腸などが正常に機能しないヒルシュスプルング病類縁疾患の名古屋市の小学2年生、各務宗太郎君(8)が21日、米国で多臓器移植手術を受けるため成田空港から出発する。
 
母親の優子さん(36)や主治医らが同行。マイアミ大ジャクソン記念病院でドナーを待つ。出発前の記者会見で、優子さんは「早い時期に今日という日を迎えられました。元気になる可能性ができ、とても感謝しています」と話し、宗太郎君も「頑張って手術にいってきます。応援よろしくお願いします。(手術後には)フライドポテトを食べたい」と元気に答えた。
 
生まれつき胃や腸が働かないため、食べ物の消化や吸収ができず、消化器官へチューブで栄養剤を送り込むなどして生活している。これまでに胆のうなどの摘出手術を受けたが、多臓器移植をしないと、生命に危険な状態になるという。国内では15歳未満の臓器提供は認められていない。
(名古屋の8歳男児、多臓器移植手術のため渡米)


ヒルシュスプルング(Hirschsprung)病とは、直腸および結腸の先天的な壁内神経叢(アウエルバッハ神経叢とマイスナー神経叢)神経節細胞の欠如により、腸管の蠕動運動が障害されている疾患です。

簡単に言ってしまえば、腸の働きが悪くなり、通過障害(食べたものが通過しにくい)をきたした状態です。そのため、腸管が拡張してきます。

発生頻度は5,000人に1といわれ、性別では男児が多く3〜5:1となっています。また、未熟児に発生することは少なく、成熟児に多いという特徴があります。レット遺伝子(c-ret)などの異常の関与が報告されています。

主立った症状としては慢性便秘で、生後早期から腹部膨満、嘔吐、胎便排泄の遅延などが起こります。腸炎を生じやすく、広域の無神経節症では致命的な問題になってしまいます。中心静脈栄養を必要とする症例では、腸内容のうっ滞に起因する腸炎が肝障害を助長する可能性があり、注意が必要です。

検査所見や治療としては、以下のようなものがあります。
診断は直腸診、X線検査、直腸肛門内圧検査のほか、直腸生検により病理組織学的に神経節細胞欠損を証明します。腹部単純X線写真では、結腸の拡張、骨盤腔内の直腸ガス像の欠如を確認します。注腸造影では、S状結腸下端に腸管口径の変化(caliber change)、直腸に狭小部(narrow segment)を認めます。

直腸全層生検は、直腸壁の全層生検で、新生児や乳児には侵襲も大きいことから、全根治術の際の切除部位決定、確定診断資料、類縁疾患(腸管壁内神経叢の減少、未熟性によるものと、平滑筋支配神経系の何らかの異常により全腸管、膀胱など蠕動欠如によるものなどがある)の鑑別などに限定されている。

治療は保存的療法や人工肛門造設により腸閉塞状態を解除し、全身状態の改善後神経節細胞欠損部腸管切除術(スウェンソン法など)を施行します。原則として、まずは生後3ヶ月以降に体重が6kg以上となった時点で人工肛門を造設し、乳児期後期に二期的に根治術を行ないます。

上記の場合、多臓器移植をしないと生命に危険な状態であるとのことで、海外での手術が必要になっているようです。是非とも成功し、元気な姿で戻ってきて欲しいと願わずにはいられません。

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