにコミュニケーションが不十分となっているものです。
2)失語
優位半球の障害でみられる、高次機能障害で起こってきます。運動性失語(ブローカ失語、非流暢性失語)、感覚性失語(ウェルニッケ失語、流暢性失語)、混合性失語、全失語に分けられます。

このような場合があります。上記の研究対象となった患者さんは、中大脳動脈の梗塞が起こった場合であり、特に優位半球障害(右利きの人の約99%、左利きの人の約60%は左大脳半球が優位半球)が起こった場合、言いたい言葉が出ない、他人の話が理解できないなどの失語症や失行症(道具を使った簡単な動作ができない)、左右失認(自分の身体や他人の身体の右側と左側が区別できない障害)、手指失認、計算ができないなどの症状が現れます。

こうした障害が現れた場合、以下のような治療が行われます。
失語症の原因となる背景疾患は、上記のように優位半球の中大脳動脈領域の血管障害が圧倒的に多く、中でも梗塞が多くを占めます。その他、脳出血や脳腫瘍、アルツハイマー型痴呆やピック病なども失語症を引き起こします。

圧倒的に脳血管障害が多いわけであることからも、早期からの治療や再発作の予防対策が重要となります。治療法としては、急性期には抗血栓療法、脳保護療法、抗脳浮腫療法があります。抗血栓療法には、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防止する抗血小板療法とフィブリンができるのを防止する抗凝固療法があります。

近年、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)という血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が欧米では実施され、わが国でも2005年10月より健康保険に導入されました。脳保護療法には活性酸素の働きを防止するエダラボンという薬剤を発症後24時間以内に使用すると後遺症が軽減されます。

脳梗塞を起こした部位が1〜2日するとむくみが起こるので、抗脳浮腫療法により脳浮腫の原因となる水分を取り除きます。脳梗塞になって3時間以内の場合は血栓や塞栓を溶かす薬を使って治療します。薬が効いた場合には詰まった脳動脈が再度開通し、血流が流れます。脳循環の改善薬や血栓・塞栓を予防する薬を使います。

実は、この治療を進めていく過程で、失語症自体は検査してる間にも自然経過で改善する例もあります。ある程度以上の障害が残った例では、言語のリハビリテーションを行う必要があります。

状態が安定し、座位耐久性が向上した時点で訓練室での言語治療を開始します。障害状況に応じ、発語訓練や聴覚的言語把持力の強化訓練、呼称訓練、文字と絵の対応訓練、復唱訓練、読解訓練、書字訓練、代償手段(ジェスチャーなど)の利用訓練といったことを行います。

ですが身体においても、ごく早期からのリハビリが重要であると言われ始めたことと同様に、言語による刺激も早期から開始することで、予後が変わってくる可能性もある、と考えられます。今後は、上記ニュースのような早期からの言語リハビリ導入が重要になってくるのではないか、と思われます。

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